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森と林業と動物の本

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2012年4月

2012/04/30

速報・農水省の食堂で割り箸が……

連休でアクセスも落ちているのだから、ブログ更新しなくてもいいじゃないか、という悪魔のささやき……別に悪魔でなくてもよくて、あ、熊の笹焼きでもなくて、極めて真っ当なささやきである(笑)。

だから、休もうかと思ったが、たまたま仕入れた情報を。

以前、拙ブログでも盛り上がったが、霞が関の農水省(つまり林野庁の入っているビル)の地下にある食堂では、樹脂箸使っていて、割り箸が使われていないという。国産農水産物を使うことは熱心で、緑の提灯などもかかっているが、肝心の林産物である割り箸は無視されているのだ。

で、この点を指摘したのだが、その後も動きなし。

ところが、ついに割り箸が使われるようになったそうである。3店のうちの寿司屋で、近く割り箸に切り替わるそう。

ま、詳しいことはまだ発表前なので控えるが、決して林野庁が頑張ったわけではないらしい(>_<)。あくまで民間で頑張った人がいたのである。

……速報だから、これくらいにしといたるわ。書きたいことはいっぱいあるが。

連休だしね。

あ、明日は中休み……じゃない、中仕事日か。

私は、別に関係なく、だらだら過ごすぜ。

2012/04/29

登山路の階段

晴れた連休中日。生駒山を歩いた。

今回は、珍しく、大阪側から登り、奈良側へ下った。相変わらず、得意の「遭難」もしたのだが……その話は別として、気になった点を。

生駒山の大阪側は大阪府立公園となっており、遊歩道などが比較的整備されている。また休憩所なども各所にある。ただ生駒山自体は、非常に急峻で、奈良側のゆるやかな登りと違って、結構急なルートも多い。

そこで気になったのが、階段である。

遊歩道に階段を設けた部分が多いのだ。おそらく登りやすくするためと、道が崩れにくくするためだろう。また急傾斜に足掛かりをつくっているつもりなのだろう。
ただ階段と言っても、完全にコンクリートで固めたようなものは少なく、登り部分に丸太を模したコンクリート?などの横木を渡して、段を作ったものである。

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だいたい、こんな感じ。

が、これが歩きにくいのってなんの。

階段があるために、まともに登れないのだ。おかげで、横に逸れなければならない。だから道の横にはみ出て進む。それでも、疲れは倍増。ろくでもない道になっている。

                                     




                                                          
わかるだろうか?

もっとわかりやすい写真を。


  

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ようするに、階段の横木の下がえぐれて、段差が大きくなってしまうのだ。おそらく50センチ以上になっており、まともに足が上がらない。無理に登ると、疲れるうえ、次々と続くのだ。しかも、横木の間隔がおかしくて、一歩では進めない。

もともとオーバーユース気味の生駒山だが、多くの人が通るのに加えて、雨も多く、土壌は流される。しかし、横木部分だけが残るから、こんな階段とも言えない状態になる。

そもそも山歩きをするのは、自然に触れ合いたいためなのに、こんな道のおかげで歩く方に意識が集中されて、周りを見回す余裕もなくなる。

公園管理者および登山団体などがボランティアで、山道を「通りやすくしようと」階段を設置するらしいのだが、まったくの逆効果だろう。

おそらく、普通に歩く登山客・ハイキング客なら、歩きにくさがわかるはずだ。それなのに、文句言わないのだろうか。

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写真には、階段路の左側に別の道ができている。

階段のある部分は通らず、その周辺に斜面の道をつくったのだ。意識して作ったというより、獣道なみに人が通ることで自然とできた道だろうが、その方がよっぽど通りやすく気持ちいい。

よかれとしたことが、逆効果の例である。




          
  

そういえば、石畳の道も歩きにくいなあ。風情ある道のつもりなんだけど、足裏の感触悪いし、関節を傷めるし、結構デコボコだし。
これも勘違い。風情なんかないよ。もともと古道が石畳になったのは、上にかぶせた土が流れてしまった荒れた道なんだよ。

ともあれ、現場を歩けば感じることなのに、なぜ声を上げないのだろうか。階段作りたければ、完全にコンクリートで固めるか、間隔も同じにして木製にしてほしい。石畳も撤去だ。いっそアスファルトの道に石畳の絵を描けば?

2012/04/28

岐阜の林業女子の特徴は

先日は、林業女子会@岐阜の面々にお会いした。

岐阜の林業女子メンバーの特徴は、現業が多いことである。県職などのほか、実際に現場に出る作業班に属す人もいる。ほかの地域では、学生が会を主導していることが多いようだが、岐阜では社会人が目立つ。もちろん森林文化アカデミーの学生もいるのだが。

だが、彼女ら林業女子の活動を取材して気づいたもう一つの特徴。

写真を見ていただきたい。地域の人々と椎茸のホダ木づくりをしていた。

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わかるだろうか。この写真が示すものを。

二人の林業女子は、どちらも赤い手袋をしているのだ。

これこそ、林業女子会@岐阜のトレードマークだ!

そう、(私は)色めき立ったのだが……単なる偶然とのことであった……(-_-)。

そ、そんなことはドーデモよく、私が気になったのは、この地域の椎茸の菌は、普段見ているコマではなく、木粉に菌をしみこませたものをドリルで開けた穴に詰め込み、その上を発砲スチロールの蓋をするという方法だった。

やってみると、穴の大きさ・深さに合わせて木粉をバランスよく詰めるのはなかなか難しいものだ。

気がつくと、私はカメラを脇に置き、菌打ちに勤しんでいたのである。

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だから、このホダ木の十数本は、私が打ったものだぜ。

2012/04/27

「平成23年森林・林業白書」の公表

どうやら連休入り。

私はというと、長く抱えていた課題の最後の仕上げを終えて、また固まっていた締切り原稿を何本か同時進行で仕上げ、とりあえず全部クリアした。

だから明日から心置きなく連休入り……と言っても、そもそもフリーランスの私に暦通りの連休などなく、このままずっと休みが続き、気がついたら「これって失業じゃない?」と我に返る……そんな姿を脳裏に浮かべている(~_~;)。

まあ、ルーティンな原稿とか、6月の旅の準備とか、人生を見つめ直すとか、世界平和について悩むとか、ついでに自治会の仕事など結構うんざり系の仕事はあるのだが。ヒマになったら久しぶりに東京に顔でも出すか。スカイツリーという樹も見ておきたいし。これを伐採する方法を考えたりして(⌒ー⌒)。

……で、同じように連休中の予定のない林業な皆さん。

平成23年度森林・林業白書が公表された。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/23hakusyo/index.html

こっちが全文。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/23hakusyo/zenbun.html

概要はこちら。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/23hakusyo/gaiyo.html

時間を持て余したら、これに目を通して時間つぶしをするのはいかがだろうか。

今回は、やはり東日本大震災に大きなページを割いているし、さらに地球温暖化問題も大きく取り上げている。京都議定書の期限が切れたからかな。

でも、盛り上がらなかった国際森林年とか、森林・林業再生プランも登場する。当たり前か。

正直、白書は読んでいてつまらない。でも、網羅的だから、意外と情報量は多い。面白さの伝わらないベタ記事の中に実は注目すべき動きが隠されている。囲み記事なんぞも、結構隠れた情報だ。たとえば林業女子が取り上げられたりしている。
そのほか、さらりと流したところや、図表の数字が意味する裏を読んだり、入試問題の読解のように文章の書き手の気持ちを想像しつつ目を通すと、結構楽しめるかも。

お試しあれ。

2012/04/26

驚愕の自然エネルギー買取価格

自然エネルギーによる発電の買取価格が算定委員会で決まったという。

先日、このブログで未利用木材(林地残材)の価格を決めるのに、要望されたのはキロワット時当たり31,8円だった。あまり高いので、これは、わざと高めに吹っ掛けて、その後の議論の中で反対論も出て、落ち着くところに落ち着く……せいぜい20円くらいかな・・・と睨んでいた。

いや20円だって、十分に高い。これを木材の立米単価に換算すると製材用に搬出している価格に近くなるのではないか。

が、決定した金額を見て仰天した。なんと33,6円である! おい、要望よりも高くなるなるなんて、誰が決めたんだ!!

