林業は、性善説か性悪説か…
現在、日本の林業が成り立たないのは、木材価格が安すぎるためと言われている。
一方、今の木材価格は国際標準で、高くなることを期待できないとも言われている。
どちらも事実なのだが、では、どうしたらよいのか。日本の物価水準だと、国際価格と同じ額では、林業家の生活は成り立たないし、山村経済は疲弊するし、再造林も進まず山も荒れる。無理に低コスト施業にしたら、より荒れる。
そこで、木材商品価格を上げることを考えねばならない、というのが私なりの結論であった。
素材としての価格は上がらないが、最終商品の価格は商品の出来次第で変わる。それが住宅にしろ家具にしろ小さなグッズにしろ、デザインがよくて機能も高ければ、それなりの価格を付けても売れる。また加工コストの中に木材生産コストを紛れ込ませることも可能だろう。
だが、ここで壁にぶつかるのだ。
もし山主と造林-伐採搬出の施業担当者、さらに製材から商品加工までの工程を、同じ業者がやっているのなら可能かもしれない。自分の山から木を出して、商品化して販売するまでのコストをトータルで計算し、利益はオーナーのさじ加減で各分野に分配すればよい。
それを「大林業」構想として提言した。
実際、その路線を取ったのは、根羽村のトータル林業や、西粟倉村の「森の学校」などだ。山の管理から伐採搬出、そして住宅建設までをつなげて見せたのだ。これは、小さくまとまりのある村だからできた面はある。同じことは、潜在的には住友林業のような山林を所有し、住宅など最終商品づくりもしている大企業も可能だろう。
が、ほとんどの山主、林業家は、そうした大林業化に到達できていない。小規模・個人では、森づくりから伐採搬出、建築木工までを網羅する人材が足りないのだ。ある程度の規模がないと、物理的に大林業化できない。
そこで、提携してネットワークをつくるという道がある。自身で全分野を仕切るのは無理だから、上流の森づくりから伐採までの担当者、下流の製材所、建築家などが提携して木材を扱う。
優秀なデザイナーが、高く売れる住宅や家具を設計し、そこで上げた利益を、山元に還元する……。
本当にそうなるだろうか? デザイナーなり販売業者は、商品を高く売るノウハウを持っているとして、その利益を提携した各業者にちゃんと分配するだろうか? 自分の利益を削って……。
それって、ものすごく性善説に立っているよね(~_~;)。
最終商品の売り先を握っている者が、素材や加工業者に高い金を払うインセンティブはない。木材も安く買いたたいて、加工も幾社も見積もりで天秤かけて、もっとも安くできる業者に発注すればよい。そうしたら、高く売って得た利益は、多くを自分の懐に入れられる。
これは、性悪説だ(⌒ー⌒)。
もちろん、高く売れる理由に、産地や加工技術も加味されていたら、一定の抑制要因にはなるが、それだって抜け道はいっぱいある。やっぱり、私は性悪説かな。
山主、造林業者、素材生産業者、製材業者、建築業者……みんなを、絶対的に信じ合える関係にする方法はあるだろうか。仲がよいというだけではなく、ギブアンドテイクの関係を築いて、諸条件を契約に詰めて守らせるだけの強制力を持たせなければなるまい。
今は、それぞれが相手を出し抜くことばかり考えているように思える。
林業は、性善説と性悪説、どちらに立つ?
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