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森と林業の本

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2012/03/23

クマ剥ぎ文化~朝日新聞

昨日の読売に対する記事と対抗させるつもりはないが、21日の朝日新聞夕刊に、クマ剥ぎに関する記事が載っている。

母子熊が人工林の樹皮を次々剥いでいく映像が撮れたのだという(群馬県桐生市。約15分間)。しかも2頭が2日で430本もの木の皮を剥いだというから、凄まじい。
これ、撮影中に追い払えなかったのかね…と、林業家の気持ちになって思う。映像に研究的価値はあるけど、辛いよなあ。

クマがスギやヒノキの樹皮を剥ぐ行動は、昔から問題になっていたが、なぜかははっきりわからない。ただ、この時期に甘い樹液があるのは事実だ。本記事では、「夏の稔りの前の餌不足の時期に利用する」としているが、はたしてどうだろうか。ちょっと疑問。

人工林だって辺縁部には雑木雑草が生えており、餌はそれなりにあると思うのだけど。むしろクマの嗜好品になっているのではないだろうか。ポテトチップみたいに、止められない止まらない、状態で齧るのかも(~_~;)。

ともあれ林業被害は2010年度で1167ヘクタールとされ、20年前の6倍だという。そして、DNA解析から母子熊が樹皮食文化を伝播させているのではないか、というクマ剥ぎ文化説も登場する。

クマも、食べるものは親から教わるのか? クマ社会の智恵も学習で引き継いでいくという仮説は、科学的には非常にそそられるテーマだけど、林業的にはあんまり役立ちそうにない。

禁煙が難しいように、一度覚えた味を止めさせるのは至難の業だ。いっそのこと餌付けして、樹皮が食べられることを教えないようにするとか、樹皮にハバネロやコールタール塗って無理やり食わせて、不味いと学習させるとか(~_~;)。

ただクマ剥ぎの増加は、単純にクマの数が増えたためだと私は思うけど。

ところで先日の奈良であった講演では、長野県職の久保田淳さんがドイツやアメリカの事例を紹介してくださったことを記したが、実は彼の現在の役職は鳥獣関係である。あれほど熱心に海外まで視察に行って、木材振興に取り組んできたのに、昨年春に転属させられてしまったのだそう。
人材を大切にしない公務員の世界(~_~;)と思わぬでもないが、それでも新たな部署でも熱心に取り組まれているようだった。

そしてシカやクマの害についても説明し、映像も見せてくれた(主にシカ)。そこには、電気柵をものともしないシカや、あっさり柵を飛び越えるシカが映っていて、一筋縄ではいかない動物と獣害を見せつけていた。

私は、思わず「クマは増えているのか減っているのか」と質問したのだが、答としては「わからない」だった。増えているらしい証拠もあるのだが、減っていそうな地域もあるからだ。

しかし、冒頭の母子熊のように、たった2頭でも、これだけの被害を出すのだから、頭数管理だけでは解決しない問題だなあ。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

いつか忘れましたが、数年前に高名なツキノワグマのある研究者に「一体、日本には何頭ツキノワグマがいるんですか?」と尋ねましたら、「分からない」という返事でした。
要するに、我が国の動物生態学がいかに遅れているかということです。第一に研究者が少ないことがありますが、キチンとした生息数を各地域ごとに調査していないのですから、なにおかいわんやです。
どのくらい生息しているかも把握していないで、やれ熊が出た殺せとか、熊がかわいそうだとか騒いでいるのが現状です。
ヨーロッパの野生動物の管理(Animal control)のように、まずは野生動物の生息数調査をキチンとしてから、その生態系にどの程度の野生動物(シカ、クマ、サル等)は適正かを科学的に判断する必要があります。
そうしないと、情緒的な行き当たりばったりの判断で、絶滅危惧種に指定されている日本のツキノワグマを絶滅に向かわせているかも知れません。

我が国の生態学者が社会的な関心を持ち、科学的な対処をすることを強く期待します。

炭焼き爺さんより

お母さん、こんなに剥けたよ。
わあ。きれいに剥けたねえ。
気持ちいいねえ。。

という具合に、
剥くのが単純に快感なのかも。(^^;

実は熊(♀)さんが、小熊にけしかけて喜んでいる姿を想像してしまっていた(~_~;)「よし、皮むき競争しましょう」とか言って。

ともあれ、クマの生息数さえはっきりしないのは困ったものです。狭い国土に見えて、なかなか把握できないのだなあ。
私も、10年以上前に取材したときは、「増える要素がないから少なくなっているはず」でしたが、最近は「増えているかもしれない」ぐらいに変わってきました。

