無料ブログはココログ

森と林業の本

« 飛騨川の流路 | トップページ | 「バイオマス本当の話」書評 »

2012/03/01

立派すぎる? 復元金沢城

先に訪れた金沢では、しばし時間を割いて、金沢城公園を歩いた。兼六園はパスである。

軽く散歩して終わるつもりが、結構広い(^o^)。

そのうえ、各所の門や櫓などの復元が進んでいて、見どころも多いのである。金沢城は、古くは火事で焼け、その後の取り壊しにもあって、ほとんど原型を留めていなかった。それを近年復元しているらしい。

で、それら復元建築物であるが……当然、伝統的な木構法で行われている。また、そこに使われている木材の立派なこと。
3





河北門。門は、みんなケヤキづくりだ!


  

13


これは、菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓という長~い名前(というより別々の建物なのだが、合体している)の内部。ここは五十間長屋部分か。

なかなか見事でしょう。使われている木材は、ケヤキが多く、梁はマツ、それに能登ヒバ(アテ)、そしてスギなど。ヒノキもあったかな。

しかし、ちょっと美しすぎる(~_~;)。この五十間長屋は、基本的に倉庫なのだ。ここに食料や武器弾薬を貯蔵していたとある。そんな倉庫が、こんなに美しくていいのか。床なんか、ピカピカだぞ。

あんまり美化しすぎているように思えた。

そもそも、江戸初期に建てられ、その後修復や再築は江戸時代に行われているが、この時期、そんなに木材が豊富ではなかった。もっと、材は細く、品質も選べなかっただろう。

展示には、本来六寸角の材であったところ、建築基準法の関係で八寸角を使いました、という記述があったが、単に太いだけではないはずだ。造作が美しすぎるのである。

伝統的建造物の復元には、いろいろ条件がつき、現代構法は厳しく制限されて、できる限り当時のものと同じにしなければならない。が、いくら伝統的木構法を採用しても、むしろ美化する方向にゆがんでいるように思える。

こんな復元を見たら、当時の城の姿を誤解させるだろう。

そりゃ、コンクリート製の城よりマシだけと(笑)。


 

せっかくだから、今回の旅で見た、美しい伝統的建造物。町家は除く。

3_5


金沢城に隣接した尾山神社の東神門。

実は、これこそ初期金沢城の門だったらしい。大火に焼けずに残ったものを移築したのだ。

素晴らしい龍の彫刻が施されてある。



    

2

      






これは高山市にある、飛騨国分寺の三重の塔

室町時代の作とされる。

         

                                      




ついでに、別の意味で注目なのは。

6_2


金沢駅前の鼓門

これは、大規模集成材で作られた現代の木造建築物である。これは復元でないだけに、大胆なデザインで好感を持てる。

« 飛騨川の流路 | トップページ | 「バイオマス本当の話」書評 »

木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

熊本城ご一緒したときもそうでしたが、
材を見てすぐに樹種がわかるのが、
さすがだなあ・・・・と思いました。
他の見学者と明らかに見る場所が違うのが、
興味深かったです。

世界遺産の姫路城は、
修復が終わったらどんなになるのでしょうか・・。
「復元城の木材種専門家」(?)の田中さんのレポート、
楽しみにしています。

昨年金沢に用事があって行った時には「日本初の避雷針を見に行く」という超マニアックな目的があったのですが,駅前の集成材巨大柱にも度肝を抜かれましたね.

ただ,繁華街と駅がそう近くないのと,街全体が木づくりで押し通しているわけではないので,ちょっと駅の造作が「浮いて」いる感じはしました.

そりゃ、かいかぶりすぎ(^^ゞ。
実は、説明板に使用した樹種は書かれていて、それを念頭に「この柱は●○だ」「こちらは▲△」と見ているだけです。
その点では、林業・木材関係者の城見学もマニアックで、歴史より材質に気がいってしまう。

鼓門は、門柱より鉄骨・アクリルの透明な屋根と合体している点に注目したんですが。

田中さんの切り口、何時も楽しみです。
以前に「あいちの木で家をつくる会」で名古屋城の西北隅櫓を見学会を催したことがあります。
自分は建具屋なんで構造に関してはチンプンカンプンでしたが、使われてる材が古材(清洲城のもありました)だらけだったのに「ほぅほぅ・・・」と関心しました。
こうなると復元される予定の「名古屋城本丸御殿」も復元された暁に、そういうバイアスの掛かった目で見てしまいそうです。消失してしまったので、どんな材だったかも?ですしね・・・

バイアスはかけるべきですよ(~_~;)。
当時と同じ建築物なら、もっと雑木(広葉樹材)も使うべきだし、木目や節もこだわるべきではないでしょう。

もっとも、こうした復元建築物が、かろうじて今の日本では高級材の需要となり、伝統構法の継承に役立っているのは事実でしょう。

「名古屋城本丸御殿」の用材は、確かに高級材で高価格で納品に苦労していると思われます、当時の木曽御料林には鬱蒼と繫る山々がありました。
 実際、現在の木曽国有林には優良材は微々たる数量しかありません、20年に一度建て替え伝統構法の継承が行われる伊勢神宮の用材確保も難しくなっているのが現実です。将来を見据えた見識が問われます。

結局、歴史的復元よりは、観光施策が優先されるのでしょうね。それと、見栄か。

名古屋城の復元も、それなりに意義はあるのでしょうが、山を荒らしては本末転倒だろうなあ。それと財政を悪化させないように。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 立派すぎる? 復元金沢城:

« 飛騨川の流路 | トップページ | 「バイオマス本当の話」書評 »

September 2024
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

森と筆者の関連リンク先