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2012/01/30

本多静六の「赤松亡国論」

今いじっている自らの原稿は、あまりに分量が多すぎて、約半分に削らなくてはならないことになった。

半分だよ、半分! 涙、涙、である(;_;)。

これは少々の文章の書き換えでは、間に合わない。そこで、バッサリ伐り捨てる部分が必要となる。書くのに何日もかかったところを、バッサリである。涙涙涙。

もったいないので、少しだけ、ブログに要約転載することにした(^o^)。

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本多静六の「赤松亡国論」

きっかけは、一九〇〇年(明治三三年)に「東洋学芸雑誌」に発表した「我国地力ノ衰弱ト赤松」と題する一文である。これは学術論文とは違って、世間に警告を発する意見書の類だった。これがセンセーションを巻き起こしたのである。

その示すところは、日本の土壌と植生の関係を解説しつつアカマツが繁茂することの意味を説いたものである。

本多の説く植生学に沿って要約すると、一般の森林は水平分布と垂直分布があって、本来そこには気候に合わせて暖帯地域ならシイ・カシ林、温帯地域はブナ・ミズナラ、シオジなどが繁る。こうした本来ある森林の林相を第一期天然林相と呼ぶ。

ところが、この天然林が乱伐されると、暖帯地域の場合は常緑広葉樹は減少してクヌギ、コナラ、ハンノキなど明るい土地に育つ陽樹の落葉広葉樹が生えて雑木林になる。これを第二期林相とする。

 この雑木林がさらに乱伐されたり、落葉や下草を採取されると、腐葉土が失われ、土地は乾燥して地力が減退してしまう。そのため雑木林が衰えて林相は疎になる。また野火によって度々焼かれて木々が失われる。そこに生えてくるのがアカマツだ。
 アカマツは、明るい痩せた土地を好むが、本来は岩の上や土砂崩れの跡地などにしか生えない。ところが山が荒れて土壌が失われてくると、アカマツが盛んに生えるのである。これを第三期林相という。

 このアカマツの第三期林相も、乱伐と野火を防げば、再び第二期林相、そして第一期林相へと復旧することができるが、アカマツ林をさらに乱伐したり、落葉・下草の採取を続けると、アカマツそのものも衰弱して生長が止まってしまう。そして病害虫などでわずかに残ったマツ林も枯死していくと、土壌は流出して河川を埋め、水源枯渇するなど土地は荒廃してしまう。これがアカマツも生育できないほどの禿地の露出した第四期林相だ。

そうなると毎年洪水と旱魃に見舞われ、農工業も成り立たなくなる。そして国土の荒廃と国家の疲弊が進む……。アカマツは、そうなる一歩手前の林相なのだから、決して喜ぶ状況ではない。

長く「赤松亡国論」は有名になり、本多の肩書にさえなった。一時期は、本多アカマツ氏というニックネームまで付いたという。

そのため妙な誤解も生れたそうだ。アカマツを残しておくと国が滅びると、庭や小学校や神社などにあるアカマツの大木を切り倒す例がたくさん報告されている。なかには地方の大地主が、四〇町歩ものアカマツ林を伐り尽くしてしまうようなことまで行われた。

もちろん本多が論じたアカマツ問題は、アカマツという樹種に問題があるのではない。アカマツしか生えないほど乱伐を続けた日本の国土を問題としているのであり、アカマツ自体は有用であり植生回復の重要なアイテムであることに触れている。

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興味深いのは、「アカマツは荒れた土地の象徴」というのが記事の意図だったのに、世間に広まるに連れて「アカマツが土地を荒らす=国を滅ぼす」に変わってしまった、というか反対の意味に理解する人が絶えなかったこと。原因と結果を取り違えている。

なんか、今でもあるなあ。

地球温暖化問題から林業不振、ツキノワグマの里出没まで、何が原因で、何か結果か取り違えた対応が。

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コメント

ネーミングは大事だな、と改めて思いました。
「アカマツ亡国論」と聞いたら、アカマツを伐るのが普通の反応でしょう。
私は「おてもと」ではなくて「間伐材から作った割り箸」とプリントすればと、常々思っています。

実は、「赤松亡国論」という言葉は、本多氏が付けたのではないらしい。別の執筆者が本多論文を引用して付けたのだそうです。

「本多アカマツ氏」と呼ばれるようになって、本人も意外と面白がっていたようですな。

こんなのもありますよ。友人の紹介で知りました。
http://hibiyal.jp/data/card.html?s=1&cno=856

この「本多静六伝」は、私も読みました。
おかけで、本多博士の業績について調べる手間が省けた(^o^)。

ただ、意外と経歴については書かれていないのです。
その点に関しては、本人の自伝「体験85年」の方が面白いですね。

これは初めて知りました。勉強になりました。

赤松亡国論は、本多氏を語るのに欠かせないネタです。
彼の植生遷移論は、今流行りの「潜在植生」論より、よっぽど価値があると思いますよ。

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