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森と林業と動物の本

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2012/02/07

ファイヤーフォレストリー

この写真は、生駒山の森の中に隠されたような棚田の一こまである。

先日、散歩……いや、ここまで行くとハイキングか……の途中に見かけて、ちょっと隠し撮り。

Photo


棚田の法面にある枯れ草に火をつけて焼いている。

我々のような「よそ者」扱いされる者が、山で焚火をしたら怒鳴り込んでくるが、地元の人間は平気で火をつけているのだ。

とはいえ、最近では野焼きの禁止が強くて、農地でもどんと焼きをしなくなりつつある。
正確には、伝統行事や、個人の小さな焚火などは例外規定があるのだが、どうも一律に禁止と思われがちだ。

山火事を恐れたことも理由だろう。森林が燃え上がると、なかなか消えないし、莫大な有機物を消してしまう。


だが、もともと山の開発は野焼きから始まったはず。焼畑はもちろん、草原を焼いて、見通しをよくするとともに、枯れ草を除くと新芽が出やすい効果もあることを経験的に知っていたのだろう。山を焼くと、野生動物が増えるという調査結果もあるのだ。

そして日本の林業は、ほとんどが焼畑から始まっている。山の木を伐採して、木材として利用するとともに伐採地で陸稲や野菜、芋類を栽培する。そして雑草の進入が増えてくると、木の苗を植えるか、自然に生えてきて、森へもどす。

森も、火が入ることで土壌内に堆積した古い有機物を無機化し、アレロパシーにつながる余計な化学物質を消すのだ。それで土壌も一新する。消毒にもなるだろう。

それなら、もっと火につながる林業<ファイヤーフォレストリー>というのはありえないだろうか。

昔ながらの焼き畑の復興もいいが、現代流に山腹に火線を引いて自動燃焼と自動消化を行い、その後に山菜栽培を行う。

バイオマス燃料を生産するのも一つだが、もっと大胆に、荒れた山の生態系の回復する技術として野焼きを活用したい。手遅れまで荒れた山を無理して手入れするよりも、一気に焼いてゼロからスタートさせた方がよい森づくりができる。間伐するくらいでは回復しそうにない山を焼き、跡地で植林から始めるのだ。その方が、すじのよい木が育てられるし、生長も早い。

いっそのこと、森林を丸ごと蒸し焼きすることで、林立する木々をそのまま木炭にできないか。そうなれば、搬出も楽で、高価格の木炭を大量生産することが可能になるだろう。

なんなら山火事発電……なんてことも考えてみる。

馬鹿げたことを、と思わず、火を恐れず、もっと火を利用してもいいのではないか。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

「一気に焼いて…」のくだり、思わず吹き出してしまいました!
後の話の飛躍も、突飛ですがほんと面白い考えですね。

実行するには相当な覚悟が必要でしょうが…。

いや、ホントに小手先の間伐では手の打ちようのない人工林もあるでしょう。
伐り捨てするなら、燃やしちゃってもいいような気がするんですけどねえ。

山を丸ごと蒸し焼き…
n十年前、片山キャンパスでそんな話題があったっけなぁ。懐かしい。

わ。F 爺さま。。お元気かのう。
(人様のコメント欄でご挨拶(^^;)

ファイヤーフォレストリー!
人(♂)は火が好きな方が多いので、
実際に行ったら、見学者が続出かもしれませんね。

F爺様、お久しぶりです!

そうか、片山キャンパスで。。。私も、誰かの下宿で、林学科ほとんどが集まった飲み会で話して、みんなにボコボコにされた記憶がある……。

人(♂)に限らんでしょう(^o^)。大イベントにして、山村を元気にできないかなあ。

田中組長!

おっしゃる通り、許可を得てどこかの間伐し忘れた、手入れができていない森を山焼きしたいもんですな!
NHKTVであった「クニ子ばあばの不思議の森」ですな。

森の丸焼きプロジェクト、
いいですね!
確か諸外国では、積極的な山焼きをしている国がなかったですかね?

手を上げる放置された山を持つ所有者はいないでしょうかね?

山火事が山の農地化になるということを知った男より

仙台の結城登美雄さんが、東北のどこか(山形ではなかったかな)の小規模な焼き畑を始めた人を紹介していましたが「焼き畑というと大げさだから、火耕(かこう)」と言っていました。

小規模に山を焼いて、カブやダイコン(在来品種)を育てていたような気がします。耕作断念地の藪だったら、人工林よりも気は楽かもしれません。

欧米では、コントロールドファイヤーと呼ぶ、火付けがあるそうです。
これは、山火事を大きくしないため、そして芽吹き誘導など更新のためですが、ちゃんと火を制御した使い方をできているんですね。

森の丸焼きプロジェクト、やってみたいですね(笑)。

山形では、焼畑やってますよ。火耕も焼畑の別名じゃなかったかな。

そうだ、かっこ良く

国際火耕年もいいですね。

欧米って広すぎorz
米西部や地中海沿岸からイベリア半島のように、夏のあいだ何ヶ月も文字通り1滴も雨が降らない場所では、前線も通らないので風も吹かずに、延焼をコントロールできるでしょうね

しかし、日本では年中前線が通っていて、冬の太平洋側などのように乾燥はしても、1ヶ月も風が吹かない、なんてことはないので、粗放的で大規模な火入れは難しいのでは
それに山奥まで人住んでるし

あと、山を丸ごと焼くと皆伐と同じで河川水質に影響が出るで、社会的に許容されるか疑問です

焼き畑は手間ですよね。延焼した時のリスクはとんでも無いです。
火を入れた後はすぐに木を植えるか、少し時間を置いて植えるか悩みどころですよね。こちらの地域ではコナラがその後良く生えるように思えます。
多少良い木を残してから植林するのが良いかもしれません。 よくツチクラゲがと林業系の試験に出ますが、未だに当たった事がありません。アカマツが良く生えそうですが・・・。