この金額を立米単価にしたら、いくらになるだろう。単純計算だとゆうゆう2万円を越えるだろう。ただチップにする手間が入ったり土場でなく発電所まで運ぶ経費も含んでいると、若干下がって1万5000円くらいかなあ。でも、素材生産自体の手間は省けるはずだ。どんな乱暴にしても、曲がっていようと傷だらけだろうと、木の太さも選ばず、皆伐すればコストはずっと下げられる。(これは全くの見当である。誰か計算してほしい。)

いずれにしても、現在の山では並材がこの価格を越えることは少ない。つまり、チップにして燃やす方が高く売れるというわけだ。

さあ、どうする? 経営的には、製材や合板用に出荷するなんてバカなことはしない方がいい。全部チップにして発電所に送るべきだ。
とくに国産合板は、B材を安く買いたたけることで成り立っている面があるから、生産業者は合板会社への出荷を撤回するだろう。
さらに製紙用チップも燃料用に回されるだろう。なかには輸入チップを国産材チップに混ぜて増量を図る業者も出るかもしれないなあ。いや、絶対出る(-.-)。

本当は、まったく使い物にならないような荒れた人工林をこれを機に皆伐して、全部一から植林して森を作り直すきっかけにすればよい。しかし放棄林は所有者が不明だったり非協力的だからできてしまうのだから、施業するのは難しいだろう。
むしろ出来のよい人工林から伐ることが増える。その方が簡単でコスト安。大径木だったら生産量も上がる。100年生のチップ!

製材・合板用原木と価格面で逆さやになるのだから、海外から安い製材を輸入して砕いてチップにしてという手もある……なんてよからぬ想像もしてしまった。

が、製材不足、合板不足に陥れば、また外材にもどるか、代替の非木材へと進むだけだろう。つまり木造建築物は衰退する。

ちなみに、未利用木材以外では、一般木材は25,22円、リサイクル木材は13,65円である。また太陽光は42円、風力は57,75円とかなりの値段。これらは電気代に加算されるのである。

しかし、算定委員はまったくマクロ経済を知らないのではないか。単に自然エネルギーを増やすことだけしか頭になく、一国の経済全体に眼を向けていない。そして環境倫理的にも拙劣である。

これらの価格は、まだ完全な決定ではないだろうが、ストップをかけるところは事実上ないのではないか。また価格は毎年改定されるから、勇んで参入しても翌年からどんどん価格が下げられる可能性は残る。木質チップを燃料に使える発電施設も限られているから、いきなり持ち込めない。翌年には半額になったりして。

さあ、どうする? 負債を抱えた森林組合などはチャンスかもしれない。これで一気に借金を返せるよ(⌒ー⌒)。悪魔のささやき・・・

2012/04/25

宿の主人は「緑の雇用」出身者

先に紹介した限界集落のゲストハウス「笑び」。

この経営者は、大阪出身。長良川でカヌーを操ることでこの地域に住み着くことになったそのだそうだ。そして前歴は、いろいろあるようで、東京に住んだり各地を転々としたと言うのだが、話を聞くうちに林業も少しやったという。

なになに? と追求すると、「緑の雇用」に参加していたそうだ。某県の某森林組合で1年働いたのである。そこでは、よい親方につき、いろいろ教わったが、結局将来に不安を感じて1年で終了したという。

私は、その森林組合を聞いて、ちょっと驚いた。だって、最近ニュースになったところだからだ。それも「緑の雇用」出身者の大量解雇である。ようするに、補助金削減の中で経営が苦しくなり、人員削減しようとするのだが、結果的に首を切ったのは地元の人間ではなく、ほとんど緑の雇用で来た人だったわけである。

まあ、こうした説明をすると、どこのことだかわかる人にはわかるのだが(^^;)、緑の雇用の中には、家族も連れて移住した人も少なくない。しかし家も土地もなく、森林組合で働くことが条件で借りた住宅のケースが多い。緑の雇用自体は、2~3年で終了する制度だが、その後も残れると説明されたから都会の家を引き払って移住したのである。それなのに首になったら路頭に迷うわけだ。

この事件のことを私が話すと、笑び経営者は知らなかったらしくショックを受けていた。

そしてその夜、インターネットで検索して調べて、どうやら関連ニュースなども見られたようだ。

翌朝の話によると、写っている人の中には当時の先輩もいたらしい。自分と違って彼は、林業に希望を抱いて、家族とともに移り住み頑張っていたんだけとなあ……と感慨深げ。国や県が後押しして誘致した人々だけに、単なる会社の首切り以上に問題を抱えてしまうのだ。

緑の雇用は、一歩間違えると、極めて危険な代物であることがわかる。

なかには、初めから2、3年後の研修終了後は首を切るつもりで望む森林組合もなくはないのだが、そのため彼らには技術も身につけさせない。補助金目当てだからだ。

しかし、反対だろう。3年後には自立できるように技術を身につけさせるなり、あるいは森林組合以外の仕事を模索させる手助けをしておかないと。

私の聞いた人の中には、緑の雇用終了後にそのまま林業で食っていく人のほかは、町に帰るほか、炭焼きを始めたり、山村で店を開くなど独立した人もいる。住んだ山村から通勤圏の地方都市でサラリーマンになった人もいるらしい。

緑の雇用制度自体は一応終了し、今後どのようにするのか私もよく知らない。形を替えて実施するという声もある。が、雇用側も雇用される側も、将来考えて行動しないと禍根を残す。

全国に緑の雇用経験者がかなりの人数になるはずだ。彼らのその後の足どりは、地域にも影響を与えるのではないだろうか。

2012/04/24

「責任ある素材生産事業体認証制度」

宮崎県のNPO法人ひむか維森の会が、「責任ある素材生産事業体認証制度(CRL認証)を発足させて初の認証団体を9社選んだという。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20120422-OYT8T00111.htm

ついにやったか、という気持ち。
素材生産業者の集まりである ひむか維森の会は、2007年に「伐採搬出ガイドライン」を制定しており、伐採搬出に関する指針を作っていた。それを取材した際に、それを認証制度まで格上げしたいという意向を聞いていた。

昨年夏に訪問した際も、制度について少し話題に上がったが、それが昨年末に発足していたんだな。

その名も「責任ある素材生産事業体認証制度」か。長い(~_~;)。

この制度は、環境に配慮した素材生産活動をおこなう事業体を第三者が審査し、合格したところを認証するもの。素材生産業者を認証するというのは国内初である。


大きな特徴は、現場ごとに内容が違うため、マニュアルに頼らず実務を知っている同業者が現場審査を行うことだろう。
これでは、一見仲間うち審査と思われかねないだけに、ほかの審査メンバー(学識経験者、市民団体など)と緊張関係を保てるようにして、クリアする必要がある。ある種の信頼関係を醸成しておかないといけないだろう。

制度についての詳しいことは、維森の会のHP http://himukaishin.com/rlc/aboutRLC.htmを参照のこと。

ともあれ、今の段階で言えるのは、現場はここまで進んでいる、ということだ。これを宮崎だけに納めておくのは惜しい。各地に認証審査団体を設立されることを期待したい。本当は、森林組合も審査を受けてほしいね。

先日、日本の林業の問題点は「なんでもぶつ切り」だと指摘した。それは森づくりから素材生産、そして製材、最終商品までの流れがぶつ切りで、情報も途切れていたり、業者の目的意識もバラバラ……という川上から川下までの流れの縦割り問題である。

が,もう一つのぶつ切りがある。それが、地域ごとの横のつながりが切れていることだ。林業地は、谷一つ違うと、全然情報が通っていなくて、技術も違っていたりする。当然、九州から東北、北海道まで地域ごとに林業形態が違っており、しかもその事実をお互いが知らない……有り様だ。知らないから、全国画一的な政策で林業を再生できると思い込んでいる関係者もいる(-.-)。

さらに、同じ地域でも、業者間の横のつながりが薄い。隣の業者がどこの山でどんな施業しているかを知らないことが多い。新しい技術や機械を導入したことも知らなかったりする。

この縦のぶつ切りと横のぶつ切りが、日本の林業の致命傷になっている、という意味のことを話した。
言い換えると、日本林業の再生は、業界の縦と横を紡ぐことからスタートする。

その点、宮崎は例外的存在かもしれない。ひむか維森の会には約50社が加入しているそうだが、その間の意思疎通がずば抜けている。宮崎は、この認証制度を通して、さらにつながりを密にするだろう。このことに気づかないほかの地域の林業再生は、夢のまた夢である。

2012/04/23

龍神村の道の駅で割り箸セット!

