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2011/12/24

カーネーションと林業

NHKの朝ドラ「カーネーション」の出来がなかなかよい。

たいていの朝ドラはストーリーに違和感感じるところが出てくるのだが、今回はすっきり、納得で進む。主役の尾野真千子の感情あらわの演技がよい。この女優、ちょっと注目していたんだよ。奈良の西吉野出身だし。(前は、芦田愛菜ちゃんを虐待する母親の役やってて、結構怖かった……。)

なにより女性の服飾史で描く昭和というコンセプトが、単なる「波乱の時代を生きた女の物語」というありがちの設定に一本の筋を通している。

ただ、なぜタイトルが「カーネーション」なのか。物語には、まだ一度もカーネーションの花は登場していないのだ。一応、テーマが「母」だからというのだが、いまのところドラマで母親は大きな役割を果たしていない(むしろ父親との関係の方が面白く、大きい)し、本人も3人の娘の母親にはなったが、母親だから、と思わせるような出来事は展開していない。

ところで、カーネーションといえば……「カーネーションの父」は土倉龍治郎である。土倉庄三郎の次男だ。彼が、日本でカーネーションの栽培を成功させ、普及に多大な貢献をした。
その件に関しては、以前に本ブログに記したから省略するが、現代のカーネーションはどうなっているのか。

ちょっと調べると、どんどん輸入切り花が増加しているらしい。約46%を占めている。国産は減少傾向なのである。主な生産輸入国は、コロンビアと中国。

もっとも国産切り花全体でカーネーションは、出荷量で2位(1位はキク)で、作付面積や農家数は5位と、日本の花卉産業の中では大きな位置づけを持っている。
ようは、小規模農家が多いのである。全国で生産している面積は、411haにすぎない。これは、コロンビアなどの農家1戸の面積より小さかったりする。かなうわけない。そして花の中では安価である。いかに新品種を取り入れたり品質を高め流通ルートを確保するかが課題として上がっている。

そうか。カーネーションは、花卉の中では量で勝負する商品だが、より大規模に外国産が流入し始めたために、国産は品質を売り物にしなければならない、という立場なのだ。

なんか、国産材とよく似た立場だと思わないか。

林家の規模では外国にかなわない中、いかに国産材の品質を高めるかが求められる

しかも、花卉は農業の中でも特殊で、生産品は食べるものではなく、消費者は「美」という情緒で求める。価格も体積からすると、極めて安い品である。
こんなところも木材に近いものを感じる。木材は、素材としては必ずしも必要でなく、金属や合成樹脂などで十分代用できるものだ。それでも木材を求めるのは情緒面からなのだから。

花と木材。カーネーションと国産材。妙なところに共通性を感じてしまった。

おそらく、輸入品に対応する策にも共通性があるはずだ。花卉産業を研究することで、新展開のアイデアを得られるかもしれない。

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コメント

「母の日」は世界中が同じ日なのでカーネーションは輸入品にビビらないで済む。と役場の職員から聞いたのは遠い昔の話になってしまいましたね。たぶん、中国やコロンビアには「母の日=カーネーション」の風習がないんでしょうね。
因みに、農家の友人は数多いですが、その内、食料を作っているのは3人だけ。2人はキュウリ、米作農家はたった一人です。愛知県の三河平野極南部では食料を作ってる農家が特殊です・・・!?

コロンビアや中国に「母の日にカーネーション」が根付いているかどうかはともかく、圧倒的に生産量が多いんでしょうね。何百人も雇用したプランテーション栽培ですから。

そういえば、愛知県は花卉先進地。カーネーションも長野に次いで多く生産しているようです。
柱材にカーネーション咲かせて出荷しないかな(^o^)。

市町村別では旧幡豆郡一色町が出荷量日本一です。(合併後も変わりません)。あと、生産量(=栽培農家)の減少も要因の一つなんでは?と推測・・・。

こんなとこだけ国産材と似てます?

因みに県別だと「養殖ウナギ」は鹿児島県がトップです。

こんにちは。ドラマ「カーネーション」を毎朝楽しみに見ているものです。

ドラマにカーネーションは登場していますよ。(花そのものではなかったりしますが)
最初に登場したのは、確か、子供時代、神戸の舞踏会で初めて糸子がドレスに出会ったとき。
その時、外国人の女性が、カーネーションを糸子の髪にさしてくれて、それをしばらく大事に飾っていました。

それから、根岸先生に洋裁を教わったとき、好きな花を聞かれた糸子が、カーネーションと答えています。「カビが生えても枯れない強い花だとおばあちゃんが言っていた」という理由で。

その他、勝さんが買ってくれた赤いショールの柄がカーネーションだったりもしました。これはスタッフの遊び心だと思いますが。

つまり、カーネーションは、ドレスという糸子の夢の象徴であり、糸子という「枯れずに咲きつづける」たくましい女性の象徴であり、3人の女の子をデザイナーに育て上げた母の物語であることの象徴なのだと思います。

「木材は、素材としては必ずしも必要でなく、金属や合成樹脂などで十分代用できるものだぁそれでも木材を求めるのは情緒面からなのだから。」

・・・全く同感です。

そうか、ちらちらとカーネーションを登場させているわけね。
たしかに舞踏会で登場した記憶はあります。根岸先生との会話は記憶になかったなあ。
ショールの柄まで見ていない(~_~;)。

来年から物語は、戦後に入りますね。カーネーションの花も登場するでしょう。

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