「木造校舎、燃やして実験」は成功なのか?
今日のニュースの時間で見ただろうか。
3億円かけて建てた3階建て木造校舎を燃やす実験が行われたことを。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120222/t10013206861000.html
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4959369.html
ようするに、公共建築物木材利用促進法の制定を受けて、学校の校舎も木造で建てる動きが強まっているが、現行の建築基準法では3階建ての木造校舎を建てるのは困難である。
今回の実験は、その規制の緩和につなげるために、木造建築物が火事にあった際にどのように燃えるかを調べ、耐火性などを検証するためのものなのである。
が、結果は……。
火を付けて、わずか2分後に爆発が起き、あっというまに3階まで延焼、2時間で全部焼け落ちた。
ニュースでは、これは林業信仰、いや林業振興(^^;)に結びついていることを説明しているが、一般の人にとってはどんな印象を起こしたか。
3億円、もったいない!
こんなに早く燃えるんなら、木造校舎でなくていいや!
私も思う。この実験、「失敗じゃねえ?」
もちろん、実験だから燃え落ちるのはかまわない。燃えるデータはそれなりに取れたはずだ。3億円かかったのも、仕方ない。
が、爆発起こすような構造の木造模擬校舎を建てるな。こんなに早く燃えるんなら、とても耐火建築とは言えない。現在の木造建築技術なら、もっと延焼時間を延ばして、ゆうゆう避難する時間を確保できる校舎を建てることはできるはずだ。
まるで、わざと燃えやすく建築したみたいだ。これまで蓄積された木造耐火建築のためのノウハウを無視して建てたんじゃないだろうか。
実は、この実験用模擬校舎は、柱や梁を通常よりも太くして、接合金具も炎にさらされないよう工夫していたそうだ。そして「火事が起きて1時間は倒壊せずに避難時間を確保できる」という。しかし、映像を見る限り、1時間は崩れ落ちなかったというよりは、数分で3階まで火が周り、逃げる余裕も、逃げるルートも奪ったように感じる。
実験者は、コメントで平静を装っていたが、私にはショックを隠しているように見えたぜ。
実は、学校の校舎を木で建てるための研究と運動は、すでにいろいろと行われている。とくに東洋大学が主体となった「「木の学校づくりネットワーク」は、幅広く行い事例も重ねているのだ。
http://wass.toyo.ac.jp/content/index.html
今回の実験が、こうした活動の足を引っ張らないことを願う。
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失敗に見えるよね、だれが設計したんだ!!
もっと燃えにくい建築方法があるはずだよ。。。
投稿: 桃介橋 | 2012/02/22 23:26
皆さん、思いは同じようで(~_~;)。
あの映像、だれが見ても大火事だよ。生徒は逃げ出せず惨事になる。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/23 01:23
実写というのはインパクトがあり過ぎです。今後、内装に木材、特に杉のムク板を使う事まで風評が進むと怖いですね・・・。
投稿: 建具屋・都築@三河湾岸です | 2012/02/23 06:17
自分は、小学校中学校と二階建て本格木造校舎で勉強しましたが、全国の大部分が木造だったと思います。昭和26年生まれですが。
投稿: 桃介橋 | 2012/02/23 07:09
こんな馬鹿な実験を放送する官僚がいるとは! あきれてモノが言えませんな!
3階建ての木造校舎を立てるように法律改正するのが狙いの実験でしょう。
こんなアホな実験をくり返してから,おもむろに法律改正する官僚は、情けなや。
誰がみても、木造の校舎は危険であると証明する映像ですな。
ちゃんとした建築事務所に相談しないで建築した疑いが濃厚です。
林業の不活性化を狙った仕業としか見えない、大変残念なニュースでした!
林業の活性化を心から期待する翁より
投稿: しゃべり杉爺 | 2012/02/23 09:17
私も小学校低学年は2階建て木造校舎だった記憶がある。
当時は鉄筋コンクリート校舎が憧れだった気もする(~_~;)。
今回は一応実験だから、燃え方のデータは取ったと思います。それを役立てて安全な木造3階建て校舎を考えてほしいですが、それにしても、すでにある木造校舎もこんな燃え方するとしたら、怖いよ。
鉄筋コンクリートでもいいから、内装にたっぷり木を使ってほしい。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/23 09:42
同感です。。「風と共に去りぬ」の火事の場面を思い出しました。普段木造に関心を持たない一般マスコミがわざわざ来てくれたのにあれを見せるって、関係者にとっても「想定外」以外ありえない。いくら燃え草を入れていたからってあそこまで燃えるかなー。
”風と共に木造は去りぬ”、”木造の熱に水をかけた”、”木は温もりでなくて熱かった”・・・こんな見出しが新聞に載らなかっただけ良かったです。規制強化のための実験になってしまいました。構造が一時間壊れなければいいということの意味も問われるし、内装の木質化に影響がなければよいです。
投稿: アツシ | 2012/02/23 09:58
「風と共に木造は去りぬ」……(~_~;)。
いや、笑い事ではないんですが。
ちょっと燃えるのが早すぎますね。東京の木材会館ビルもそうだけど、各階に延焼するのを抑える仕組みは、すでに開発されているはずですが。また最初の爆発の正体もまだ発表されていないけど、何が爆源なのか。
まずは内装の木質化から取り組んでほしいなあ。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/23 10:40