拙著『割り箸はもったいない?』の直販を初めて、まだ2週間しかたっていないが、もう半分以上は出た。何年かかけて売っていくかと思っていたがけに有り難い。

なかでも、売れ筋は、割り箸セットである。割り箸のオマケに本がついてくる、という史上初の販売方法が注目されたのだろうか。

このセットとなる割り箸は、「3県復興 希望のかけ箸」であることは、すでにサイトで告知したとおり。
http://homepage2.nifty.com/tankenka/waribasihon-hanbai.htm

そこに、新たな割り箸セットが販売されることになった。

和歌山県田辺市龍神村で作られている割り箸とのセットである。
販売されているのは、龍神村森林組合経営の道の駅「龍神ウッディプラザ木族館」 だ。

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届いた売り場の写真。

見ての通り、割り箸の作り方の展示も行い、割り箸の意義を届けようというわけ。

そうそう、セットは左隅ですよ。



それを拡大すると……。

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セットになっている割り箸は、新たに作った大小の親子箸だそうである。みな、スギの天削。かなりの上物だね。

説明もしっかり付けてくれているし、いや、手間のかかることをよくぞしてくださいました。




ゴールデンウィークに南紀に出かける予定のある方は、ぜひ、お立ち寄りを(^○^)。
ちなみに、この道の駅は、かなり木工品の種類や数が多い。

ゆくゆくは、割り箸工場見学ツアーも企画したいとのことである。

ちなみに、5月にはイベントで、また別の割り箸とのセットも売り出される予定。詳細はこれからなのだけど、各地でさまざまな割り箸とセット販売されると面白いな。


2012/04/22

限界集落のゲストハウス

岐阜から帰って来た。

そこで泊まったのが、ゲストハウス「笑び」(わらび)である。

ゲストハウスと聞いて、どんなところを想像するだろうか。
通常は、町の中にあって、宿泊料金は比較的安く、その代わり部屋ではなくベッドで借りる、それも二段ベッドが主流。バストイレは共同。食事はなく、外に食べに出るか、自炊する施設がある……というものだ。長期滞在に向いている。

外国には多いのだが、日本でも沖縄や京都でよく見かける。奈良にも最近はいくつかできており、なかなか楽しそうだ。今風ユースホステルのような感覚。

が、ここで泊まったのは、はっきり言ってほぼ限界集落にある。幹線道路から奥に入り、車でも10分くらい?走る。さらに細い道を分け入って到着するから、最初は案内がないと厳しいかも(笑)。

が、到着するとびっくりする。

見た目は普通の民家なのだが、その玄関が尋常じゃない。

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見事な和風建築である。

この表具の凄さに見ほれた。それに梁や柱の太さ。

そのほか凝った数寄屋造りを随所に見かける。

 



リビングだけは洋式だが、ほかは皆和風。そうそう、トイレは三室もあったのは、ゲストハウス以前からだからすごい。
       

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こちらが玄関の天井。

よくよく見れば、すごい木をつかっているのだ。選んだなあ~と思わせる木目の板だ。

部屋も、床の間があって、そりゃお見事。

ゲストハウスと言っても、その日の泊まり客は私一人だから、この和室を一人で占領しているのだから、下手な安普請の旅館より豪華。

さらに庭もちょっと枯山水? 巨大な池と築地と……(^-^)。

私自身は、そんなに数寄屋づくりが好きなわけではなく、和風建築にこだわりもない。しかし、やはり木にこだわった建物には魅力を感じる。

経営者によると、この家の建主は、70を越えてからこの家をこだわりにこだわって建てたそうだ。自分で木を選び、自分で山から水を引いたり、コツコツ建てたのである。まさに建て道楽。

しかし、完成後すぐに亡くなられて、息子らはすでに町に出ていてもどる当てもないため、借り受けてゲストハウスをオープンしたという。経営者は地元の人ではなく、大阪からの移住者。彼については面白い?話題があるのだが、それは改めてするとして、長良川でカヌーをするためにこの地域に通っているうちに、居ついたらしい。

そしてゲストハウスを開業。最初は自分と同じカヌー客を目論んでいたが、現在はもっと幅広く家族連れやら登山客まで来るそうだ。

限界集落における宿泊業というのは、結構面白いビジネスモデルになるかもしれない。住むには厳しくても、訪ねるには楽しいところはあるものだ。名所旧跡ではなく、川とか山が魅力になる。宿もたいして宣伝せず、口コミで広がる。
「農家民宿」なんて気取らず、ゲストハウスという方がいいかも。食事の世話も必要ないし、風呂も基本なく、シャワーか近くの(車で20分ほど走るけど)温泉に通う。布団は別料金で、寝袋持参が推奨されている。

それに加えて、限界集落にある、こんな立派な住宅建築というのは、名所になるかもしれない(^^;)。決して建築洋式がどうの、大工の腕がどうの、といった見方をするのではなく、隠れた豊かな地域を知ることができる。何か地力を感じないか。

なぜ、この家の建主は、老年になってから家づくりにこだわったのか。それはわからないが、昔は紙漉きで潤っていた集落だそうだから、それで財産を作ったのかもしれない。

一応、ホームページを記しておこう。

http://www.mino-warabi.com/

2012/04/21

奈良の「滝桜」

昨年の4月22日、東北の被災地に出発した。

まず入ったのは岩手の陸前高田だが、内陸部から海辺に向かう途中に目にしたのは、津波に洗われた河岸の桜だった。

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ちょうど満開だった。

何やらこれから激甚被災地に入る前の関門のような気がした。まずは花が出迎えてくれるというのは、何かこれからの道行の凄味を感じさせられた。



   

さて、最後の日25日に福島で見たのが、三春の滝桜

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日本3大桜の一つ。天然記念物でもある。

これについては説明の必要がないだろう。今晩のNHKテレビで紹介された。中継では、まだ3分咲き?くらいだった。見頃は26日と言っていたから、まさに昨年のこの写真のような状態になるのだろう。

樹齢1000年というのは、ちょっと怪しいと思う(~_~;)が、たしかに太い。7本の幹が合体したという。

ところで、この滝桜は、奈良にもある。テレビでは滝桜の種子から約3万本の苗木が作られて全国に散らばっていると言っていたが、その1本が奈良市の大和文華館という美術館にあるのだ。

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こちらだ。


私が見に行ったときは、すでに葉桜になりつつあった(~_~;)。
それでも樹冠はかなり広く、幹周り1m以上はあったかな。
花の下に入ると、かなり壮観だ。

 

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1983年に苗が移植されたというから、樹齢はほぼ30年。

結構立派に育っている。

  




 
その経緯については、こちらをどうぞ。

http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4f30df02583e9d89770ee482de6985d1

こちらのコメント欄によると、この滝桜からさらにサンルート奈良の駐車場にも分けられているそうだ。滝桜の孫樹が生えているらしい。

文華館のホームページにも今年の写真があった。

http://blog2.kintetsu.co.jp/seasons/2012/04/post-5cfa.html

2012/04/20

石垣にスギ

石垣にスギ
岐阜県美濃市に来ている。
泊まるのは、限界集落のゲストハウス。なかなか面白いビジネスモデルだ。

ちなみに写真は、石垣の棚田に植えられた見事なスギ林を見かけたもの。

2012/04/19

桜を巡るトンデモ

奈良県では、いよいよ桜も散り始めた。今日は、とくに桜吹雪が素晴らしい。

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これは、ラッキーガーデンの桜。この樹の下でスリランカ料理を食べるのがもっとも人気なのだが、今日は料理に桜の花びらが振りかけられただろう。

ところで、この桜も根元は直径で30センチを越えるから、結構な樹齢を重ねているように思える。だが、実はオーナーが引っ越して棚田に家を建てた際に植えたと言っていたから、20年生くらいなのだ。

意外と勘違いされる人が多いが、桜は非常に生長が早い。私など、コナラやクヌギより早いように感じている。里山にいっぱい植えたら、雑木林は桜に占拠されるかもしれない。

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こちらは、ラッキーガーデンのひつじエリアの桜。

これなど植えて、ほんの3、4年である。苗はひょろりとした高さ1~2mのものだったから、随分太くなったものだ。

桜の巨樹は、魅力的だ。枝を周囲に広く広げ、そこに花が一斉に咲いた様子は、まさに一服の桃源郷の絵のごとく。1本、そんな桜樹があれば、観光客もわんさか集まり、それで地域おこしは成功する。

