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森と林業と田舎の本

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2011/12/11

2012年の国際年

先週は繰り返し東京に行ったが、それはジブリ美術館に行くため…のはずはない。

実は、某生活共同組合連合会に招かれたのだ。

そこでは「森林林業プロジェクト」として、「森林・林業方針」の策定を進めていて、その勉強会に招かれたのだ。食料品中心の生協も、森林・林業に目を配り、森林環境の保全や林産物の持続的利用を考え出しているというのは、世の中の目が森林に向きだしたことを感じる。

また、事業の方針を定めるために、会員各生協が集まり、勉強会を開きながらテーマや語句を話し合うというのは、いかにも協同組合らしい。トップダウンで進めない、進められないことが、協同組合の特徴かもしれない。

そこで国産割り箸の取扱も視野に入れてもらった。酒飲み話に終わらず、そのうち具体的に動き出すことに期待したい。

ところで、今年も押し迫ってきた。そろそろ仕事納めも視野に入れつつある。

そこで少し早いが思い出していただきたいのは、今年は国連が定めた「国際森林年」であること(^o^)。もう、世間ではほとんど忘れられてしまったよ(-_-)。

それでは、来年は何の年?

これまた、ほとんど話題に上がっていないが、実は「2012年は国際協同組合年」なのだそうだ。10月末日の国連総会で正式に決まったのである。

協同組合とは、人と人の民主的な結びつきによる非営利の協同組織だと規定されている。人々が「価値に基づく事業」を行う組織として自発的に手を結ぶ…ものである。ガバナンスモデル、平たく言えば経営システムの根幹は、人であり利益ではない。
しかし世界的に協同組合は、株式会社などほかの事業体と同等とは認められていない。それを払拭するための国際年指定なのだそうだ。

協同組合とは、事業形態としては、ある意味古い形態である。出資者と事業者の分離がされず、また消費者さえもが一体化している。ある種の無尽とか頼母子講と呼ばれるものも、協同組合の原始的形態だろう。

弱小者が集まって事業を始めることのできるモデルではあるが、突出した権限を持つ指導者がいないという前提のため、近年は意思決定の遅さや悪平等主義に走りがちで、グローバル化とスピード化が求められるビジネスシーンの中では、時代遅れの感さえあった。

しかし、思うのだ。もっとも事業推進に適しているとされた株式会社モデルに代表されるような「資本と事業の分離をうながす」金融資本主義は、もう行き詰まっているではないか。
世界中を恐慌に陥れている金融危機も、このモデルの破綻、限界が生み出したものだろう。

そんな揺らぐ世界経済の中では、オルタナティブな事業モデルとして協同組合を見直す余地があるのではないか。金融資本主義から一歩距離を置くモデルにするのだ。
もちろん、協同組合が株式会社に取って代われるとは思わない。しかし画一化、グローバル化の波の中で、荒波を寄せつけない「入り江経済」、あるいは暴風雨の上空の「成層圏経済」を担うモデルになり得ないか。
これまで通りの共同組合では無理だろう…。そこで、協同組合方式をもっと深化させた新しい形態が生まれないかと思うのだ。

そもそも経済システムも、もっと多様性を持つべきだ。かつての社会主義経済はほぼ崩壊したが、資本主義=株式会社に一元化することの方が危険である。株式会社以外の事業システムモデルを幾つか揃えるべきだ。協同組合もその一つだろう。

思えば、農業共同組合も、漁業協同組合も、そして森林組合も、協同組合である。

残念ながら、うまく機能しているとは思えない。組合員の利益や根本の目標(農業の発展、森林の健全化など)をないがしろにして、組織の利益に走りがちだ。

たとえば森林・林業再生プランだって、うまく利用すると森林組合の改革をうながすことができるだろうに、森林組合側は改革はしたくないうえに、「これは森林組合つぶしが目的か」と疑心暗鬼にかられている。

来年は、本格的な森林林業再生プランの実施によって、森林組合にとっては改革のチャンスであり、存続のピンチである。国際共同組合年は、そのきっかけになることを願う。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

国際森林年2011の締めくくりとして、12月10日(土)に京都東山のナラ枯れ対策として、「薪割り&ウオーク」をしました。
主催は、京都伝統と文化の森推進協議会、朝日新聞等です。

当日は,20名づつの班ごとに森林インストラクターが引率し、三十三間堂を見てから東山の京都1周ハイキングコースを登り,東山の山頂公園でナラ枯れの木を薪割りして,お昼は八坂神社下にあるいづ重が作った豚汁と暖かいご飯を食べてから、青連院におりるというウオークです。