この発表会を聞きに行っていました。

とても追い払える状況じゃなかったみたいです。逆に気づかれそうになっ退散してきたようです。

この地域は他にもクマ剥ぎをするクマがいて、ヘアートラップや剥がされた場所から採取された毛から、100平方キロに28頭いて、そのうち10数頭(細かい数字は忘れました)がクマ剥ぎ文化を持っていたそうです。

なお、皮剥ぎをする時間は短時間で、齧ったり、こそげたり、樹液を舐める時間の方が長いとの説明もありました。

さらに、この地域はシカの密度も高く林床や周辺林地にもシカが好まない植物ばかりが残され、クマにとっても餌の少ない地域となっているということも言っていました。

これはクマからの私達人間様への警告かもしれませんね。
「おまえら、自分勝手に自然の生態系を破壊して杉ばかり植えやがって、ただじゃすまねんぞ!思いっきり嫌がらせしてやるからな!」
森の獣達で同盟を結んでやってやろうじゃないか!ざまあみろ、ってんだ!

とか、言ってましたよ。
田中さん。
熊(♀)さんは、子どもに復習の仕方を教えていますね。子どもは何も知らないから、喜んで皮をむいてますね(笑)

炭焼き爺さんは考えた!

昔、年末の大掃除の時に
障子を剥がすのが(穴を開けてから)面白くて面白くて・・・。

娘もやりますね。
チョー面白いらしい。

ちなみに、貼ったばかりの障子をはがしてしまって怒られるのも同じ。

教えたはずはないのだけれど・・・(泣)。

クマが木の皮を剥ぐのは始めてしりました。
剥がされた木はたまりませんね。若木ばかり狙ってくれたら「皮むき間伐」になりますか?まるでどこかの協会ですね・・・。
22日付の朝日の地方(愛知)版に「害獣の出没数 大幅に減」って記事がありました。
http://mytown.asahi.com/aichi/news.php?k_id=24000001203220002
WEB版では表が無いんですが、紙面にはあります。
https://picasaweb.google.com/101861882641378943670/DropBox?authkey=Gv1sRgCNXNkve_rf6XmAE#5723311145741738722
もっともこれは見かけた数なので増えたのか減ってるのかは判りません・・・。
農作物などの被害額もわかりません、もう少し突っ込んで欲しかったです。

そうか、目の前に皮剥してるクマがいても、怖くて追い払えないですね。
さらにシカと餌の取り合いをしているとなると……獣に同盟組ませるんじゃなくて、争ってくれたからいいんですけどね。少なくても片方の害はなくなる(^^;)。

愛知県は獣害が減っているというのも、何か要因あるのかな。皮剥よりも面白い障子剥がし! に目覚めたとか(^0^*。


それはともかく、しゃべり杉爺さんは、ドクトル先生だったんだ!

学生時代にサークルでツキノワグマの生態調査(もどき)をしていました。
クマハギは関西での被害のほうが、関東よりも多いとされていましたが、今はどうなんでしょうか。当時は、アルファピネンをツキノワグマが好むから、という熊のシンナー遊び説が主流でした。クマハギされたばかりの杉の幹には、前歯で削り取った筋が幾本も走っていて、ツキノワグマがどんな格好で杉の幹を舐めていたのか、想像していました。

私も、学生時代に「ツキノワグマの冬眠穴調査(もどき)」をしたなあ。 ただしアルバイトだった(笑)。

クマのシンナー遊び説! 私のポテトチップ説より斬新だ! 
いっそ、クマのアロマ中毒説とかは。日頃のストレスをスギのアロマで癒してる。

先日宮崎学さん(自然界の報道写真家の方で、突破者ではない方です)の講演を聞きましたが、ツキノワグマの生息数はかなり多いようですね。私は幸いツキノワグマに関係ない九州にいますが、本州のクマ生息地での山仕事はちょっと怖いです。

宮崎さんは、道路の凍結防止剤の塩化カルシウムが動物のサプリになっているとおっしゃっていました。猿や鹿では証拠写真もありました。サプリで栄養を補給し、アロマでストレスを解消し、ますます数が増えるかもしれません。

塩化カルシウムがサプリ! またまた驚愕の真実ですね。

野生動物の生態は、まだまだ奥深い。

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