そして、その桜には「樹齢300年」「1000年」といった推定が吹聴される。ときには歴史上の人物がいかに関わったか絡めて、すっかり名所となる。

奈良には、吉野山だけでなく、各地に桜の名所があるが、なかには樹齢350年を謳い、花の季節には何千人と集客し、そこにはお店も出て賑わうらしい。

その樹には戦国武将にちなんだ名前も付けられている。彼が植えたとしたら、それこそ樹齢400年近いのか……。

が、先日聞いた話は、仰天ものであった。

だって、この桜を植えた人は、まだ生きているのである! もちろん、その人が400歳ということではなく(~_~;)、ほんの数十年前のことなのであった。

なんでも、植え替えた場所がよくて、すくすく育ち、あっと今に巨樹になったらしい。そして、その人の名前から連想する戦国武将の名を桜に付けたら人気を呼んで……。

大笑いである。とんでもない話ではあるが、罪はない。もともと樹木の年齢なんていい加減だからね。この調子で、各地に名所を付けたらよい。あくまで「伝説」として。。。

そういや、奈良の高原地帯にあるしだれ桜の巨木は、ここ3日ほどが見頃だとか。ここは、上記のトンデモ桜より大きく素晴らしいというが、集落の奥にあるからか訪ねる人は少なく、穴場扱い。

穴場と聞いて、これは行かねばならない……と思っていたのだが、今日から雨。しかも私は明日から岐阜に行かねばならない。

帰って来てからでは、花は残っているかなあ。

2012/04/18

大学入試の問題に……

著作権関係で届いた書類は、某大学の入試問題に拙著の一文が使われたことの連絡だった。

で、その二次使用権の許諾などが求められたのだが……そんなことより、問題に使われた拙文を見て仰天した。

Photo


  



字が小さいので、大きめの縮尺。








『日本の森はなぜ危機なのか』からの引用なのだが、なんと「はじめに」の部分なのだ。「森林と林家のためにできること」と題している。

こんなところを問題に使うか~!

かなり恥ずかしいことを書いているぞ(~_~;)(;_;)。

森林と林業について、あるいは山村、自然に関しての考察を行っている部分なら、問題文として適切かもしれない。しかし、こりゃ、決意表明文? いや、導入部だから柔らかい切り口を、と考えて記したのではなかったか。

そもそも執筆は10年前である。読み返すと、冷や汗出るぜ。

しかも、問題の中には、「筆者(私)が担おうとしている「役割」とはどんな「役割」か……」などというものもある。(;^_^A。

ああ、初心を忘れちゃいかんな。忘れていたかもしれんけど(^^;)\(-_-メ;)。

2012/04/17

国内最大の壁面緑化

京都で見かけた壁面緑化。

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京都駅前のヨドバシカメラの入っている「マルチメディア京都」ビルである。





かなり大規模で、建物を取り囲むように壁面を緑化している。ビルの北側から西側にかけて高さ7mの壁面部分を幅160mに渡って延びている。これだけの壁面緑化は国内では最大級で、総面積は1120平方メートルになるという。

生えているのは草花だけでなく、樹木系もあった。今後大きくなるとどうなるのだろう。

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ただよく見ると、土壌は使っていずに、スポンジ状の素材に根を伸ばして幹也茎を垂直に伸ばさせている。また水が上部より流されていた。

緑化することで冷暖房費を浮かす効果もあるだろうが、エネルギーを食う面もあるのだろう。

ちなみに名前を「midorie(ミドリエ)」といい、作ったのはサントリーミドリエという会社。

2012/04/16

林業時間は早くなったのか

先日、ある人と話していて、「森林関係の古い本を復刊(電子書籍とか)できないかと考えたが、林業関係の古い本は、現在使い物にならない」という話題になった。

林業関係と言っても括りが難しいが、たしかに産業面から森林を見た場合、少し古いだけで現状との差が大きすぎる。森林生態学や造林レベルならまだしも、伐採・搬出・製材、そして需要全般では、あまりに変化が激しかった。

とにかく5年刻みで変わっている。

「木を植えろ」が、「間伐しろ」に変わり、

「間伐材は使い道がない」と言っていたのに、いまや「間伐材を使いたい」人が増え、

気がついたら、禿山が増えてしまった。

今更、磨き丸太などの役物を取り上げても、どこか別の国の話みたいだし、搬出の架線話も時代遅れになっている。地球温暖化にひっかけた林業振興策を訴えているかと思えば、国産材の中国輸出を試みる。

私の本も、古くなったか?

『「森を守れ」は森を殺す』が古くなったから『日本人が知っておきたい森林の新常識』に書き直したし、
里山再生』をリニューアルして『いま里山が必要な理由』にした際には、単に修正するだけではなく増補で新しい動きに触れておかねばならなかった。
そうそう、『割り箸はもったいない?』も、出版後の状況変化が激しいから直販するにあたって私家増補版を付けることにしたし。

そういや、10年たっても古びない内容にする、と啖呵を切って書き下ろしたのは『森林からのニッポン再生』である。だから、この本には最新事情は書かなかった。その変わり、林業界の最新の大変化を『森林異変』に描いた。

一般に林業は樹木の時間で動いていると言ってきたのだが、もはや人の時間に飲み込まれたのかもしれない。

しかし、やはり木は、木の速度で生長するのである。どうしたって早く育たない。早く育てたら、問題が出るだろう。
動きの早い社会の経済・産業界の変化に対応することは必要だし、機械や技術の進歩は結構なことなのだが、理念や政策まで右往左往しちゃいかんでしょう

初期の目的を忘れず、社会を変化を取り込みながら、軟らかに対応する方法はないものか。社会情勢が変化したから、以前の事業なり政策を破棄して新しいものを持ち出そうとすると、樹木の時間を無視することになる。

思えば官僚も政治家も、数年で入れ代わる。役職や担当分野が移り、場合によっては退任する。で、新たに席に着いた人物は、たいてい前職者の仕事を否定するね(~_~;)。

そのまま引き継ぐのは面白くないから力が入らないし、自分の独自性を出したいという欲求があるから新しい事業や政策を考える。結果、数年ごとに政策が変わる。が、また数年後に配属が変わって最後まで手がけられず、その施策は次の担当者の手で放置される。その担当者はまた独自の事業がしたくなり……。

その間も、やはり木は木の時間でしか生長しないのである。

2012/04/14

国有林野法案と森林環境税

土曜日の夜に堅苦しいことを書きたくない……という気持ちがあるが、一つ。

国有林の経営を独立して行う国有林野事業特別会計を廃止して、一般会計に統合する国有林野法案が、4月12日に参議院農林水産委員会で全会一致で可決された。
来週にも参議院本会議でも可決されるだろうし、その後は衆議院に送られる。おそらく、こちらもすんなり可決するだろう。

ようするに国有林の経営が一般会計で運営されるわけだ。

この件について思うところは、以前にも書いたから触れないが、むしろ誰も興味を示さないことに寂しさを感じる(~_~;)。一つの特別会計が消えるのだ。それも、がばがば儲かって無駄なバラマキに使われた道路特会とか空港特会ではなく、膨大な赤字を発生させた会計を一般化するのだ。しかも全会一致だよ。誰も反対しない。

やはり、世間は(政治家も)森林に甘いなあ、と感じる。

ところで都道府県の独自課税である森林環境税(名前はそれぞれ)を導入する自治体も、4月から増えた。岐阜県と山梨県で新たに始まったのである。

これで全国33県となった。

こちらも、内部の議論はさておき、この増税に対して反対運動が起きたとは聞かないし、どちらかというと望む声が多い中、全会一致で可決することが多いようだ。

やっぱり、森林に甘い国民である(~_~;)。

2012/04/13

林業論壇~「日本の森林を考える」

本日、届いたのは、「日本の森林を考える」第40号。

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この会員制季刊寄稿誌、以前このブログでも触れたことがあると思うが、3年ぶりの発行だ。しかもテーマは「森田稲子 追悼号」。森田稲子というのは、この季刊誌の発行者である。

森田さんは2年前に急死した。前年秋に39号を刊行し、あと1号で休刊すると言っていた。理由はいろいろあるが、本業の会社経営が思わしくないこと、本人の健康状態もあるということだった。

