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2012/05/01

リグニン産業、なるか?

こんな記事が。

http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000001204210003

ようするに、三重大学の舩岡正光教授が研究しているリグニンの実用化に向けて、徳島県那賀町にプラントを建設したというものだ。木材10キロを分解して、リグノフェノール3キロと、糖7キロを抽出する計画だという。

舩岡教授の研究に関しては、私も20年ほど前に取材していて、いたく感激したものである。
これは、木材の成分の3割を占めるリグニンを抽出することにより、新素材を作り出すものである。リグニンは、セルロースなどを接着して、木質を形作るものだから、たとえばセルロースだけで作った紙にリグニンを浸透させると、それは木質になるのだ。

この理論や基礎技術は、1988年に完成している。理屈は極めて単純。

これまでは、リグニンを破壊してセルロースだけを取り出すことばかりしていた(主に製紙など)。それを反対にセルロースを破壊することでリグニンを取り出す。この際、セルロースは糖に分解され、リグニンはリグノフェノールという物質になる……というだけなのだ。試験管の中では、簡単に行える。

ところが、実用化がなかなか進まず、とうとう24年。今回もようやく実用化実験プラントである。実は日本のリグニン研究は50年以上も前から行われてきた。にもかかわらず、停滞していたのだから、かくも実用化とは難しいものなのか。

ただ、近年急速に進んでいる。舩岡教授の研究だけでなく、森林総研でもリグニンから高性能活性炭素繊維の製造に成功している。北大もリグニンを炭素繊維に変換する技術を確立したと発表しているし、産学共同でリグニンよりエポキシ樹脂を開発も行われた。

数年後には、リグニン産業が生まれ、大きく成長するかもしれない。

私がリグニン産業に期待するのは、どう考えても木材の高付加価値需要は伸びないからである。

昔は、森林資源が逼迫すれば価格が上がるのではないか、と期待する気持ちもあったのだが、結果的に価格が上がれば木材を使わない方向に世情は動く。そして代替素材(金属や合成樹脂など)に移るだけ……という経済事情が透けて見えてきた。

人間の木に対する思いなんてのは、その程度なのだ。

わずかに意匠分野能分野に望みを託すが、これとて需要規模がどれほどあるかわからない。かといって、木材以外の需要も、エネルギー利用はマテリアル以上に安価だし、アロマなどに利用できる樹脂なども隙間需要しか生み出せないだろう。

となると、薬品分野で、樹液から癌の特効薬でもつくるしかないのか……と冗談半分に考えていたが、隠れた森林資源にリグニンがあることを思い出した。

考えてみれば、木材の強度を保つのもリグニンなら、エネルギーにしてもセルロースよりベンゼン核を持つリグニンの方が高い。量的には7対3だが、果たして燃焼したときのエネルギー量はセルロースとリグニンのどちらが高いか。

もともと私は、木材は小さく分解することで用途を増やしてきたと考えている。大径木から小径木へ。無垢材から寄木・集成材へ。さらにチップからのパーティクルボード、木粉からのファイバーボートへ。となると、次は分子レベルしかないでしょう(笑)。

リグノフェノールからはプラスチックが作れるし、先に記した通りセルロースと再結合させて人工木材も誕生させられる。またセルロースを糖に変えれば、食料品はもちろん、発酵させてエタノールにもできる。

もちろんコストの壁などもあるが、付加価値の高い商品づくりにつなげる一筋の光明を感じるのである。

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森林資源」カテゴリの記事

コメント

とても興味深いです。人工林の管理手法そのものも大きく変わりますね。勉強したいと思います。

これが主流になると、木粉を生産するのが林業になったりして……。

ちょっと寂しいですが、しっかり棲み分けすれば安定した産業になると思います。実用化を急いでほしいですね。

鋭いご指摘です。

リグニン製品の実用化は欧州と競争ですよ。ここにはいくら公費をつぎ込んでも過ぎることはないと思います。特にリグニン接着剤が実用化されたら、集成材の考え方ががらっと変わるかも。

この手の研究に、イマイチ国などの動きが鈍いのは、林業と化学産業が縦割り省庁のせいかな、と思ったりしています。

もし欧米や中国が先に実用化して、パテント抑えられたら、外資が森を買収するより痛恨だと思いますけどね(^^;)。

これが実用化出来れば色々なものを木質に
置き換えられますね。
木→プラ→木という移り変わりも夢ではない
かもしれませんね。

石炭化学という分野があったと思いました
石炭も高分子化合物なので原料にしようという話だったような
そっちの技術とかも援用できないんでしょうか?

そして石炭化学、石油化学に次いで、木質(植物)化学の時代が?
そうすると製紙工場を核としたコンビナートが各地に…

抗がん剤は樹木ではタイセイヨウイチイを原料としたタキサン系抗がん剤があったと思います
古くはアスピリン?
そのうち抗菌剤が出てきたりしないかな?
その分野でも薬品候補の化学物質データベースの整備はアメリカが進んでいたと…
ゲノム解析でも中国に後れを取ってますし…

日本はシードがあってもシステマティックに大規模に展開するところでつまずく例が多いような気がします…残念


石炭も石油も、そしてバイオマスも基本は同じ炭素化合物ですから。

ただ、理論面は完成しているのに、実用化にこれほど手間取るとは思いませんでした。単にコスト面で参入企業がないのか(国も興味を示さず、資金を投入しないのか)、それとも見えない技術の壁があるのか……。

それにしても、日本は遺伝子資源に関して、まったくオープンなのは問題です。日本の生物資源は何を採集してもOK状態ですからね。各国が神経質になっているのに。。。

里山保全活動に参加しています。
このような技術が確立すれば活動がより生産的になりますね。

どうもです。なかなか実用化のニュースが飛び込んできません(^^;)が、期待しましょう。里山の雑木も、リグニン資源になるかもしれませんよ。

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