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森と林業と動物の本

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2012/02/12

樹齢110年の杉檜を伐る

なんだか、私は天竜に観光へ行ったように思われているかもしれない。

実は、木を伐りに行ったのだ。

「樹齢100年を越える木を自分で伐りませんか」という甘い言葉に引かれて……。

いそいそと出かけた私は、まず伐ってよいヒノキに案内された。

直径約40㎝。なかなか堂々としたヒノキだ。

が、よく見ると受け口がすでに伐られている。しかも斜面下方に。

素人に伐採体験をさせる時は、事前に用意しておいてくれるのだ。受け口は倒す方向を制御する重要な技術だ。追い口は、まっすぐ伐るだけでよい。まあ、ツルを残す必要はあるが。

受け口から伐りたかったなあ」とつぶやく。「それに山の上方に倒したかった……」「倒した木の元が、切り株の上に乗るようにしたかった

目茶苦茶、ぜいたく(^^;)\(-_-メ;)。

まあまあ、となぐさめられて(^^;)、久しぶりのチェンソーを握る。

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見よ、この勇士! というほどかっこよくない。


しかし、油断した。下向きだから楽勝だと思ったのに、ちょうど強風が吹いていて、梢が揺さぶられる。そのため、倒れる方向が15度くらいずれて、予定していた木の間ではなく、一つ別の樹間に倒れてしまった。

悔やむと、「風のせいだから仕方がないよ」となぐさめられるが、気に食わない。

なお、倒したヒノキの切り株の年輪を数えると、だいたい110本となった。樹齢110年前後である。非常に密で、しかも真円。本気で吉野材と間違えそうだ。

悔しがったおかげで、もう1本伐らせてもらえるようになった。次はスギだ。樹齢は同じ頃に植えたというから、100年以上あるのは間違いない。

今度は受け口から。そのためには倒す方向を決めねばならない。

しかし、斜面上方には作業道が延びているため倒せないことがわかった。すると右斜め上方か。たしかに少し空間が広がっている。が、そこには別の木がすでに倒されていた。狙ったとおりに倒せたとして、切り株と元玉に激突する。

「間伐だから仕方ないですよ。かまいません」と言われるのだが、う~ん、美学に反する(^^;)。倒した方、ぶつかった方、双方に傷がつくかもしれん。最悪折れる。結果的にぶつけたのなら仕方がないが、狙いをそちらに向けるのはイヤだ。

というわけで、ほぼ真横を狙うことにした。

慎重に受け口方向を決める。そしてチェンソーを食い込ませる。

が、その時点で失敗してしまった。斜面に立っていた私は、平面に切ったつもりが、切り口を斜めにしてしまったのである。これでは、伐倒方向がかなりずれる。

それで修正したり、また修正を手伝ってもらった。かなり大きな受け口になってしまった。やっぱり受け口は難しい。

で、芯をツッコミで抜く。追い口をド~ンと伐る。また、ワイヤーで牽引もかけてくれた。

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ちょっと、かしぐ。あああ、また方向が少しずれた……。。。。

狙った木にこするようになりながら、それでも、かろうじて予定の木の間に倒れ込んだ。

残念ながら飛び跳ねたので、受け口の上に乗せることはできなかった。

「受け口を経験した人は初めてですよ」となぐさめられる(^^;)。

やっぱり、甘くなかった。これまでの経験は、直径20㎝程度の、いわゆる間伐材レベルばかりだった。それなら、さして悩むことなく伐採できた。方向もさほど苦労しなかった。
しかしチェンソーのバーが、一度では届かないほどの大径木は初めて。全然感触がちがう。向こう側が見えないし、思い通りにバーが動かない。

こうした技術をは、数をこなさないと身につかないのだろう。

誰か、1日で30本くらい伐らせてくれないかなあ(^o^)。樹齢100年ものばかりとは言わないからさあ。そうしたら、少しはマシになるよ。

ちなみに伐った木の木口にサインする。

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この後、葉枯らし乾燥して、さらに貯木場、製材所でも天然乾燥するから、利用できるのは2年以上先である。それまでに、この木を使って家を建てたいと言えば、使ってくれるそうだ。木にはナンバー振ってあるから、わかるのだ。

2年後に家づくり……厳しい(^^ゞ。

今につながる天竜林業は、先に紹介した金原明善によって始まった。金原は、天竜川の治水を行うために山に木を植えることを決意。その範を吉野に求めた。片腕となる男を土倉庄三郎のところへ送り込んだのだ。明治18年(1885年)のことである。

明善も、吉野を訪れている。その後、庄三郎も天竜を訪問するなどして指導したから、天竜には吉野式の植林が行われることになった。

だから当時植えた木は、樹齢で100年~120年くらいだろう。ということは、今回私が伐った木も、土倉-金原時代に植えた木ということになる。

実際、訪れた山は、全体が100年前後のスギやヒノキが林立していた。その景観は、驚くほど吉野に似ている。山の傾斜まで似ている気がした。

そして伐った木の一部を記念に持ち帰ったのだが、その年輪を見てくれ。

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なかなかのモンでしょう?






最後に。この伐採体験をさせていただけた榊原商店の榊原さんに感謝する。

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コメント

おお、なんとまあ!
貴重な体験をされましたね!
羨ましい限りです!

直径が40センチで、110年ですね!
すると半径は20cm=200mmですから、年輪幅は2ミリ以内となります。

樹齢1000年だと、年輪幅が2ミリでは直径が4mとなります!

