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2012/01/21

木材は建築からの撤退を

林業を抜本的に改革する、という言葉を耳にすることがある。

その場合、何を改革するべきか。既成の概念を打ち破るのか。

たとえば林業の造林方法を変えるのか、伐採・搬出方法を変えるのか。いやいや流通を変える?そもそも林業で生産するべきものを見直す?

そう考えているうちに、林業界の主要な目的を建築材の生産とする思い込みが間違っているのではないか、と思いついた。

言い換えると、木材の主な使い道は建築だという思い込みが、林業を衰退させているのではないかと推論するに至ったのである。

たしかに古来の林業は、常に建築物に使われるものとして想定されてきた。もちろん燃料としても重要だが、その場合は枝葉でよかった。ある程度の太さを求めて木を伐採&育てる場合は、やはり宮殿なり神社仏閣なり住居の建材としての需要だったのだ。

それは今に至るまで続き、世界中で木材の利用法と言えば、まず建築物だった。それが量的にもイチバン多かったのだ。石造の建造物も、木材がないから仕方なしに石を代用したものであった。(ギリシャのパルテノン宮殿などエンタシス型柱も、本来は木製だったとか。)

だが、もはや木材の建材としての優位性は崩れている。石よりはるかに使いやすいコンクリート(セメント)が生まれ、鉄骨など金属建材が生まれ、合成樹脂やらも新しい建材として広がってきた。

それらの素材が木材と張り合うと、木材は素材として負ける。寸法は限られているし、強度もイマイチだし、加工できる形にも制限がある。何より生産に長時間かかって安定しない。それらの欠点は、コンクリートや金属素材にはなく、むしろ得意分野だ。

結局、素材としてのライバルが増えれば増えるほど、価格は落ちていく。世界中で木材は、価格下落の波にさらされているのだ。
これまで森林が減少したら木材の供給量が落ち、その分価格が上がるだろうと期待?する向きもあったのだが、資源量が減れば減るほど安定供給できないだろうと見捨てられ、逆に価格は落ちていったのだ。

では、今後どうすべきか。

まず、木材の使い道として、建築業界から撤退しよう。コンクリートや鉄骨や合成樹脂素材などと同じ土俵で戦ってはダメだ。

代わって、木材が得意な、木材しかできないような用途の分野に特化する。それは、おそらく五感と情操面に関わる分野だ。そのうえで価格を上昇させる。

たとえば包装紙(木)に特化する。紙ではなく、木を折って畳んで張り付ける商品にする。あるいは布の代わりに木で服飾をつくる。世間にあるものを何でも木で包み込んでしまう。
そうなれば木目が町に溢れて、常に木に触れるようになる。その裏はコンクリートや金属であることを忘れるだろう。

そして、伐採する木の量は少なく、高付加価値高利益の分野に育てることだ。
そうすれば、森林を減らさず十分な利益を得ることができる

経済のグローバル化の中で、業界NO.1のメーカーだけが市場を握れると指摘された。価格決定権を持ち、業界ルールを決めるのは、NO.1企業だけなのだ。

なんでも製造できます、というのは自慢にならなくなった。小売店も、デパートや総合スーパーは衰退して、専門店が勢いを増している。家電もパソコンもみんなNO.1だけが利益を出しているのだ。

 

そこまで極端でなくても、木材も進むべき道を変えるべきではないか。

……そして、建築構造材から木材が消えたとき、初めて世間は木材の建材としての価値に築くのかもしれない。

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木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

確かに大断面集成材で造られた体育館などの木造建築物を見た時、「こんなん、鉄骨やRCでいいじゃん!」と思いました。
秋田の木材高度加工研究所で耐火にするために木材の間にプラスターボードがはさまった巨大な集成構造材を見た時には興ざめに近かったです・・・。

大断面集成材は、なんとか木材を建材として生き残らせようとした、最後のあがきですね(^^;)。
木造ビルディングを建てようという発想も同じ。技術的には建てられるだろうけど、意味ないじゃん、とおもってしまう。

数年前に木製PCパーツが一斉に発表された時期があったけれど,あっという間に消えたなあ・・・ マウス,キーボード,ディスプレイ,ケース(筐体)などなど.

