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森と林業の本

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2012/03/21

「限界集落株式会社」書評 ~現場と理念

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限界集落株式会社  黒野伸一著 小学館

を読む。話題作だから知っている人も多いだろう。私も、読もう読もうと思いつつ、後回しになっていた。が、読み始めると、ぐいぐい読んでしまう面白さ。軽いタッチながら、結構描かれる田舎の姿が本当ぽい。

一応、紹介lしておくと、ルポではなく小説。帯には「地域活性エンタテイメント!」とある。

冒頭、主人公の優が亡くなったおじいさんの故郷、今は限界集落化した田舎にBMW乗って帰ってくる。もともと銀行で再建屋としてならし、さらにIT企業でバリバリやってきた男だ。退職して、次の事業を始める前の骨休め的気分で、小学生以来の田舎に帰って来たのである。

そこで田舎の現状と人に出会い、それなりに辟易するのだが、ふとした近所の小学生との会話から、この村の立て直しに挑む・・・・・となると、つい想像するのは、都会のエリートが意気込めば意気込むほど頑迷な田舎に振り回されて……というストーリーだが、見事に期待?は裏切られる。

産業振興どころか集落を潰して撤退させたがっている役場の産業振興課とやりあって、図抜けた企画力と人心掌握力でリーダーシップを発揮し、大車輪で集落営農に取り組む。主な仲間は、農業研修に来た訳ありの3人と、地元の農家の父娘。

この20代の娘・美穂こそ、もっとも農業に熱心というキャスティングもいいし、野菜漫画によるブランド化を進めて秋葉原にウケルなど、今風のアイデアも展開される。

物語は限界集落をブルドーザーでならすがごとく進み、どんどん事業は大きくなっていく。人が変わり、地域が変わる。それは痛快でカタルシスさえ感じる。そして訪れた最大の危機に優は、そして村人はどう対応するか……と、最後は涙ぐむエンディング(~_~;)。

ただ小説のストーリーから離れて私が考えさせられたのは、現場と理念(経営)のぶつかり合いだ。

優と美穂は、二人代表体制なのだが、ことごとくぶつかる。それを示すのが、優の
お前は現場至上主義者で、おれは新自由主義を信奉する典型的アメリカ型経営者だ。お前は生産を重視するが、おれは収益を第一と考える
という言葉だ。

実際、優は農作業をしない。してはいけない、と思っている。現場を知ると、しがらみや思い入れができて経営判断を誤るというのだ。
私も、現場至上主義は嫌いだから、この言い分にはニヤリとした(笑)。現場にこだわればこだわるほど大局が見えず、改革を拒む。理屈より目に見えない情念や手業にこだわってしまう。そしてじり貧なのに、後ろ向き。

とはいえ、反対もマズい。現場を見ようとしない理論(経営・施策)も埒があかない。

各地の林業地を訪れて耳にするのは、中央の現場の知らないままの机上の論理である。(もちろん、林野庁のこと。)あきれるほど知らない。いや、全国の現場を回っています、という人もいるのだけど、でも知らない(笑)。だって、視察なんかで、本当の現場なんかは見せないもの。視察団の喜ぶところだけ見せる。

そもそも現場を知ったら政策がつくれないかと思っているんじゃないか。いや、知っても知らないふりをしているんだな、きっと。だって、現場は例外だらけで画一化できず、それに目配りすると全国の林業地に向けた理念(政策)にならなくなってしまうから。そのため現場を訪れても、わざと目をつぶっている(笑)。
現場が、「同じ予算でもっとよい方法がある」と提案しても、たいてい握りつぶされるそうだ。だって変更するのが億劫だから。ほかの地域と違うことをしたくないから。

というわけで、現場と理念の対立は根深いのである。

では、どうすりゃ現場と理念が融合できるのか。それは本書でも読んで、各人が考えていただくしかないだろう。優がどのように変わったか。美穂が何を考えたか。

ちなみに、私も立場的には理念の側に立っている。ただ、現場も回る。見る。体験する。(余談だが、かつて朝4時から車を走らせて吉野の山の中に通い続けて現場作業に参加させていただいたことで、今も取材対象の林業者が心を許してくれる面はある。)

だが、常に頭の中では突き放しているのですよ。現場がいいということは、悪いということは本当か。それは単なる慣習にすぎないのではないか。思い込みじゃないのか。思考停止していないか。世間の流行や風潮に騙されていないか。「昔の智恵」なんて、間違いだらけだと思っておかないと。

同時に、机上の理念なんてのも現場で起きていることからすると、薄っぺらな念仏にすぎない。正義とか公正とか平等とか協調・共生……そんなもんと関係なく、別のベクトルで動いとるのだよ。理不尽さがいっぱいなのが現場なのだ。あまりシロクロ付けずに、まずは現場をうまく動かすことを考えた方がよい。

小説の中で、優はいう。農業なんて「典型的な不採算部門」で、経営立て直しのためには最初にぶった切る部分なのに、「復興に乗り出してるなんて、自己矛盾」だと。矛盾を感じても、取り組んじゃったのだ。

まあ、林業も、山村も、いや国家だって、そんな矛盾を抱えて動いているのかねえ。

……なんだか、最後はぼやきになってしまったぜ。

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コメント

う~む。
大きく唸らせていただきましたぜ。(^^)

熊の唸り声は……と(笑)。ちょびっと怖い。熊鈴鳴らしとこ。

現場と理念という二項対立ではなく、弁証法的解決法でハッピーエンドならば・・・ちょっと、読んでみたいかも・・・

ちょっとずれてるけど「種をまく旅人」はいい映画でした。
れいなちゃんがかわいい。
振興局農林水産課がでてきて身近に感じるし・・
林業にも当てはまる点が多いです。

最近、ブログのコメントがツイッターやフェイスブックに付くことが多くなってきた……なかで、貴重なコメントです(~_~;)。

でも、「種をまく旅人」という映画は知らないんだよなあ。

作者名が違います。

失礼しました。直しました。

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