だが、最後の1号を出せぬまま、亡くなったのである。独り暮らしだったから、今風に言えば孤独死であるが、決して世間から忘れられた存在ではない。

そこで有志が集まって、最終号を追悼特集として刊行することになったのだそうだ。

実は、私にはとくに連絡もなかったので最近まで知らなかった。3月頭に出たということを知ったものの、発行元の日本森林技術協会のホームページでは申し込めず、電話かFAXなのである。せめてメールくらい受け付けろよ、と思うが、結果注文するのも遅くなって、今頃手にしたのである。http://www.jafta.or.jp/contents/information/111_list_detail.html

さて、内容はこれから読むので触れない。ただ追悼号と言っても、森田さんの思い出話ばかり書いたものではなくて、いずれも林業・林政に関する論文である。目次は、上記サイトから見てほしい。

ここでは、この季刊誌そのものの立ち位置について考えたい。

タイトルが「日本の森林を考える」であり、A4版、味もそっけもないデザイン……なのだが、ここで展開したのは、徹頭徹尾林業論であり、いわば林業・林政の論壇であった。ちょうど10年間(1999年~)この季刊誌が出版された時期は、現在の林業界の大変革期に当たる。

それどころか、森林林業再生プランの生みの舞台とさえ言える。なぜなら、日吉町森林組合の湯浅参事が広く登場したのは、私の知るかぎり、この誌からである。そして梶山氏とのコラボ?が始まって、広く提案型集約化施業なるものが登場していく。

ちなみに私は、15号から依頼されて執筆した。おそらく数ある執筆者の中で、私がもっとも多くの記事を書いているだろう。数えてみると、12本だった。後半はほどんど毎号書いていた。

一応説明しておくが、本誌は会員誌であり、安くない会費を払って、ようやく講読・執筆できるのである。もちろん原稿料はない。私は、ずっと無料、いや会費を払って書き続けたのである。なかには森田さんの依頼によるテーマもあったが、別に原稿料はない。図書券をもらったりした程度だ。プロとしてあるまじき行為(^^;)である。

それでも書いたのは、ここが事実上の唯一の林政論壇だったからだ。今の日本には、林業を論じる場はほぼない。林業技術的なことや広報的な情報なら業界紙・業界誌で取り上げるが、真っ向から林政を問うことはしない。学界の論文誌は、世間には縁の遠い世界だろうし、そこだって真っ当な意見の応酬があるように思えない。

私は、ほかに「農林経済」というニュースレター誌も書いていたが、こちらも廃刊。最後の舞台が「日本の森林を考える」だったのである。

それも消えた今となっては、マジに林業を論じる場はなくなった。私も執筆の舞台を失った。一般誌で林業関係の記事を書いても、隔靴掻痒なんだ。知識のベースが違うし、読者層も林業関係者に限らないから意識して書かねばならない。

この点については、私もブログに書いている。

http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2009/11/post-47bd.html

ところで、森田さんのブログもあった。それは、今も消えていない。

http://ameblo.jp/morita-ineko/theme-10009372599.html

こちらでは、木質ペレットの是非などで私と論争になったこともある。

ともあれ、林業論壇が消えることは、林政にとっては痛手だろう。

私のブログ? ここに記すのは私個人の「思いつき」の戯れ言だからね(~_~;)。

2012/04/12

木材貿易統計から連想した中国の強み

林野庁が、2011年の木材輸入実績を公表している。

木材輸入額は前年比9%増の9997億円(前年比109%)だそうだ。超円高に加えて、震災で国内の供給力が衰えたことも影響しているだろう。

輸入先の第1位は、中国である。前年比14%増の1495億円で、木材輸入総額の15%を占めるそうだ。

中国といえば、経済発展により内需が増えて爆発的な木材需要に対応するため木材の輸入を進めている……と説明されてきた。しかし実は、輸入した木材を加工して輸出している面が大きいのだ。国内需要だけではないわけである。そして海外に売れるのは、単に安さだけでなく、商品に魅力があるのだろう。

経済発展して木材需要が増えたというより、木材加工業を育てて経済発展に寄与したというべきかもしれない。なんか、日本と逆ケースみたい。日本は原材料輸入から製品輸入に変えるうちに経済力を失ってきたように見える。

本当は、素材の生産に次いで、製品生産を外国勢に明け渡してしまった。代わりにソフトの生産(たとえば新たな加工技術とかデザイン、利用法など消費者の欲しがる魅力)を育てればよかったのだが、こちらも遅れたまま。いや、こちらも外国勢に任せてしまった感がある。

……というようなことを考えていたら、吉野林業の歩みと似ていると思ってしまった。

吉野は、当初は木材蓄積が自慢だった。江戸、明治、そして戦争直後と、日本国中の山が荒れて、木材生産力が衰えているとき、乱伐せずにきっちり蓄積を維持して、供給力を保っていることを強みにしていた。

そこから木材加工技術を育て、さらに商品開発力を持った。細い木も太い木も、端材も、みな活かしてきた。構造材、内装材など大小の建築材だけでなく、大径木は樽丸に、端材商品に至るまで、常に新商品を生み出し、時代に適合してきた。

ところが、戦後の木材バブルに溺れるうちに、商品開発を忘れてしまう。原木で売る方が楽で儲かり、手間のかかる加工や商品開発は外材を扱う業者に任してしまう。それどころか、原木まで外部で仕入れるようになった。ほかの産地の木を吉野に運び込んで吉野ブランド付けて出荷するのだ。

だが気がつくと、樽や桶が衰退し、建築足場丸太も金属パイプに取って代わり、役物も売れなくなる。代わって洋風建築部材が求められ、集成材の方が人気となった。すると吉野材も吉野ブランドも必要なくなってしまった……。

今や吉野だけでなく、日本全体が、素材づくりも、製品づくりも、商品づくりさえも明け渡したのだ。


ちょっと連想がすぎて話が貿易から離れてしまったが、日本が中国から輸入する主な品目は、合板、集成材などボード類のほか、やはり割り箸が入っている。

しかし、面白いことに気づいた。以下は、林野庁のサイトからの引用だが、

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2-1.丸太【輸入量464万m3(前年比98%)、輸入額885億円(前年比101%)】

主な輸入先は米国及びカナダで、両国で総輸入量の66%(米国36%、カナダ30%)を占めました。

2-2.製材【輸入量684万m3(前年比107%)、輸入額2,170億円(前年比108%)】

主な輸入先はカナダ及び欧州で、両国・地域で総輸入量の70%(カナダ34%、欧州36%)を占めました。

3.合板【輸入量310万m3(前年比117%)、輸入額1,593億円(128%)】

主な輸入先はマレーシア及びインドネシアで、両国で総輸入量の81%(マレーシア48%、インドネシア32%)を占めました。

4.木材チップ【輸入量1,179万トン(前年比97%)、輸入額2,120億円(97%)】

主な輸入先はオーストラリア及びチリで、両国で総輸入量の49%(オーストラリア27%、チリ22%)を占めました。

5.集成材【輸入量82万m3(前年比118%)、輸入額414億円(123%)】

主な輸入先はオーストリア及びフィンランドで、両国で総輸入量の51%(オーストリア27%、フィンランド24%)を占めました。また、輸入量の8割が構造用集成材でした。

//////////////////////////////////////

どの項目にも、中国が登場しない(^^;)。「主な輸入先は」カナダ及び米国、欧州、そしてマレーシアやインドネシア……ほかチリ、オーストリア、フィンランドなどの国名が出てくるばかり。どこで中国からの輸入増になったんだよ。割り箸か(笑)。
品目を調べたが、どこに載っているのか発見できなかった。

まあ、傑出したものはなくて幅広く何でも……ということなのだろう。

この幅広さが怖い。特化するのではなく、あらゆる分野に手を出せる業界は、新しいものを生み出しやすい。もしかすると、ソフトの生産も中国に先んじられるかもなあ。

2012/04/11

4・11、4・12

今日の夕方、インドネシア・スマトラ島沖合で、マグニチュード8,7(8,6?)の地震があった。

さらにM8,2。

立て続けの大地震に津波も含め、緊張が走った。

ツイッターで知って、すぐにテレビを付けるが、何のニュースもない。しばらく待って、少し速報が入ったが、あまりにもベタ記事扱い。そんな意識なのか……と思ってしまった。