どれも高かったです.木の手触りならこの値でも買うだろうという強気設定だったのか,単にコストがそれだけかかったということだったのか分かりません.

そういえば,北軽井沢のペンションでは自作木製筐体を使ったPCを目撃しました.オーナーの趣味だそうです.工作そのものはホームセンター級でしたが,丁寧な面取りといい,ぴったり合った継ぎ目といい,作者の「愛」を感じましたね.

木の部材というと,熱伝導率(ぶっちゃけ言うと,ぬくもりある手触り)と強度の両立が独特なんですが,あれは化学工業の人が本気になれば安価に量産可能なプラスチックで再現できるんでしょうかね.

コンクリートの原料である石灰は 後何年かで自給できなくなります。
日本の製鉄の品質がよいのは 日本の石灰の質がよいからです。壁に使うプラスターボードは、製鉄に使った石灰を利用しています。何年か後には輸入ですね。
もちろん、日本において石灰をとるのは木を伐り山を削ります。森林に負荷をかけているという点では、皆伐よりコンクリート造の方がキツいです。耐用年数も意外に少ない。かつ、コンクリートのリサイクルはやっかいです。
どちらにせよ、海外の動向に依存される事になるマテリアルです。
鉄はリユースできますから、今のうちにガンガン使い、鉱山なみに都市にストックしておくのは大賛成ですが、林業においては過去と今だけ見て判断するのはいかがかと。

今は、林業にしわ寄せがいっており申し訳ない事ですが 何年かしたら これだけの資源をストックして頂いた林業の方々に感謝するのではと 思っています。

日本の木材の自給率が悪いのは 製紙による所も大きく 建築での国産木材の割合は上がってきていると思いますよ。

人の都合に合わせた資源のチョイスを出来る時代から 資源に合わせる時代に突入していくのではないでしょうか。

責められるのは林業ではなく 建築の側の姿勢です。なんで そちらを攻めないで 守るべきものを守ろうとしないのか 外野からみると不思議だなと思う事がよくあります。

材木屋兼木の家をつくっている海老名と言います。読ませていただいて一言。

「・・・それを言っちゃあ・・・。」

鉄骨やRCはそれぞれに適した構造があり、木造は木造に適した構造があります。

確かに木材=建材一辺倒ではダメなんですけどね。
他の多様な用途が見つからないとダメだと思います。

このブログは「それを言っちゃオシマイ」なことを書くのが信条です(^o^)。

石灰の件は盲点でしたが、経済的な面から言えば、近年木材はマテリアルとしての優位性を失い、ライバルがあまた存在するという実態は変わりないでしょうね。

そして、最大の問題は価格下落です。
別に建築資材に木材を使うのはかまわないのです。が、市場が求めている(ライバルとのバランスで)価格に合わせると、森林経営は成り立たない。材木屋&建築屋が木材を求めても、市場で設定された値段では林業家が出荷しなくなる時代が来ると思いますよ。それとも環境破壊に目をつぶって木材を収奪するか、税金にどっぷり浸かって維持された森林からの木材かな?

先日こちらのブログと書籍を読ませていただいて、NPO法人サウンドウッズの安田さんと能口さんにお会いしてお話を伺って来ました。

林業が健全に経営していくにはサウンドウッズさんの方法がベターだと思って、自分でもやってみようと試みております。

サウンドウッズのシステムだと、立木価格は通常の3倍にはなります。だから賛成です(^o^)。
「建材からすべて撤退を」というのではなく、今みたいな価格なら木材を建材に使わない方がマシ、ということですかな。建築関係者は、ぜひ木材価格を現在の3倍にしても売れる家を建ててください。

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