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2011/12/28

減速社会から限界社会へ

いつものように親の買い物につきあう。私の両親は、ともに80を越えて、免許の更新を打ち止めたので、私が送迎しているのである。

いつも訪れる生協は年の瀬ゆえかごった返していた。私が観察するに、この生協は高齢化率が高い。すると、買い物風景もちょっと雰囲気が違う。品定めにしろ、カーゴの押し方にしろ、レジの行列にしろ、実にゆっくり……はっきり言ってモタモタしている。まわりに目配りができなくなり、カーゴを通路のど真ん中に置いたまま離れる人。財布から小銭が取り出せない人。そもそもカーゴからカゴをレジ台に乗せることさえできないケース。

駐車場でも車の動きはモタモタしているし、歩くのもふらついている人もいるし……。

こうした傾向を「減速社会」と名付けて、このブログでも記した。

しかし、減速社会は、一地域の高齢化現象に止まっていないことに気づいた。

もはや国全体を人口減、高齢化が進んでいる。日本は、どんどん人口が減っていく。

かつて山村の過疎化について調べているうちに、問題なのは人口減ではなく、年齢バランスが崩れることだと気づいた。実は、人口が減っても、各年齢層がまんべんなくいる地域は元気なのである。むしろ少人数ゆえの良さもある。

が、高齢化が進むことが社会のバランスを崩す。かつてのピラミッド型人口バランスが、今やキノコ型になりつつある。今後、いくら出生率を上げても、ピラミッドにもどることはありえない。せいぜい釣り鐘型にするのが関の山だろう。それだって、出生率の回復以降、何十年もかかるから、とてもそれまで待てる状況ではない。

当たり前なのに意外と気づく人が少ないが、今日本でもっとも高齢者が多いのは首都圏だし、若年者人口も急速度で減っている。田舎とか地方都市だけでなく、大都市も含めて高齢化は進行中の事態である。

だからもはや限界集落なんて問題ではない。いや、限界集落なら「撤退」という選択肢もあるのだが、国家となるとどこにも撤退できず、合併も考えられない。

いや、日本の国だけでなく、日本の後に韓国、台湾、そして中国も猛烈な高齢化社会が到来することが決まっている(推測ではなく、確実に到来するのだ)。すでにヨーロッパもそれに近くなっている。中国が、何億という高齢者を抱えたとき、どんな社会になるのだろうか。

その意味では、日本は先陣を切っている。うまく減速社会向きの経済構造をつくれば、海外に展開するチャンスかもしれない。もっとも、減速化した人々は、そんな事業意欲も弱くなるだろうが……。

これは、「限界社会」の到来を示しているのではないか。どんどん減速せざるを得ないのだ。

今の国際社会は、一見スピードアップ化が進んでいるかのように感じるが、少しスパンを長くとって(50年、100年単位)見ると、地球規模で減速していくだろう。
そこで高齢者-若者の共生を試みると、全体のレベルダウンに陥るから、自己責任社会にならざるを得ないだろう。自分の老後は自分で面倒みる、ということだ。

……年の瀬に、そんな暗い予言をしてみたわけだが、実は、減速自体が悪いことではないような気もしているのだ。他者と無理に競争させられず、自らの意志と責任で、自らの人生をゆったりと生きる道も考えてみたい。これって、もしかして素敵かも。

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地域・田舎暮らし」カテゴリの記事

コメント

私は、21世紀は20世紀とは違う歴史が始まる年だと思います。

収縮社会、限界社会、低炭素社会、減速社会等、様々なネーミングがされているが、そんなもんではないとおもいます。

右肩上がりの20世紀は人口増の時代でした。
21世紀前半には人口増加でしょうが、老人がいなくなる後半には人口が減少し、新しい時代が始まると思います。

地下資源に依存する物質文明(例えば、人類の遺伝子を傷つける原子力エネルギー)から、それとは異なる文明を作り上げる努力がされて新しい文明が産まれないとダメになる可能性が高いでしょう。

まあ、人類は地球にとってはがん細胞のようなものでエネルギーの浪費、自然破壊を進めて来ましたから、ある時に何らかの理由で突然消滅しても地球にとっては好ましいのかもしれませんね。

46億年の歴史から見れば、サルから進化した500万年は瞬きでしかないのです。

とまあ、2011年を振り返りました。

里山から冬イチゴを採って来てジャムを作っている男より

20世紀は戦争の世紀で多数の人間が数千万のオーダでなくなりましたが、人口は増加しました。
21世紀は自然災害の時代ですが、エネルギーと食料危機で人口が減少するでしょう。
地球が人類の活動を制約する様々な環境変化を示して、食料危機がさらに深刻になると思います。
今でも、地球人の3人に一人から二人は飢餓状態ですから。飽食しているのは先進国の人だけです。

私は、21世紀は、10年遅れで2011年に始まったのだと思っていますよ。

そして古い世紀と新世紀は、人類の有り様が変わってくるとも。
よく言えば成熟。悪く言えば老化しちゃったんだろうね。
もう一度成長を始めるには、カタストロフィが必要かもしれません。

試みかは分かりませんが、当社相談役は来年傘寿です^^
もちろん現場で一緒に製造・販売もしてますけど、都市部より田舎って老化の進行が遅いように感じます。
特に森林、木材関連は経験がモノを言う分野が多々あるので、チャンスのような気が^^

元気な高齢者が増えるのは、一筋の希望でしょうか(^o^)。
肉体的な老化は仕方ないけど、智恵、意欲などを減衰させない人が増えたら、減速しても安全運転できる気がする。

確かに田舎の人の方が老化が遅いかも。
今の若い人は、早く老化するかも知れませんね。
21世紀の日本は70歳以上が生き生きする老人大国になるかもです(〜|〜)

70歳では元気でも、80過ぎると、やはり減速します(笑)。

減速しても維持できる社会を早急に築かないと、国際社会でじり貧になるだけです。そのためにも国家を当てにしないで生きなければ。

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