フリーの失業者
今日の散歩は、裏山に入り、廃道?になった道を。
もともと生駒山は、多くの道が入っているが、それが山仕事用なのか農業用なのか行者道なのか、ハイキング道なのか、わからない。ただ、一部のハイキング道以外は、通る人も少なくなり、放置が進んで廃道化している。
で、そんな道に分け入ったわけだ。道をふさぐ倒木が多いのも通りづらいが、想定外だったのは、落葉の量。ほとんど膝まで埋まるかのように、落葉のラッセルをしながら進むところもあったほどだ。雪と違って、踏みしめるほど滑るんだなあ。また道筋が消えかけているところも少なくないが、そこは勘と記憶で分け進む。
それでも、周囲に人工物がないことが心地よい。他人と会う心配もないだろう。深山幽谷に一人たたずむ気分だ。もちろん、直線距離で100メートルも行けば人家や舗装道路があることは位置関係から想像はつくのだが、「自然の中に自分だけ」感覚が大切なのだ。
今年の仕事も、ほぼ目処がついた。今週中に締切りのあるものは片づくだろう。例年より少し早い仕事納めになりそうだ。そして、それが最後の仕事になるかもしれない……。
フリーランスというのは、そういうことだ。どんなに忙しい日々が続いても、パタリと仕事が途切れることがある。また途切れることを想定して生きる職業である。
国際森林年バブルももうすぐ終わるのだ。急に仕事がなくなることも想定しなければならない。次の出版予定もないし、とくに仕事の当てのある雑誌もない。
日本の労働者の3分の1以上が非正規雇用になってしまったというが、見かけは正規雇用でも、実はワーキング・プア……というケースも含めたら、もっと膨らむだろう。そして私のようなフリーは、その枠にも入っていない。
同年代の人と顔を合わせて、子供たちの近況を話し合ったら、大学や高校卒業後も職につけずにフリーターやっているという例が少なくなかった。なかには薬剤師とか弁護士のような資格を持っているのにも関わらず、勤め先が見つからない話だってある。
先日、読者からメールが届いた。
37歳で失業し、就職先を探しているが苦戦中……とのことだった。「恥ずかしながら」とあったが、恥ずかしがることではない。今はそれが普通の時代となっているのだ。
そのメールの返信に、「私も仕事がなくなると、フリーの失業者を名乗っていた」と記した。今でも同じだ。幾本か連載があるから、完全な失業者にはなるまいが、それだって、来年早々に終了するかもしれん。雑誌がつぶれるかもしれん(^^;)。仕事の波はバカにならないのだ。
フリーランスを続けられるかどうかは、実力だ営業力だという以上に、仕事が途切れても平然としていられる度胸というか、鈍さが必要なのだろうな、と思う。悲観的になればなるほど悪いスパイラルに陥る。
たまに貧困からのし上がった人は、努力せよ、競争して勝ち抜け、と自らの成功体験を他人に押しつけるが、努力が実を結ばないこともある。勝ち抜けない人もいる。そこに目を向けられない人、共感できない人は、人間の質として不幸である。
とりあえずは、平然と、真摯に、働くことを求めるべき。卑屈にならないことだ。仕事を発注する側から見ても、自信のなさそうな人に仕事は任せる気にならないだろう。
そして、ヒマだったらヒマなときにできる仕事をつくることをお勧めする。
私の場合は、生駒山の廃道巡り(~_~;)。
すると、道標が見つかるかもしれない。
文字は読み取れないが、おそらく昔は足しげく通う人々がいたのだろう。
時代は移るが、古い道に焦点が当たる日も来るだろう。
少し早いが、年の瀬に感じたことでした。
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「人間の質として不幸」にジーンときた、地鳴りで叩き起こされた月曜未明でした^^
投稿: オジゾークン | 2011/12/19 02:28
「とりあえずは、平然と、真摯に、働くことを求めるべき。卑屈にならないことだ。仕事を発注する側から見ても、自信のなさそうな人に仕事は任せる気にならないだろう。」
達観されているようで安心しました。
自分だけの趣味が気分転換には有効なようですね。
私の場合は、魚釣りです。
来年、春に琵琶湖にコアユ釣りにいきますか?
投稿: しゃべり杉爺 | 2011/12/19 06:59
僕も春からフリーです。
公務員・民間、両方経験しました。
何をもって「豊かな人生」とするかは人それぞれですが、
人はひとりでは生きて行けないのは間違いありません。
周りへの感謝の気持ちを忘れず、卑屈にならず、真摯に、そして時にはクレバーに( ̄ー+ ̄)・・・自分の夢も諦めず、仕事を求めて行きたいと思います。
個人的には、田中さんには林野庁長官になっていただきたいなー(o^-^o)
良いお年をお迎えください。
投稿: 島崎三歩 | 2011/12/19 11:56
私に官僚の親玉は無理ですな( ̄ー ̄)。
今年の年の瀬は、皆さん考えることが多いでしょうが、それもまた人生。
ちなみに、まだブログは年内終了しません(笑)。何日まで続けようかな。
投稿: 田中淳夫 | 2011/12/19 16:02