「責任ある素材生産事業体認証制度」
宮崎県のNPO法人ひむか維森の会が、「責任ある素材生産事業体認証制度」(CRL認証)を発足させて初の認証団体を9社選んだという。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20120422-OYT8T00111.htm
ついにやったか、という気持ち。
素材生産業者の集まりである ひむか維森の会は、2007年に「伐採搬出ガイドライン」を制定しており、伐採搬出に関する指針を作っていた。それを取材した際に、それを認証制度まで格上げしたいという意向を聞いていた。
昨年夏に訪問した際も、制度について少し話題に上がったが、それが昨年末に発足していたんだな。
その名も「責任ある素材生産事業体認証制度」か。長い(~_~;)。
この制度は、環境に配慮した素材生産活動をおこなう事業体を第三者が審査し、合格したところを認証するもの。素材生産業者を認証するというのは国内初である。
大きな特徴は、現場ごとに内容が違うため、マニュアルに頼らず実務を知っている同業者が現場審査を行うことだろう。
これでは、一見仲間うち審査と思われかねないだけに、ほかの審査メンバー(学識経験者、市民団体など)と緊張関係を保てるようにして、クリアする必要がある。ある種の信頼関係を醸成しておかないといけないだろう。
制度についての詳しいことは、維森の会のHP http://himukaishin.com/rlc/aboutRLC.htmを参照のこと。
ともあれ、今の段階で言えるのは、現場はここまで進んでいる、ということだ。これを宮崎だけに納めておくのは惜しい。各地に認証審査団体を設立されることを期待したい。本当は、森林組合も審査を受けてほしいね。
先日、日本の林業の問題点は「なんでもぶつ切り」だと指摘した。それは森づくりから素材生産、そして製材、最終商品までの流れがぶつ切りで、情報も途切れていたり、業者の目的意識もバラバラ……という川上から川下までの流れの縦割り問題である。
が,もう一つのぶつ切りがある。それが、地域ごとの横のつながりが切れていることだ。林業地は、谷一つ違うと、全然情報が通っていなくて、技術も違っていたりする。当然、九州から東北、北海道まで地域ごとに林業形態が違っており、しかもその事実をお互いが知らない……有り様だ。知らないから、全国画一的な政策で林業を再生できると思い込んでいる関係者もいる(-.-)。
さらに、同じ地域でも、業者間の横のつながりが薄い。隣の業者がどこの山でどんな施業しているかを知らないことが多い。新しい技術や機械を導入したことも知らなかったりする。
この縦のぶつ切りと横のぶつ切りが、日本の林業の致命傷になっている、という意味のことを話した。
言い換えると、日本林業の再生は、業界の縦と横を紡ぐことからスタートする。
その点、宮崎は例外的存在かもしれない。ひむか維森の会には約50社が加入しているそうだが、その間の意思疎通がずば抜けている。宮崎は、この認証制度を通して、さらにつながりを密にするだろう。このことに気づかないほかの地域の林業再生は、夢のまた夢である。
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業界の縦と横を紡ぐ!
日本林業の実態が鮮明にイメージできます。
ふるさと・丹後の林業再生が
「夢のまた夢」にならないように何ができるか~?
現地のNPOに所属する一員として先ず、
この貴重な情報を伝えます。
投稿: 岩井拓実 | 2012/04/25 18:34
丹後のNPOですか。うまく連携相手を見つけてくださいね。
まずは自分たちがオープンになることからです。
投稿: 田中淳夫 | 2012/04/25 22:11