ロシアがWTOに加盟するということ
ロシアの大統領選挙では、プーチンが再選した。
ま、これは想定通りであるが、そこで思い出したのはロシアのWTO(世界貿易機構)加盟である。たしか昨年末に決定したはずだ。
ロシアがWTOに加盟したら、何が起こるか。
林業関係では、木材の輸出関税が引き下げられるのだ。日本から見れば、ロシア材の価格が安くなることを意味する。
シベリア丸太の輸出関税は、2007年に6,55%から20%に上げられ、さらに2008年に25%になっていた。そして2009年には80%に引き上げることを予告していた。これは、事実上の輸出禁止だろう。ロシアからは加工品しか輸出しなくなると思われた。それがリーマン・ショックの影響で延期され、2011年にも再延期されている。
しかし25%でも高い。それに、いつ上げられるのかわからない不透明さが嫌われた。そこでロシア材に頼っていた業界(製紙チップや合板、下地材など)は、それを機に国産材への転換を進めてきたのである。
ところが、WTOに加盟したら、勝手な関税はかけられなくなる。すでに加盟交渉で、現在の木材輸出関税の撤廃を約束している。今後、どこまで下げるか未定のようだが、おそらく半減するだろう。
加えて、円高。今は少し円安に触れたりもしているが、1ドル80円前後というのは、数年前に比べて相当安い。
これまで国産材へ傾斜していた業界は、再びロシア材に目を向ける可能性が高まっている。一度国産材仕様に製材機を変更した工場は、おいそれと元にもどせないかもしれないが、それでも価格差が長引けば、踏み切るかもしれない。
以前訪れた富山のロシア材業者は、国産材には転換しない、と断言していた。国産材よりロシア材の方が可能性が高いと見ていたし、何より国に保護されまくっている国産材業界をバカにしていた。おそらく、今や虎視眈々とロシア材の関税動向をにらんでいるだろう。
もちろん、円高ユーロ安は、ヨーロッパ材も輸入しやすくなる。今はホワイトウッドの価格が暴落しているらしい。すると製材所よりもハウスメーカーが外材に寝返るかもしれない。
一度国産材の調達ルートをつくった会社は、義理も契約もあるから、すぐに国産材を切らないと思うが、値下げ要求をしてくる可能性はある。となると、いよいよ日本の山は利益が出なくなる。いや、山主が山から木を出さなくなるかもしれない。
そうなると、またもや外材の時代が来る。私も、国産材の時代という言葉にうさん臭さを感じていた(まだ国産材は地力を身につけていない)が、間に合わなかったかもなあ。
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ロシア材(アカ松)や欧州材(ホワイトウッド・レッドウッド)競合するのが、杉。
現在、桧丸太も杉とほとんど変わらない価格ですが。
ロシア材が関税ゼロで輸入されると 杉の羽柄材や集成材がロシア材や欧州材に変わってしまう。
大手ハウスメーカーは、徐々にシフトし、内地材製材にシフトした製材所も、最低限の内地材仕入れに留まってしまうでしょう。
ただ ロシア材製品は増加するが 丸太はどうか?
国内で製材するより 現地で製品にした方がコスト安。
後は 為替と原油高で 外材メーカーが どう動くか。
>山主が山から木を出さなくなるかもしれない。
山主が山から木を出せなくなる。
立米単価が 重量(トン)単価に変わるのが現実味を帯びてきそうで...
投稿: 1150 | 2012/03/06 22:51
いきなり関税ゼロにはならないでしょうが、かなり引き下げられるでしょうね。なお、これは原木輸出の場合で、加工品はまた別の関税が撤廃か引き下げになるはずです。
幸か不幸か、加工品のレベルは高くない。そちらはヨーロッパ材が強いので、ロシアは素材で来るのでは?結局、ロシアは石油や木材といった素材輸出で成り立っている経済ですから。。
いっそ、中国がたくさんロシア材を購入したら、日本に回ってこなくなるかも(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2012/03/06 23:48