思えば、昨年の今日も、同じくらいの大地震があったのだった。それも福島沖ではなかったか。続いて翌日12日も同じクラスの地震。

東日本大震災の余震であることは間違いないが、その規模の大きさと、震源が福島、それも原発に近いことに(私は)緊張を増した。福島県民にとっても、地震そのものは3・11より大きく感じただろう。少なくても、立て続けの巨大な揺れは、精神的なショックが大きかったと思う。

だけど、すっかり忘れられている。1年たって、過去大地震と大津波を経験したスマトラ沖で再び起きた地震なのにもかかわらず、ほとんど気に留めていないようだ。

この無関心に近い感度が怖い。まあ、スマトラ島に大きな被害は今のところ報告されていないようだが……。

しかし、今日の地震を2004年のスマトラ島沖地震の余震という見方もあるらしいから、東日本でも同じクラスの余震が今から起きる可能性だってあるわけだ。

喉元すぎれば……という言葉もあるが、記憶や経験が必ずしも活かされるとは限らないものだなあ。

2012/04/10

『割り箸はもったいない?』直販開始

前々から告知していた拙著『割り箸はもったいない?』の直販体制を整えました。

基本的には、以下のサイトのようにしました。

http://homepage2.nifty.com/tankenka/waribasihon-hanbai.htm

販売は2種類あります。

私家増補版~~~『割り箸はもったいない?』と、最新レポートのセット。

割り箸セット~~~『割り箸はもったいない?』と、最新レポート、「希望のかけ箸」セット。

最新レポートは、完全書き下ろしです。「希望のかけ箸」は、磐城高箸提供。

価格は、なかなか設定に苦労しましたが、次のように決めました。
思いっきりダンピングしようと思いましたが、どうしても送料や振込手数料などがかかってきます。手間は私がかぶりますが、物理的なコストだけはお願いしますので、冊数が増えれば増えるほど安くできます。

『割り箸はもったいない?』私家増補版(本書と最新レポートの2点)

1冊      700円
2冊    1400円
3冊    2000円
4冊    2500円
5冊    3000円
6冊    3600円
7冊    4200円
8冊    4800円
9冊    5400円
10冊    6000円

割り箸セット(本書と最新レポート、「希望のかけ箸」の3点)

1セット  1000円 (冊数変わらず)

ただし、直接生駒に来て受け取る、受取人払いなどにすることで、送料抜きの価格は、1冊ごとに100円ずつ安くできます。

基本は、メールでやり取りをして、入金を確認したら即郵送する方法です。要望があれば、メールでお伝えください。サインでもなんでもします。領収書も発行します。

注文お待ちしています(^o^)。

……ただし、あくまで私の手元にある分だけの特別販売ですから、底をついたら、その時点で終了させていただきます。

2012/04/09

林地残材を31,8円で!

以前にも話題にした再生可能エネルギー全量買取制度における、未利用木質バイオマス(ようするに、林地残材)の希望買取価格

調達価格等算定委員会で要望されたのは、なんとキロワット時当たり31,8円だそうだ。

20円だと1立米1万3000円にもなる! と紹介したが、この価格なら2万円近くになるんじゃないか。これが実現したら、誰も製材や合板に木材出さずに、みんなチップにして燃やしてしまうだろう。

また一般バイオマスの買取価格は25,2円、リサイクルバイオマスは14,5円と要望し、買取期間は20年だという。なるほど、20年間も上げ底価格で山の木を切りまくって、禿山だらけにしたころに補助も打ち切られて、さっさと撤退か。

この価格を提案したのは、グリーン・サーマル株式会社だという。この会社は、バイオマス発電を進めるために設立された会社だとかで、最近では、福島県の会津若松市に林地残材による発電所を建設を進めている。

そりゃ、委員会では高く吹っ掛けて、その後の審議の中で削られて落ち着くところに落ち着く……という作戦ならよい。この委員会のほかのメンバーがどの程度林業のことを知っていて、真っ当な経済原則に則って計算できる頭の持ち主なのか知らないが、まさかこの価格が通るとは思えない。

しかし、バイオマス発電と言えば錦の御旗になって、高めの金額に決まる可能性がある。

今やバイオマス発電を巡っては、怪しげなコンサルもどきが全国各地の林業地域を徘徊している。ようするに発電所建設も補助金とファンドに頼って自腹を切ることなく進めようという算段だ。しかし、本気で林地残材を集められるかどうか、現場を調査しているのかどうか……。

そして、サーマル(熱→発電)利用というのが、非常に効率が悪くて、林業の中でも最終段階に位置づける利用法であることを理解しているのだろうか。
いまだにバイオマス発電を林業の救世主だと思い込んでいる人も少なくないが、もっとも質の悪い用途なのである。

算定委員会には、もっと林業通を送り込むべきだ。

そして、A材もB材も、C材、D材も同じように林地から運び出せるシステムを構築することから始めたらどうだ。

2012/04/08

フォレストアドベンチャー見学

奈良県山添村と言えば、フォレストアドベンチャーのあるところ。

フォレストアドベンチャーというのは、森林を利用したアウトドアレジャー施設で、見た目はアスレチックをもっと高度にした感じ。レンジャー部隊の養成訓練所(^^;)みたいなイメージだ。

もともとフランスの社員研修施設として生まれたらしいが、やがて一般にも解放され、そのノウハウを各地で売るようになった。そして日本でも東京の会社が取り入れ、それを各地にフランチャイズ契約で広めている。東日本中心に、すでに10カ所に誕生している。たしか日本で二番目が、山添村だったはずだ。

少しの時間だけ見学させていただいた。

まず杜に入るのに信号付きの一方通行の導入路。狭くて簡単に入れないゲートが、なんか、ここから冒険の気持ちを盛り上げるね(^o^)。

で、車を止めてここから……とおもいきや、約500m歩く。周りはスギやヒノキも混じっているが、基本的に雑木林だ。コナラが多いか。

そして比較的急峻な谷に施設は広がっていた。

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このように、大半が木の上に広がっている。吊り橋より怖く、ワイヤーロープを張り巡らせており、カラビナで身体をつないで渡っていく趣向だ。

最初に低いところで研修して、道具の使い方を練習して、パスしたら、本番へと進める仕組み。自己責任で、と書かれており、また誓約書もサインするそうだが、こういう施設は日本では少ないだろう。

詳しいことは、こちらへ。http://www.forest-ad.jp/adventure.html

今のところ、多少のけが人は出ているが、大きな問題にはなっていないそうだ。基本的に怪我するのは指導員の教えたとおりしないということだから。
この日は、雪が舞うほどの寒空だったが、そこそこ人が来ていて、とくに女性が多い。カップルはいても、男性だけのグループはいず、女子だけのグループが多いという。あとは家族など。意外と子供は少ない。

全体は15ヘクタールほどあるが、施設のあるのは谷の部分だけで、1、2ヘクタールくらいか。

施設そのものは、とくに珍しく見えなかったのだが、ようするに安全に運営するノウハウがポイントなのだろう。まさに使い道のない森の新たな利用法と言えるかもしれない。ただ、古くからの林業家は、「森の遊びに使うなんて」という声が聞こえてきそうだ。

ただ、フランスにロイヤリティを払うくらいなら、日本式のコースを作れないかな、と思ってしまう。それこそ、途中で林業の技を試すとか(^o^)。

もともと熱帯雨林などに樹上回廊やジャングルジムを設営して、森林研究を行う技術は日本が発達させた。私はボルネオで体験したが、そこでもワイヤーロープにカラビナ通して、地上数十mを歩いたのだが、施設としてはよく似ている。

さらにアーボリカルチャーは、ロッククライミングなどの技術を木登りに活かしているが、さらにアーボリカルチャーの技術を活かしたレジャー施設なんてのもあっていいのではないかなあ。

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今回は、ほんの触りの見学だけだったが、次は体験もしてみたい。一人では寂しいから、誰か参加者いませんか(^o^)。

2012/04/07

あじさいかりんとう~奈良に花咲くタイのお菓子

奈良県の山添村を訪れた。

名版国道山添インター蕎麦の花香房という産直市場で手に入れたのが、あじさいかりんとうという名のお菓子。

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花のように開いた揚げ菓子だ。非常に薄く、口に入れると、パリパリと軽い食感ながらすっと溶けて、ほんのり甘い。

味は素朴なんだけど、なんか、後を引く。いわゆるカッパエビセン効果(^o^)。口にするのが止まらない。

今や、このお菓子が隠れたブームだ。遠方から買いに来る客も現れ、1日500パック作っても売り切れるという。

このお菓子、実はタイの「カノン・ドー・ジョー」という。ホテイアオイの花という意味らしい。今ではタイでもあまり見かけなくなったというが、山添村で新たな花を咲かせている。

