某林業木材シンポジウムにて~木材業界と山主
シンポジウムは、パネルディスカッションに移った。
で、何が話し合われたか……何もない(*^.^*)。
まず国会議員や元大臣の話の内容のないこと。公共建築物木材利用促進法の案をつくった話が出たが、そもそも林業に関して、まったく素人である。そして業界出身者も、見事に林業のことを知らない。
だから、梶山氏の話を受けて、何か議論が深まるということはないのであった。
ただ、木材業界の現状の話は面白かった。公共建築物木材利用促進法が成立したのだから、ビジネスチャンス! として沸き立っているかと思いきや、まったく関心を示さないのだという。異業種では虎視眈々と狙っている会社が現れているが、肝心の木材業者は動かない。そもそも法律のことを知らないレベルらしい。
当然ながら、林業にも関心なし。それどころか木材のPRさえろくにしていない。こちらも異業種の方々が熱心に取り組んでくれている……と語る始末。
たしかに木材利用だ木づかいだと訴えている人の中に、木材関係者は極めて少ないよなあ。
そして木造住宅と木造建築は、実は似て非なる世界という話が出た。住宅は、特例で規制がゆるく、たとえば構造計算をしなくても建ててよい。ところが公共事業などで求められる建築物は、さまざまな規制がある。構造計算して、強度を示して耐震耐火にして……と厳しく、それらを鉄骨もRC構造も、みんなクリアしている。そこに参入しても、仕様書を書けるのか?というのだ。木造の中では、せいぜい合板・集成材が頑張る程度なのである。
これまで木造住宅は、そんな閉鎖的障壁に守られてきた商売をしているから、公共事業への参入は簡単ではないだろう。
そして、会場からの質疑応答に移ったが、これがまたドツボであった。
地元の某森林組合長が真っ先に手を挙げたのだが、がなりたてるだけで何が言いたいのかわからない。
ようするに梶山氏の森林組合がだらしない、補助金目当てばかりという話を受けて、「反論ではありませんよ」と言いつつ、不在地主が多くて集約化できないという話から、ずらずら自分たちの改革について触れるのだが、私に言わせれば、それは改革ではありません(笑)。補助金もらって、新規事業という名の採算考えない事業やってるだけ。そして「国などの支援がないとやっていけない」と訴えるのだから、やっぱり補助金ほしいのだろう(~_~;)。
全然梶山氏の話の内容がわかっていない。
さらに私の後ろで立ち上がった山主は、「ドイツの話はええんや」「梶山さんは現場を知りませんな」と言って、自分が相続した山に行こうにも道が消えてしまった話。そして町や森林組合に道を付けてくれ(自分は金を出さないけど)と言って断られた鬱憤をぶつける。
しかし、梶山氏に「森林組合の組合員になっていますか」と問われて「ならな、あきまへんのか」と応えるレベルだから、問題外(笑)。ドイツどころか日本の林業を知らない。もっとも現場を知らないのは自分であることに気づいていない。ようするに子供の頃に親に連れられて山に行ったまま、その後都会に出て、ほったらかしだったのだ。そして、自力で山をなんとかしようという気概はなさそう……。
いやはや、私は深く梶山氏に同情したのである(~_~;)。これでは、政策語れないよ。
少し気になる点。梶山氏自身は森林・林業再生プランについて、「まだ大枠が決まっただけ。細部はこれからだし、それを運用する現場がどれだけ動くかにかかっている」と幾度か繰り返した。
それはまったくそのとおりなのだが、国家戦略室を辞職した直後の今、そういう発言が出るのは、すでに成功を危ぶんでいるからではないのか? 高邁な理念は示したものの、現場に下りていく過程で、変質していることに気づいたからではないか? 林野庁内に不協和音があり、やる気ないことに勘づいたのではないか?
……と邪推してます(笑)。邪推です。気にしないでください。
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大阪で地元の森林組合っていうと…!?
それはさておき、うちの県でも「公共建築物木材利用促進法」に関して、昨年から4回山側~設計や施工までの人間が集まり、高校の武道館を作るという設定で、「木づくりワークショップ」がありました。
設計の話が多くを占めたこともあり、自分の知らなさ加減を思い知らされましたが、これまで同じ席に着くことのなかったメンバーが集まってこれからも勉強会を続けて行こうということになりました。
でも、仰せのように公共建築への参入には課題は多いです。
梶山さんの説は、多くは当たっていると思います。でも4月から「森林経営計画」が始まるのに、今まだ大枠が決まっただけでは、責任ある政策と言えません。(今責任ある立場ではないと言えばそうなのですが…)
新しい制度、当初言われていたものからはずいぶん変わってきているように思いますが、影響が大きすぎるので現実とのギャップを埋めるために、遅れ遅れになっているのかなと推測しています。
「高邁な理念は示したものの、現場に下りていく過程で、変質している」と言えばその通りなのかもしれません。
投稿: A森林組合 | 2012/02/20 00:37
おお、和歌山の森林組合は木材利用促進法にも対応しようとしていますね。そうあるべきです。
梶山さんの立場としては、彼は大枠をつくるのが仕事で、その後の現場に則した森林経営計画の細部を詰めるのは林野庁などの仕事なのでしょう。
「変質」も、現場に則したものに変える過程ならよいのですが、骨抜きになっては改革でなくなりますなあ。
ちなみに、来月田辺に行きますわ。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/20 09:33
田辺にお越しですか!!
