林野庁が、2011年の木材輸入実績を公表している。
木材輸入額は前年比9%増の9997億円(前年比109%)だそうだ。超円高に加えて、震災で国内の供給力が衰えたことも影響しているだろう。
輸入先の第1位は、中国である。前年比14%増の1495億円で、木材輸入総額の15%を占めるそうだ。
中国といえば、経済発展により内需が増えて爆発的な木材需要に対応するため木材の輸入を進めている……と説明されてきた。しかし実は、輸入した木材を加工して輸出している面が大きいのだ。国内需要だけではないわけである。そして海外に売れるのは、単に安さだけでなく、商品に魅力があるのだろう。
経済発展して木材需要が増えたというより、木材加工業を育てて経済発展に寄与したというべきかもしれない。なんか、日本と逆ケースみたい。日本は原材料輸入から製品輸入に変えるうちに経済力を失ってきたように見える。
本当は、素材の生産に次いで、製品生産を外国勢に明け渡してしまった。代わりにソフトの生産(たとえば新たな加工技術とかデザイン、利用法など消費者の欲しがる魅力)を育てればよかったのだが、こちらも遅れたまま。いや、こちらも外国勢に任せてしまった感がある。
……というようなことを考えていたら、吉野林業の歩みと似ていると思ってしまった。
吉野は、当初は木材蓄積が自慢だった。江戸、明治、そして戦争直後と、日本国中の山が荒れて、木材生産力が衰えているとき、乱伐せずにきっちり蓄積を維持して、供給力を保っていることを強みにしていた。
そこから木材加工技術を育て、さらに商品開発力を持った。細い木も太い木も、端材も、みな活かしてきた。構造材、内装材など大小の建築材だけでなく、大径木は樽丸に、端材商品に至るまで、常に新商品を生み出し、時代に適合してきた。
ところが、戦後の木材バブルに溺れるうちに、商品開発を忘れてしまう。原木で売る方が楽で儲かり、手間のかかる加工や商品開発は外材を扱う業者に任してしまう。それどころか、原木まで外部で仕入れるようになった。ほかの産地の木を吉野に運び込んで吉野ブランド付けて出荷するのだ。
だが気がつくと、樽や桶が衰退し、建築足場丸太も金属パイプに取って代わり、役物も売れなくなる。代わって洋風建築部材が求められ、集成材の方が人気となった。すると吉野材も吉野ブランドも必要なくなってしまった……。
今や吉野だけでなく、日本全体が、素材づくりも、製品づくりも、商品づくりさえも明け渡したのだ。
ちょっと連想がすぎて話が貿易から離れてしまったが、日本が中国から輸入する主な品目は、合板、集成材などボード類のほか、やはり割り箸が入っている。
しかし、面白いことに気づいた。以下は、林野庁のサイトからの引用だが、
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2-1.丸太【輸入量464万m3(前年比98%)、輸入額885億円(前年比101%)】
主な輸入先は米国及びカナダで、両国で総輸入量の66%(米国36%、カナダ30%)を占めました。
2-2.製材【輸入量684万m3(前年比107%)、輸入額2,170億円(前年比108%)】
主な輸入先はカナダ及び欧州で、両国・地域で総輸入量の70%(カナダ34%、欧州36%)を占めました。
3.合板【輸入量310万m3(前年比117%)、輸入額1,593億円(128%)】
主な輸入先はマレーシア及びインドネシアで、両国で総輸入量の81%(マレーシア48%、インドネシア32%)を占めました。
4.木材チップ【輸入量1,179万トン(前年比97%)、輸入額2,120億円(97%)】
主な輸入先はオーストラリア及びチリで、両国で総輸入量の49%(オーストラリア27%、チリ22%)を占めました。
5.集成材【輸入量82万m3(前年比118%)、輸入額414億円(123%)】
主な輸入先はオーストリア及びフィンランドで、両国で総輸入量の51%(オーストリア27%、フィンランド24%)を占めました。また、輸入量の8割が構造用集成材でした。
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どの項目にも、中国が登場しない(^^;)。「主な輸入先は」カナダ及び米国、欧州、そしてマレーシアやインドネシア……ほかチリ、オーストリア、フィンランドなどの国名が出てくるばかり。どこで中国からの輸入増になったんだよ。割り箸か(笑)。
品目を調べたが、どこに載っているのか発見できなかった。
まあ、傑出したものはなくて幅広く何でも……ということなのだろう。
この幅広さが怖い。特化するのではなく、あらゆる分野に手を出せる業界は、新しいものを生み出しやすい。もしかすると、ソフトの生産も中国に先んじられるかもなあ。
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