作っているのは、タイ人のナッスリーさん。20年ほど前に来日して日本人とも結婚したが、工場の仕事がなくなったことを機に作り出した。そして地元で売り出したのだ。

味は、少し日本人向きに調節したそうだが、ココナツミルクの香りもわずかにする。

その裏の苦労話(^^;)などを聞かせていただいたが、一見山添村と何の関係もないタイのお菓子が人気になって、山添村名物になろうとしているなんて、ちょっとしたドラマではないか。

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売り場では、ナッスリーさんの顔写真付き(^^;)。


山添村では、外部の視点を取り入れて、地元の魅力を発掘したり新たな事業を起こすことを提案したが、単に村外どころか外国人の視点が入っていたのね。しかも、起業スピリッツまで外国人に助けてもらっている。

どんなところにチャンスが眠っているかわからないものだなあ。

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アップにすると、こんな感じ。

2012/04/06

LIFE311×ピグライフ

もう、お忘れの方もいるだろうが、LIFE311というプロジェクトがあって、more treesモア・トゥリーズが岩手県住田町に木造仮設住宅を建てた3億円を寄付で集めている。

昨年末までで、たしか5000万円にも届いていなかったのだが、今はどうなっているか。

1億5548万0811円である。(4月6日)

おお、半分まで達したではないか。今年に入って急伸したのだ。

実は、これにはちょっとした仕掛けがあって、アメーバピグのソーシャルゲーム「ピグライフ」で募金対象アイテム(スギの苗、スギの木活力剤)を販売したのだ。

この当たり゛私にはよくわからん世界なのだが(^^;)、ようするに仮想空間に自分の世界を作るのに、スギの植林をするわけだ。それを有料で購入するのだが、それが寄付金になる企画らしい。

始まった1月に、いきなり1億円越え(つまり5000万円以上集まった)して驚いたのだが、予定していた3カ月間が終了して、募金総額が7002万6750円となったそうだ。アイテム購入者数は、17万3322人に達した。その結果、仮想空間には30万本のスギの木が植えられたことになる。(つまんない換算だが、これを現実の面積にすると、ヘクタール3000本植えで100ヘクタールだ。)

もちろん、目標額のまだ半分ではあるが、大きく前進したことに間違いない。

やはり、単に寄付を求めるだけでは限界があるが、ゲームの中に組み込ませると、みんな財布の紐が緩むというか、気軽に寄付するものなのだと再認識。

いやいや、よく考えると、これは寄付したのではない。ちゃんと仮想空間に対価を得ているのだ。その対価(仮想スギなど)自体はほとんど経費のかからないものだが、得るものがあれば支払うという、極めて当たり前の経済行動なのかもしれない。

これかからは、寄付とかボランティアだとか助成とか、一方的な関係は流行らないのではないか。ちゃんと対価を用意する、いわば投資の時代が来るような気がする。

金を出したら、何か得るものがある仕組みづくりだ。逆に金を受け取る側は、何かお返しするもの(コストのかからないもの)を考えるべきである。
たとえば国の助成金だって、その金で仕上げた事業の成功度によっては、さらに報酬を渡すようなシステムにすれば、バラマキ補助金ではなくなるのではないか。(失敗しても、返さなくてよい点が、通常の借金や融資とは違うところ。)

さて、あと1億5000万円(^o^)。次は、どんな手を繰り出すか。頑張ってね\(^o^)/。

2012/04/05

つなぎに感じる青春(^o^)

押し入れを掃除した。
いらないものを捨てて、収納容積を増やしたいし、そもそも無駄なものを抱えこむ生活を見直したい。

すると、奥から見つかったのが、つなぎである。ズボンと上着のつながった作業服だ。それが2本あった。

どちらもボロボロ。片方の白いものは、主に洞窟もぐり〔ケイビング〕用として使っていたもの。

私は大学時代は探検部に所属して、主にケイビングをしていた。洞窟と言っても、ほとんど匍匐前進するような狭い穴で、つなぎが欠かせない。さもないとズボンが脱げてしまったり泥が入ってしまうからである。

良く見ると、各所に修理や改良を施した跡がある。破れたら自分で縫っていたし、またヘッドランプの電池ボックスの格納ポケットや小道具を身につける仕掛けを自分なりに考えて作っていた。

なつかしいが……今更着れないよなあ。やはり捨てるか。

もう一着は、青いつなぎ。こちらは、林学科のクラスでつくったものだ。林学科は20人しかいない所帯だったが、こうしたユニフォーム的なつなぎをつくっていたのである。

林学科も、森の中に入って、樹木の枝を集めたりスコップで穴掘って……と土方仕事が多かったから、汚れても気にしないようつなぎが重宝したのだろう。(だろう、て、覚えていないんだよな。なぜつくることになったのか。)

そして背には、こんなイラストが入っている。

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わかるだろうか。こちらも、かなり傷んでいて、背のイラストも剥げているのだが、切り株の上に斧持って座る男の子の姿が。

斧というところが時代錯誤だが、当時まだ学生にはチェンソーは持たせてもらえなかった。

おそらくイラストを書いた人物は林学科の学生ではないだろうから、林業そのものを知らずに書いたのではないか。

We Love Forestry  の文字が、いかにも林学科学徒。 

ただ不思議なのは、胸にはSUECの文字が入っていることだ。

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これは、静岡大学探検部を意味する。つまり、林学科とは関係ない。ということは、この部分だけ独自に自分で縫い入れたことになる。

でも、私はさすがに刺繍までできないよ。誰が縫ったのだろう。記憶にございません(^^;)。女子部員に頼んだのか、それとも……。

ただ、こちらのつなぎも、結果的にケイビングに使ったはずだ。現にあちこち破れて修繕している。

懐かしいが、これを保存していては、押し入れがいつになっても片づかない。断者離を決行するには、やはり捨てねばならん。どうせ、着れないし。サイズが変わってしまったからなあ。とくにお腹まわりが……。

ということで、記録は写真に撮って残すことにした。

ちょっぴり探検部&林学科の青春時代を思い出した一コマである。

2012/04/04

小学生の吉野割り箸論文

tetudaブログ「日々ほぼ好日」に、「吉野割り箸vs中国割り箸」と題して、当方でも「吉野割り箸のコストパフォーマンス」として取り上げた奈良町情報館の吉野割り箸売り込み記事を紹介している。
そして、当方のブログも引用されているし、『割り箸はもったいない?』のリンクも張ってくれている。

ここでは、当の藤丸くん情報として、3月末で41件の受注、今週中には50件を越えそうだという。営業も、東京だけでなく大阪や祇園(京都)も回っているらしい。関西圏なのに、吉野割り箸を知らなかったの?と驚くが、価格設定を間違わずに売り込み先を選べば、短期間にこれほどの受注が可能なのだ。

興味深いのは、コメント欄。ここには、価格のつけ方のいい加減さを指摘している直で買っても卸で買っても値段が一緒だったりする。また製造元が同じでも卸によっては、価格がバラバラ。ほとんど気分で価格を決めているケースもあるようだ。

ようは、直販で安く売ると、問屋に文句言われるのが怖い、という心理が働くようだ。このがんじがらめの心理が、流通改革を阻んできたのかもしれない。

現在の価格は安すぎて困る、と文句いいつつも、問屋支配から脱出はしないのだ。多少のリスクは背負っても、自ら販路を切り開く気持ちがあればよいのだが……。

ところで、tetudaブログの前日には、次のような紹介もある。

「吉野杉でつくられた環境に優しい割り箸」という卒業論文

帝塚山小学校の塚本奈都子さん、つまり小学生の卒論なのである! 400字詰め原稿用紙30枚以上にもなり、奈良新聞に掲載された。

いやはや、大学生が割り箸論文を書くことはたまにあって、私の所にも来るのだが、小学生とはね……。奈良の小学生は意識が高いぜ。

内容は、私も知らなかった(^^;)ことも含んでいる。よく調べたものだ。

あえて問題点を指摘すると、やはり「日本の林業は、海外の安価な木材に押され」という言葉が入っていることと、「現在、日本国内では年間250億膳もの割り箸が使われているが」と記してあること。