樹齢が500年程度の(例えば,吉野の歴史の生き証人)大杉なら、半分の2mでいいことになります。
私の知る限り、大抵の大杉でも2m前後ですから樹齢は500年がいいとこでしょう。
もちろん幹周りだけなら2m以上の杉がありますが、合体木の可能性があります。

なるほどの計算ですね(^o^)。年輪幅2ミリ以下なら、吉野材として通用するでしょう。て、産地擬装を勧めているわけじゃないけど。

樹齢が高くても、年輪が詰まっていたら太く見えないですよ。
「歴史の証人」も、樹齢400年に見えないもの。せいぜい1mくらいじゃないかなあ。つまり年輪幅は1ミリくらい。

直径40㎝ってのはどの当りの太さなんでしょう?作業中の画像からすると根元では50㎝越えくらいに見えます。自分がいつも購入する三河桧の丸太もこのくらいの太さが多いですが、樹齢110年も経ってるんですね・・・。次回からもう少し心して制作に掛かります(いつもそれなりに心してますが)。
杉のほうは間伐の跡と枝払いの跡が判りますね。

おっしゃる通り,樹齢が高くても年輪が詰まっていたら太く見えませんね。
なんか女性の年齢とスタイル(ウエストサイズ)に似ている?

「歴史の証人」も樹齢400年に見えませんね。
スタイルのよい吉野美人かな?
年輪幅は1ミリくらいなら、1mでOKですね。

ちなみに,私の身長は172cmで寿齢64歳ですが、ウエストサイズは〇〇cm、メタボです(汗)

おお。かっこいいですね。
勇士。。。じゃないよね。勇姿?雄姿?有刺とか?

さておき、一日30本ですか。
うんうん。。毎日伐って1年で10,950本。
頼んでくる人、いるかもね。(^^)

大雑把に言えば、天竜と吉野は地質的に同じようなもんですから,斜面の形も似てるんじゃないでしょうか。

見た目は、私も太さは50㎝以上に見えたんです。、フツーに計ったから胸高より少し下くらいだったかな。施業的には(記録するのは)目高周りで計っていたけど。

>勇士。。。じゃないよね。勇姿?雄姿?有刺とか?

う。。。いや、勇士です(キッパリ)。素人で大径来伐採に挑んだのだから……。無理あるか。 遊資?有志?遊子? ♂志だったりして。
毎日伐らんでいいから(^^;)。

吉野から天竜にかけては中央構造線沿いでしょうか。四国の嶺北もそうですね。

「年輪巾が緻密で一定だと良材」は過去の話になりましたね。杉の画像の年輪を数えると30年くらい前に枝払いして、その後に間伐、10年くらい前にまた枝払いしたんですかね。
以前ではこういう年輪の木で建具を作ると怒る施主さんや大工さん(元請さん)が見えたんですが、今は居ません。最近、一度だけユーザーさんに、「ここで貼り付けたの?」と聞かれ「ここで間伐したらしいです」って言ったらすごく感動してくれました。

おお、年輪から樹暦を読みましたか。
年輪が詰まったり広がったりで、その年に何が木にあったか類推できますね。それを木のドラマにすることも可能かもしれません。

しかし年輪幅の揺れにクレーム付ける施主がいたのか……。
昔は、年輪幅まで一定にする育林技術があったんだろうなあ。

久しぶりに 手入れの行き届いた山を拝見しました。
桧伐採画像の下の方にも 作業道を入れているのでしょうね。斜面の角度もきつくなく 作業もしやすいでしょう。

110年ぐらい前 1ha 8,000本~10,000本ぐらい植え 
育林(枝打ち・間伐)の技術を習得されたとことに感動。
30年~40年ぐらい前に 材価が高かった時代にも皆伐されず
間伐を繰り返し、現在の山を作られた山主さんの努力に
頭が下がります。

私の目標に近い 美林です。
先祖が残してくれた少ない山、一部ですが
枝打ち・間伐を繰り返し 現在50年 今 搬出間伐 真っ最中

田中さん 画像のような美林ではありませんが
お時間あれば 一日30本 伐採お願いします(笑)

おお、50年生の山なら練習にぴったりです\(^o^)/。
いきなり100年越えは難しいです。

地域はどこですか。
行こうかなあ。30本伐らせてくれるなら。

お。来た来た。30本伐採依頼。(^^)
これで、勇士の腕が上がる。。
腕が上がんなくなるかも?

良い杉ですね^^
つ、使いたい・・・

1日30本伐れば、腕前は上がるだろうけど、チェンソー持つ腕が疲労で上がらなくなるかもなあ。。。

と、唐突にナカシマ・アヤさんの華奢な身体についた力強い上腕を思い出した(^^;)。アヤさんに教えてもらおうか。

私が練習として伐った木は、オジゾークンに割り箸にしてもらうということにしよう。

森町の榊原商店かな? おばちゃん、元気かな? なつかしなあ~

森町と言われると??ですが……私がお世話になったのは天竜区の榊原商店なので。

1日30本 杉なら可能ですが 桧が多いため
枝が隣木にかかるため 20本ぐらいが 限界かも^^w

今年の秋も 搬出間伐予定の林地がありますから
杉と桧 両方 伐採練習していただいても
いいかなぁ な~んて 考えています。

秋まで 筋トレお願いします。
生駒から 林地まで お車で4時間弱ぐらいのところです。
詳しくは また メール差し上げます。

ほんとに 依頼していいのかな!?
でも 田中さんにお会いして いろんな話お聴きたいし
怪我でもされたら大変だし、複雑な心境です。

材価も低迷しているし 「立木伐採」を観光化しようかな(笑)

春日の大杉

司馬遼太郎『余話として』が2020年に
文春文庫新装版となりました。もともとは1979年です。春日の大杉という初出不明のエッセイがあり、春日の大杉を2300万円で落札して4000万円で「売るはなしがあります。1978年ごろとして物価は4分の1くらいでしょうか。

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