さっきは冗談を書いてしまいましたが、だんだん腹が立って来ました。こんなものを見つけました。<http://www.adic.waseda.ac.jp/column/hasemi/201110h.pdf>
これを読むと火事の恐ろしさを木材関係者に再認識させようとの確信犯かと疑いたくもなってしまいますが、さすがにそれはないでしょうね。
なお、試験体は接合部に隙間があったりと案外施工がいい加減だったと聞いてます。
投稿: アツシ | 2012/02/23 10:49
追伸、さっき書いたこんなもののリンクが落ちてしまいました。
http://www.adic.waseda.ac.jp/column/hasemi/201110h.pdf
投稿: アツシ | 2012/02/23 10:52
実験当事者の手記とは、よく見つけましたね。
あんまり木造に信頼を置いている研究者じゃないみたいだなあ。
国の金で、しかもすぐ燃やすとわかっていては、施工も力が入らず手抜きだった可能性はありますね。これこそ税金の無駄遣いだ。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/23 21:37
この実験もさることながら、
我々地方行政も、業界も林家も
スギヒノキを使うことは地域の資源の活用や国土の保全などに役にたつという話をしている一方で、
ちゃんと2次製品や最終商品を提供しようとしているでしょうか。
田中さんは以前よりそれを話していましたよね。山側もプレゼン努力が足りないという主旨。
林業側、地方行政がどこまで絡めるかどうか悩ましい部分はありますが、木を使って山が気が循環していくことが国全体の環境に役に立つ1つの要因となるとするならば、山側や地方行政、業界は声を上げることに加えて、使える最終製品、商品を提供していくコトをもっとやるべきで、しかももう少し急ぐべきだと私は思います。
このニュースとみて、各地で、木材企業もいろいろな取り組みで努力が始まっているわけですが、公共系ばかりでなく、人はさまざまに社会とのかかわりを持っているわkですから、広く知っていただき、理解をしていただくようなことを実行していかなければならないと強く思いました。
投稿: 鈴木浩之 | 2012/02/24 09:37
ちょっとフォローを。長谷見先生は木造建築に対して厳しい建築学会の中にあって、木の応援をされている数少ない方で「火事場のサイエンス―木造は本当に火事に弱いか」という著書があります。
今回の実験は3階建て校舎の火の周り方等のデータをとるのが目的ですから材料についても構造についても本格的な耐火設計はされていません。いわば来年のためのコントロール実験です。予想以上に初期の火のまわりが早く、爆発状態になったのは着火条件が激しすぎたからとか。職員室にある机や書類等の可燃物の代わりに置いたキャンプファイア状のスギ板やエタノールが多すぎたそうです。
http://kitokito.at.webry.info/201202/ahttp://kitokito.at.webry.info/201202/article_26.html
それにしても火の勢いの激しさは関係者の想定以上だったようですし、一般の人がやっぱり木はダメだと思ってもしょうがないでしょう。
来年の実験でいい結果が出ればいいのすが。
投稿: Ken | 2012/02/25 04:13
URL訂正
http://kitokito.at.webry.info/201202/article_26.html
投稿: Ken | 2012/02/25 08:14
そうでしたか。
しかし、スギ板積んだり、エタノール置くのはやりすぎでしょう(^^;)。
だいたい3億円かけて建てたのなら、本当に家具類(おそらく金属製が主流だろうけど)や書類を置けばいいのに。
投稿: 田中淳夫 | 2012/02/25 13:07
ひさしぶりにコメントを書かせていただきます。
Kenさんが書かれたとおりの実験だったようですね。延焼の経過を見ること、細かくは空気の流れなどを見るのが目的だったようですから、ほとんど防火はしてなかったようですね。私は多少火は強かったでしょうけど、まず、どう燃えるか示さなければ防火・耐火設計はできませんから、今回の実験は非常に有意義だったし、成功なんだと思います。
多少ネガティブな印象があったかもしれませんけど、来年の実験に向けてインパクトだけはしっかりあったのもよかったように思いますが、どうでしょうね? 来年に向けて、このデータが活かされてよい結果を導き、よりよい木造建築の設計マニュアルに活用されることを期待します。
投稿: あさだです。 | 2012/03/02 19:12
もちろん、今回は耐火の実験ではなく、火の廻り方を確認する実験だったようですが、2分で爆発炎上するのでは、本当の延焼経過になったかなあ。
それに記事によると、一応の耐火仕様だったようです。梁の太さとか、金具の使い方など。
それにしても、悪いインパクトはあったような……。
投稿: 田中淳夫 | 2012/03/02 23:25
実際失敗でしたよ。データは取れましたが。
建築学科でもちょくちょく話題になってました。
ここまで燃えるはずじゃぁなかったんです。
小学校の教材なんかにはぴったりだと思いましたが。
建築防火の授業でも初回に火事の恐ろしさという文脈で流してましたし。
この後二回実験して、2回目は逆にほとんど燃えず、3回目はそれなりにいい結果が取れてます。
結局、もったいないですけど実物実験は不可欠なんですよ。
別にそれで設計に必要なデータが取れる訳じゃないですが、一定の安全が担保できる。
それでも実際に火事が起きればいろんな想定外が見えてきて、マスコミが批判するんでしょうけどね。
かといってこんな実験はせいぜい3棟が限度でしょう。
投稿: osakana | 2016/11/08 07:32
古い記事ですが、その後2回実験をしましたか。3度目に真っ当な結果が出たのなら幸いです。
しかし世間への広報効果は……マズかったかもしれませんなあ。
投稿: 田中淳夫 | 2016/11/08 23:28