「安い外材」という言葉は今更だが、現実に林業家や学者までが平気で使っているのだから、小学生がそのように思うのはしょうがないだろう。

そして割り箸の消費量を年間250億膳というのも広く出回っている。なぜ、この数字が広まっているのかと考えるに、これは拙著『割り箸はもったいない?』のためだと気づいた(^^;)。

私がこの本を出版したのは2007年だが、執筆したのは06年。そして06年に手に入る統計資料は前年度のもの。つまり2005年だ。この年は、たしかに250億膳程度だったのである。

これが世間に流布したらしい。

実際には、その後最高値として259億膳まで行くものの、急激な減少にあって、現在は190億膳を割っている。

残念ながら私が5年前に記した数字がいまだに一人歩きしているらしい。

ま、そんな枝葉末節のことはどうでもいい。やにわに、国産割り箸へ目が集まってきたではないか。

……そんな時に『割り箸はもったいない?』が配本中止とはね。。。

近く「割り箸最新事情」を添付した新生『割り箸はもったいない?』の直販を始める。割り箸のセット販売もできたらいいな、と思う。

 

2012/04/03

嵐は来なかった……。

今日は、日本全国が猛烈な「台風並の」低気圧に縦断されたようだ。

この時間、まだ関東は嵐のようだし、東北から北海道は未明から明日にかけてらしい。

さて、どうなるか、と思ったのだが、何のことはない、生駒には嵐は来なかったよ。いや、正確にはほんの10分20分くらいかな。午前中は晴れていたし、夕方は青空が広がっていた。

これこそ、霊山・生駒山のご加護による……というと、いつも(娘に)バカにされていたのだが、その娘も家を出て、静かなものです(家出じゃないです、大学入学して、下宿した)。

この1年、全国的には本当に災害が多かったのだが、生駒、とくに私の住んでいる地域に関しては、ほとんど影響がなかった。地震は感じないし、雨も風もたいしたことない。隣の奈良市や大阪では、結構揺れたり豪雨にみまわれているのだけど、生駒は何の被害もない。

だが、私もこの地に延べにして30年は住んでいるのだ。そんなに甘くないことを知っている。

そもそも昔は災害が多い街だった。土砂崩れや床下浸水くらいの水害はしょっちゅうだった。当時私が住んでいた山手の住宅街では、山を下りる道は1本しかなくて、そこが崩れて通行不能になったこともあった。私は、登山靴を履いて、崩れた土砂の中を通って駅前に出た記憶がある。それが1週間くらいは続いた。

山火事も発生して、何日も煙が上がり続けたこともある。道路の雪が凍りついて、ツルツルのアイスバーンとなり移動不可能になる日も、冬に幾度かはあるのが普通だった。

また竜田川もよく氾濫した。当時川沿いにあったジャスコが浸水したこともある。

考えてみれば、終戦後は大災害が続いた。一つには山が荒れていたからだろう。が、同時に災害(につながる風雨など)はあって当たり前だったのだ。

それが、都会では膨大な土木工事を通じて災害の少ない街づくりを進めてきたおかげで、今では少しの土砂崩れでも騒ぐようになった。また社会も、少しの交通の乱れでもぎくしゃくするほど余裕のないシステムを組み上げてしまった。

考えてみれば、人は常に安定、つまり変化しないことを求め、頑丈さを追求してきた。結果、朽ちたり燃えやすい木造を忌避するようになる。コンクリートや金属がもてはやされたのだ。

でも、被害の度合いにもよるが、多少の不自由さを許容する社会にならないと、木の文化は保てないと思うよ。

2012/04/02

鹿児島大学の養成プログラム

鹿児島大学から届いた案内。

高度林業生産システムを実現する「林業生産専門技術者」養成プログラム、の受講生募集である。(相変わらず、長い名前だな~。)

以前も、紹介したことがあるが、毎年よく続けている。私は、第二回だったかに参加した。と言っても、私が養成プログラムを学べるわけないのであるが、取材の一環とでもいうべきか。

内容は、現代に適合した林業技術者向きの知識とノウハウを身につけてもらうもの。すでに国が養成を進めているフォレスター森林施業プランナーから依頼を受けて、現場で伐採搬出作業する人向きである。

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カリキュラムの部分を掲載しておこう。

この中に、urlがあるが、そこには、要項が載っていない(^^;)。今年度募集の該当ページが見つからないのである。

とりあえず、こちら。昨年の要項が載っている。そのうち更新されるだろう。連絡先も載っている。


記しておくと、受講場所は、鹿児島大学の高隈演習林。受講料は4万円。また宿泊する場合は、1泊3食で3000円程度。

募集予定者は、10名程度。先着順である。

改めて眺めると、文字通り「林業生産専門技術」の養成である。

つまり林業の後半部分。伐採から製材までを抑えている。

それは、今求められているものだからだろうが、そろそろ前半の森づくり部分も触れてほしいな、という気持ちはある。

森づくりも考えた伐採方法、路網づくりとか、搬出しながら地拵え、とか。そして、実際の植林技法なども。

あんまり詰め込めないかなあ。受講者も、多くは素材生産業者だし。しかし、伐採の後に来るのは搬出や製材だけじゃなくて、再造林も頭に描いてほしい。

2012/04/01

万博公園の「新里山」計画

大阪万博記念公園と言えば、万博会場の広大な跡地に人工的な森~里山をつくり上げたことで知られる。

実際、40年ほどで、これほどの大木のある森が育ったのだ。森だけでなく芝生広場のほか雑木林にブッシュに畑、小川が流れ、豊かな自然を取り戻した。

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森の裏手には、こんな圃場もあり、里山的景観を作っている。




                 

      

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こちらは、樹上を巡る回廊「ソラード」。


私に言わせれば、東京の明治神宮、西の万博公園(^^;)というべき人工の森である。

この森については、私も『元気になる! 日本の森を歩こう 』に記した。

が、運営する日本万国博覧会記念機構が、このほど「新SATOYAMA宣言」を発表し、行動計画を策定した。

http://www.expo70.or.jp/forest/pdf/h23/seibututayousei_01.pdf

これによると、万博公園の環境は、必ずしもよい状態ではないらしい。

多様な樹木を多数植栽したにもかかわらず、一部の樹木以外の樹高成長は緩慢であること、しかも高木層のみの単相林となり、中木層・低木層・草本層が消滅した状態であること、また、その結果、生物多様性に欠ける」とある。

オオタカが営巣するものの、キジやヒバリ、モズ、ホオジロなど草原の鳥が1990年頃から減少し、かつて万博記念公園に生息する「野鳥の顔」と言われたキジは、もはや姿を見ることができないらしい。そういえば、私も以前はキツネを見かけたというが、もういないと聞いた。ほかにも姿を消した植物や動物は多いだろう。

これまで、放置による里山の交配が進むとよく言われるが、わかりやすい事例がなかった。本物の里山は広すぎて調査が行き届かないいうえ、環境変化の要因が単純ではないからだろう。そのため結論を出しにくい。

しかし、万博公園なら一元的に管理しているし、社会的な諸条件が顕著に影響せず、人が手を入れずに遷移が進むことで生物多様性が失われるという、よい事例になるのではないかと思う。

と同時に、それを防ぐために「新SATYAYAMA」という言葉を使っているのも気に入った。

単純な里山復元とか保全ではないのだ。

もともと里山を昔のような形で維持するのは不可能なのだ。農業・林業を含む社会全体が変化してしまったのに、自然環境だけを昔のようにもどすのは無理というより、やってはいけないと思う。

必要なのは、新たな里山(ここでは、生物多様性が高く、人も楽しめる場所・・・という程度の意味)にしなくてはならない。

たとえば棚田は水田だから季節ごとに水が張られて美しさと水辺環境をつくり上げたが、小さな面積の水田を何百枚と水田耕作するのは現代では無理だと感じていた。

ならば、小さくてもよい、小さな方が喜べる市民農園・市民庭園にでも分譲した方が現実的だろう。その結果、里山の景観は変わるが、生物多様性は別の形で保てるし、市民はお金も落として喜ぶ。つまり自然と人間の利益共存が図れるだろう。

雑木林も、新たな使い方を考えたらよい。草原も池も小川も、昔とは違う使い道を考えて、新しい里山を作れないか。

そう考えていた。万博公園の行動計画がそこまで考えたものかどうかは知らない(^^;)が、昔にもどすのではない里山づくりの実験につながれば幸いだ。

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