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森と林業の本

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2012/01/19

クスノキの鳥居

今日は、NHKで興味深い木に関する番組が2つもあった。

一つは、夜の『地球イチバン』。タイトルは「イチバン広い杉の森とふしぎな暮らし」で、中国のトン族を紹介している。もう一つが、『あさイチ』。

今日は、『あさイチ』の方を紹介したい。このNHK番のワイドショー、なんかぶっ飛んでいて最近のお気に入り(^o^)なのだが、そこで取り上げたのが、広島の厳島神社。この海に浮かぶ神社は、木造建築の点からも、非常に興味深いことを紹介していた。

なかでも、鳥居はすごい。木製鳥居としては日本最大、ということは世界最大なのだ(^o^)。

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高さは16メートル。重量は約60トンだそうだ。とくに根元は埋めてあるのではなく、自重で立てている。言われてみれば、単に2本の柱だけでなく、袖柱があってバランスを取りやすくしているし、横木の中に、石を詰めて加重しているそうだ。

が、私にとって注目したのは、材質が無垢のクスノキだというのだ。主柱は樹齢500~600年のクスノキの自然木で作られているという。たしかによく見ると、柱部分は凸凹。海水に浸かっても、よく長持ちしている。
樟脳を含むクスノキは腐りにくいが、それでも数百年に1度は建て直すため、現代は8代目にあたる。

しかし、そんな簡単に20メートル近いまっすぐな幹のクスノキは見つからない。クスは、枝を横に伸ばしやすいから、単に巨木なだけではないのだ。現在の鳥居を建立するときは20年近く材料を探したという。たしか100年以上経っているとか言っていたかな。

日本唯一の木造鳥居の専門店の方、クスノキの鳥居は扱っていますか?

そのため、今は300年先を見据えてクスノキの植林を始めているそうだ。苗を育てて、それも側枝を伐ってまっすぐ育つようにしつけてから、山に植えるらしい。

根気がいるというか、通常の林業よりはるかに長伐期・・・・。

クスノキの材は、その香りから香木扱いされたうえ、材も緻密なため、仏像の材料にされてきたことは知っていたが、建造物の素材としてはあまり考えなかった。しかし、腐りにくく香りもよく、強度などもよいだろうから、なかなかの逸材ではないか。

街路樹や公園などに太いクスノキがあるから、今後はそれらの利用も視野に入ってくるのではないか。

そういえば、先日、戦前の沖縄ではクスノキが植林されていたと聞いた。また、土倉庄三郎の次男・龍治郎が、台湾で展開した樟脳生産事業の資料を読んだ。天然のクスノキを伐採して、枝葉や材から樟脳を抽出していたのである。樟脳は、単なる防虫剤ではなく、貴重な薬剤だったのだ。

そんなわけで、俄然クスノキに興味が湧きだしたのである。

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コメント

あれ,宮島の鳥居が楠だということは田中さんの本で読んで知ったような気が・・・気のせいかもしれません.いま38度の熱を出していて頭がなんだかスローです.

もしかしたら宮岡常一氏のような宮大工系の本で読んだのかもしれません.

全然知りませんでした。そう思ってみれば、でこぼこしていますね、確かに。これは楠の皮をむいた程度の加工なのでしょうか。

お恥ずかしい話ですが、日本の在来のクスノキは気候変動で一度絶滅していて、現在生息しているのは台湾からの導入によるものだと、植物学者の方にお聞きして(つい最近)知りました。

それでも、クスノキには何か古来からの信仰的なものを感じて、好きな樹木の一つです。

厳島神社の鳥居について書いたのは初めてです。明治神宮の大鳥居が台湾檜製であることは、以前ブログに書きましたが……。

また日本在来クスノキが一度絶滅していたというのも初耳。クスノキの仏像は結構作られているから、平安時代や鎌倉時代くらいまではあったはずですね。台湾からだとすると明治に? でも樹齢200年以上のクスノキもありそうだけど……。

奥が深いぞ、クスノキ。
そういや、土倉家は楠木正成の血筋だそうです\(^o^)/。

田中様
おはようございます。
宮島の鳥居は、両部鳥居という形式で使用されているのは宮崎の楠です。私が調べましたら、現在の宮崎県西都市産のモノですね。

宮島の鳥居には、基礎はありません。立てているだけです。そのかわり、笠木の上に人間の頭位の石がぎっしり詰まっています。その重量で安定させているのです。

いつ頃、日本産の楠は絶滅したのでしょうか?

田中様

すみません。杉が主流ですが、

楠の木も取り扱っています。そのほかにヒノキ、栗なども注文があります。

目標は、明治神宮の鳥居よりも大きな鳥居を受注することです。製作することは可能です。その場合材料の指定はできません。

海杉@鳥居専門店さま

現在の鳥居は宮崎産だったのですね。作ったのは、いつの時代でしょう?

明治神宮よりも大きな鳥居、ぜひ立ててほしいですね。コンクリートでなく。
鳥居の形って、絶妙ですね。ゲート(結界)を表すと同時に、丸太で貫の入った建築様式。やはり無垢の木でないといけないのかな。

宮島の大鳥居は現在で八代目で1875(明治8)です。柱が 楠です。日向国児湯郡岡富村(西都市)・讃岐国和田浜(丸亀市)となっています。

同じ宮崎なので西都に行って調べたら確かに岡富という地名がありました。

明治神宮などは神明系の鳥居でできれば、無垢材となります。ヒノキが欲しいのですが、あれだけ大きさになるとヒノキは、あっても、売ってくれないと思います。同じ位の鳥居をイギリスに納めるために作ったルートがあります。、ベトナムからラオスの材を購入して・・・。国産にこだわるならば、杉であれば、出来ないことはないと思っています。

クスノキが一度絶滅したのは有史以前で、その後の移入が天然なのか人為なのかは分かっていないようです。

参考までに、小笠原の父島にもクスノキが植わってますよ。戦前の植裁で、太さは目通りで80cm以上はありそうでした。

有史前の話ですか。それなら理解できます。

その後台湾辺りから縄文人が運んだか、それとも台風に種子が乗ったのか、鳥に食べられて渡ってきたか……。

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