 ちなみに山火事あとの処理は木が炭化していて、ソーチェーンが大変な事になります。しかも表面だけ炭化しているし。
 山火事にあった木を共販所等に出すと信頼を失うようです。縁起が悪との事です。また、乾燥した時の材の割れ方が違う様で、そこからもその筋の方々は分かるようです。
 
 

私か考えている「森林丸焼き」は、森林に巨大なテント幕をかぶせて、蒸し焼きするのです。そしてガスを取り出して利用する。また中の木は完全炭化させる……という壮大なものです(笑)。

ところで日本の焼畑技術は、世界一ですよ。これを継承しない手はありません。

そ、それじゃ森の動物さんたちも。。。
ん。美味しいかも。

森の動物さんは、炭化する前に取り出したいですね。ソースを塗って、また中へ……て、わけにもいかんか。

むかしは、学校で焼き畑は山間地域で行っていた原始的な農法で,熱帯地域の焼き畑は環境破壊であると習いましたので,焼き畑に対してはいい印象は持ってませんでした。
ところが、NHKTV「クニ子ばあばの不思議の森」宮崎県椎葉村で何百年と継続されて来た焼き畑農法の映像を見て、驚きました!

これこそ,まさに持続可能な農法のひとつではないかと。あの番組を見た人は、難しい本(最近出た高価な本のこと?)を読まなくても理解出来たと思います。

ですから、難しいこと言わないで昔は普通に行っていた地域では、焼き畑農法を一度実施してみたいと提案したわけです。
もちろん,地域の方の協力やら合意やら、許可が必要なことは言うまでもありません。

我が国でも,昔は意図的な焼き畑はもちろんのこと、炭窯からの失火、戦火による延焼、自然発火など、しばしば一山焼けてしまったことがあったんではないでしょうか?

その辺の事情は、どこでわかりますか?
組長ならご存知でしょう!

山焼きを経験してみたい熊(♂)より

その9000円もする本のはじめには、

「焼き畑とは、佐々木高明によれば『森林を伐採、火入れして短い期間の土地利用を行ったあと、ーーーーー充分な期間をおいて森林の再生をはかることが出来る場合には、ーーーー熱帯ないし亜熱帯の自然によく適応した農業形態』」と特徴付けられる一つの粗放的な農業の形態の姿である。

とありますが、熱帯と亜熱帯だけでなく照葉樹林帯の広がる暖帯や落葉樹林のある温帯でも、適切な森林管理を行えば、21世紀には持続可能な森林の利用・農法になるのではと、思いますが。

皆さん,いかがですか。

日本の焼畑技術は非常に優れていて、「粗放な」熱帯焼畑と一味ちがいます。たとえば火は上から付けて、下に焼き下ろします。すると火が大きく延焼しづらい上に、じっくり表土を焼くことができます。

そのほか森林育成につながる手法もあり、まさに農林融合の持続的技術でしょう。焼畑の研究は、民俗学的な面から行われることが多くて、農耕技術としての研究が遅れているように思います。
そして、先進国で焼畑が現在も残っているのは日本だけという点でも、注目すべきではないでしょうか。

もちろん失火もあるでしょうが、もっと技術と設備を現代的にすれば、ファイヤーフォレストリーは確立できると思うんですけどね。

私は、椎葉村のほかボルネオまで火をつけに行きましたよ(^o^)。

田中組長が、火付け人になっ焼き畑倶楽部、作りませんか?

話は違いますが,昨日、京都四条堀川にある里仁舎の新しい事務所で、コクヨのカギロイ代表(鹿野勝則)という木工品を東京の自由が丘で販売しているお店が制作した、北山杉で出来た家具のお披露目がありました。

北山丸太を使った家具を、育てる人:北山丸太生産協同組合、支える人:里仁舎+アークス建築事務所、創造する人;デザイナー小泉誠、カタチにする人:二葉家具、応援する人:林業女子@京都、ひとりひとりに届ける人:カギロイのコラボで完成しました。北山杉×小泉誠=イマトコ、でした。

これで,内田洋行、ITOKI、コクヨの家具メーカーがすべて国産のスギでの家具作りに勢揃いしました。これからが、間伐材のスギ利用が進んでいくんでしょうね。

あ、そうそう、高価な本には愛媛大学の山口聡先生が、新しい農学授業と地域興しとの連携、という題で書いてますが,高知県池川町で地域振興として焼畑活動してました! 「愛媛大学焼畑の会」というのが、「焼畑で村おこし」プロジェクトをしています。

焼畑倶楽部でも、山おこし、しましょうよ〜〜〜。
山焼きしたら、焼き鳥出来るからね(笑)

焼畑やりたい団塊の世代より

北山丸太のコラボ計画も順調のようですね。

で、北山林業も、元はと言えば、焼畑からスタートしています。もう一度、林地を焼きましょう! とていあんしたらボコボコにされるか……でも、十数年前に北山杉の里を走ったら、しっかり火入れしていましたよ。(地拵えだと思う)

椎葉村の宮崎はもちろん、愛媛、高知、島根、福井、新潟、山形……思いつくだけでも、こんな地域で今も焼畑やっているはず。だから技術も残っているのではないかなあ。

焼き畑は、男のロマンだ! なんて。

いや、焼畑を続けているの、男のロマンではなくて、はあばのロマンです(笑)

ばあばもいいですが,じいじも焼畑がしたい、です。

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