私も山の中から出ていきますので、
是非!ぜひ!ゼヒ!お目にかかりたいです。
木材利用促進法へは、残念ながら「森林組合が対応しようとしている」とまでは、まだまだ言えず、山側と使う側の人とのギャップの大きさを、お互い認識できたという位のものです。
でも使う側の人たちが、理解しよう、使おうと思ってくれているということが、大変うれしく、ありがたいです。
ちょっとずつでも前に進んでいきたいと思っています。
投稿: A森林組合 | 2012/02/20 17:31
田中組長
ブログを読んだだけで,がっかりしました。
国レベルでどんないい法律(木材利用促進法)を作ろうとも,現場の山主がこんな程度では、日本の林業は絶滅危惧種ですな。
騒いでいるのは外野で、選手は試合をしていることも忘れてる情景が浮かびました。
川下の人間が、まともな川上の人間と組まない限り日本の林業は絶滅するしか道はないでしょうね。
全く,ひどい討論会でしたね。
投稿: しゃべり杉爺 | 2012/02/20 18:04
ちゃんと考えている森林組合関係者、自伐林家、委託をしながらの森林所有者(林家)もいますので・・・・。
ただ、言えるのは1億総評論家時代で、マスコミなどの論調にシンクロしやすい状況になっていることも事実です。ステレオタイプの理事が勢ぞろいしている地域や森林組合は大変でしょうけれども。。。。
事実、1ヘクタールぐらいの山を自分で作業しながら生活をしている、統計上林家といえない人たちの中にも山の手入れをしている人もいます。
確かに、森林組合の理事の皆さんには地域のオピニオンリーダーとして、自分なりの意見や意思を持って話をしてほしいという期待や希望はあります。
まだ、世相を変化させていくことはできると思いますし、生産だけではない適正な森林管理手法を考えていきながら、生産も増やしていく策は取れると思っています。
生業として林業単独で自伐林家をしていくのは難しい状況ですが、林内生産物や農業などと組合わせて生計を立てていく、周辺の山々の管理を引き受けながら自伐林家をしていくなど、様々な方法がありますし、森林組合も地域の雇用の場としての期待感も高まってきていますから、もうちょっとだけ長い目を持ってもらえないでしょうか。
根拠はないですが、手ごたえとして、頑張っている、頑張ろうとしている人は増えていると感じている今日この頃です。
投稿: 鈴木浩之 | 2012/02/20 18:32
>ただ、木材業界の現状の話は面白かった。公共建築物木材利用促進法が成立したのだから、ビジネスチャンス! として沸き立っているかと思いきや、まったく関心を示さないのだという。異業種では虎視眈々と狙っている会社が現れているが、肝心の木材業者は動かない。そもそも法律のことを知らないレベルらしい。
木材業者としては大変耳の痛いお話、かつ情けないお話。。。
若手は若手でちゃんと動いてるんですがねぇ。。。
がんばります。
投稿: 海老名宣行 | 2012/02/20 20:01
このシンポには、北海道から鹿児島まで約400人が参加したそうです。
その全員がトンチンカンではないと思っています。質問した人の中には、真っ当な質問もありましたし。
ただ木材業界、林業家、そして山主みんなが前向きになったとはとても言えません。
おそらく、少数のまったく山に興味のない人、非常に熱心に取り組んでいる人の間に、山をなんとかしたいけど、やり方がわからない人がいるのでしょう。
木材業界も同じで、目先の利益のために林業家を騙しても平気な人もいれば、良心的に時代に向き合おうとする人もいる。
ただ割合としては、改革者はいまだ希望を持てるだけの人数いませんね……。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/20 21:24
やはり、
山の語り部
木の語り部作戦
敢行しかないですね。
投稿: 鈴木浩之 | 2012/02/20 21:45
>某森林組合長
特定郵便局長みたいな
いわゆる素封家てやつですか、それとも西部劇の悪徳保安官
ところで、大阪(関西人)は維新前のええじゃないかで、踊りまくってるんでしょうか?
投稿: msx(梶山ウォッチャ) | 2012/09/04 01:30