150名募集した所、薪を割りたいというボランテイアが300名も応募してきました。当日は200名参加しました。

参加費は、保険を入れて500円。
杉の板目のボード1枚と、コースター、レーザーで伝文の会の文字入りの杉の箸がプレゼント。皆さん、喜んでいました。
200名のボランテイアのおかげで、1500束もの薪が出来上がりました。
この薪は、500束は伝文の会で使い,残りは1束300円で一人30束まで持ち帰れます。
応募者は12月18日に引き取りにくることになってます。
昨年は100名参加して、1000束でしたから、私が提案したこのやり方(京都方式)は成功したと思います。

一般市民がナラ枯れの実態を目の当たりにできる機会を作り,薪を使用してもらうという目的は達成できます。
もちろん、将来的にはこのような1日のパフォーマンスだけでなく,京都カシナガ基金を作り、例えば一人1口1万円で個人から募金して、その集まった基金で割り木業者に伐採や薪割りをしてもらい,販売してもらうのが一番ですね。

このやり方、いいと思いませんか?
カシナガ被害に悩む地域に広がるといいと思います。


翌日の朝日新聞に記事が掲載されてました。

なかなか大規模なイベントを催したんですね。200名ですか。

さて、国際森林年が開けた来年はどうします?


来年は、割り箸一膳の革命、活動です。笑

国産の木材の利活用を進め、それと随伴して国産割り箸の利用を食卓エンターで推進します。ので、ご協力をお願い致します。

先週、福島県にある(株)磐城高箸、樹恩のあたご共同作業所、奥会津エコリードの割り箸工場を見学して来ました。

磐城高箸さんが一番効率的に立派な9寸の利休を作ってました。奥会津エコリードの滝沢さんも、夏の水害を乗り越えてなかなかいい箸(8寸の元禄)を作ってましたが、あたご共同作業所は箸づくりは未熟でした。

先月は北海道のホクト製箸、溝端の割り箸工場も見学しました。
ようやく、あちこちに少しずつ割り箸工場が増えていますね。

ワリカンの工場は、まだまだ軌道に乗っていないようですが、いかがですか?

食卓エンター箸の利用としては,昨年の3月には近畿大坂林務事務局の職員食堂で、8月には郡上八幡の食品展で、また10月からは京都女子大学の食堂で使ってもらいました。いまでも、京女の食堂では色んなスポンサーがついた国産の間伐材割箸を出してますよ。田中組長さんも一度、おいでくださいませ。

今年5月の統一地方選挙では、若者の投票行動を促す目的で京都府選挙管理委員会が使って頂き,10月には京都市環境管理局が全国3R推進会議の宣伝に使って頂きました。少しづつですが認知されてきました。

ただ一つ残念なことがあります。
それは、大坂にエコ箸と称しスポンサーをとり、1円の中国箸を入れて無料で使わせている会社があります。
さすがに、今度の大坂の選挙では、国産の割り箸を使ったようです。
が,今まで国産の間伐材を樹恩から入れていた大学生協の中にも,この無料で使用出来るとエコ箸(何がエコかわかりませんが)を使い出した所も出て来ているようです。

樹恩の割り箸を使っていた大学生協が、安い中国の割り箸を使い始めたことは見過ごせません。

同じアド箸ですが、私たちの食卓エンター箸システムは吉野の箸はもちろん地産地消の国産間伐材の国産の割り箸を使っている点が違います。

来年は、さらにこの食卓エンター箸を広めて行きたいと考えています。
田中組長のご協力のほど、よろしくお願い致します。m(^|^)m

福島の割り箸を視察してきたんですか。
もう一度,割り箸に本腰入れることも必要ですね。

表題の某生協も、国産割り箸を扱う可能性があります。私は、磐城の割り箸を配って、使ってももらいました。すると、みんな店に置いていかず、持ち帰るのです。
生協となると、無店舗販売でも、一度扱えば5万、10万膳は動かさないといけません。

ただ、一般家庭に割り箸を販売するのは、マイ箸運動はさておき、何のために割り箸を買うのかという問題があります。日々の食事には使わないでしょう。お客さん用なら、そうそう数は出ない。その壁を破る方策を考えます。

田中組長へ

こんな動きもあります。
京都新聞より転載します。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ナラ枯れ:官民で対策 京都市、企業や団体に寄付付き商品販売 /京都

 京都三山(東山、北山、西山)で急速に広がるナラ枯れ対策のため、京都市は企業などに寄付金付き商品の販売を求めて、枯れ木の処分や植樹に当てる仕組み「京都みどりプロジェクト」を始める。17日、協力を表明している企業・団体代表者と門川大作市長の記者会見が中京区であり、門川市長は「市民や観光客に商品を購入してもらい、京都の景観を守っていきたい」と語った。

 市によると三山のナラ枯れ被害は、07年度は741本だったが、10年度には1万7000本に急増。今年度も、新たに1万7000本の被害が予測される。市は枯れ木の処理費として10年度に7800万円、11年度には1億円を支出したが、枯れ木の3割未満しか処理が進んでおらず、財源が課題になっている。

 そのため市は、土産物など寄付金付き商品の販売を企業に求め、シンボルロゴを付けて消費者にアピールする。計画段階から京都信用金庫、府旅館ホテル生活衛生同業組合、日本たばこ産業が協力の意向を示しており、同庫が来年2月から寄付金付き定期預金を新設するなど、具体的な協力内容を現在検討している。

 市はさらに広く企業や団体に協力を呼びかけ、12月から1年間で2000万円の寄付を目標としている。

訂正します。
参加者は170名だったようです。
1束300円で販売します。
ただし,受け取りにくることが条件です。
新聞記事より転載。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ナラ枯れ 市民ら170人見て考察
2011年12月11日

「被害木 薪で活用」 東山で催し

ナラ枯れの現状を知ってもらおうと、10日に東山かいわいで開かれた催し「京都の森を守ろう 薪(まき)割り&ウオーク」(朝日新聞社など主催)。約170人の参加者は紅葉の山歩きを楽しみつつ、被害にあった木を間近に見て、何ができるかを考えた。

 ナラ枯れは虫が媒介する伝染病。木を守るには幹にビニールを巻いたり、虫があけた穴をふさいだりと地道な対策が必要だ。参加者は森林インストラクターから説明を聞きながら、被害木を見て歩いた。伐採した木の薪割り体験では、薪の断面に虫が寄生した跡がいくつも見つかった。

 大阪府門真市から参加した東田妙子さん(60)は、趣味の山歩きで立ち枯れた木を見かけるようになった。「木材が使われず、山が手入れされなくなったことが一因と知って、自然との共生を考えようと思った」。八幡市の野間口秀国さん(62)は「被害木の薪を活用する人が増えれば、ナラ枯れ対策の裾野も広がるはず」と話していた。

 参加者には、ウオーク中に撮影された写真を載せた朝日新聞号外が配られ、祇園商店街振興組合からは豚汁がふるまわれた。

 この日できた薪の束は京都市内のホテルで燃料として使うほか、地元市民向けに1束300円で販売する。
申し込みは16日午後5時までに、市林業振興課内「京都伝統文化の森推進協議会」事務局(075・222・3346、平日のみ)へ。

こんばんは。
スミマセン、このお題なのに、レスポンス出遅れてしまいました。
おっしゃるように、森林組合それぞれのありようをよく考えて変わっていかないと、本当に存続できるかどうかの瀬戸際だと思っています。
しないといけない事、考えなければならない事、いっぱいありますが、田中さんの最後のところの言葉、ちょっと順番を入れ替えて、ピンチだけどチャンス、そう捉えていきたいな~!

森林組合関係では、来年の「国際協同組合年」を意識した声は出ていますか?
まあ、まだ知る人は少ないでしょう。。

来年は、本格的に補助金改正も森林経営計画も動き出すわけで、これまで通りの経営では厳しいはず。否応なく、変化が求められますね。
ピンチをチャンスにするか、チャンスをピンチにしてしまうか……(⌒ー⌒)。

残念ながら、知る限りほとんど、いやまったく出ていません…。

協同組合である森林組合、その恩恵(補助金がもらえるなど)に預かる一方、現状が協同組合といえるのか?そもそも協同組合という形が良いのか?という疑問も持っています。

良いとか悪いではなく、林業者の林業組合じゃなく、森林所有者の森林組合なのが、農協、漁協とまた違った性格を持つことになっているのかもしれません。多くの組合員さんは構成員という意識も失っているようにも思います。そうしてしまった森林組合にも問題があるのでしょうが、古くて新しい「モデル」にはまだまだ遠いです…。

とにかく、ピンチをチャンスに!

たしかに森林組合は、エンドユーザーを組合員にしている生協とか、農業者を組織した農協などとは違って、森林所有者の組合ですからね。林業組合になるべきだったか。

森林を所有する楽しみ・喜びを示せたら、意識も高まるんでしょうが……。

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