諸塚村どんぐり材プロジェクト
宮崎県の諸塚村では、どんぐり材プロジェクトを進めているそうだ。
http://www.foejapan.org/forest/morotsuka/
これは、どんぐりの木、つまりコナラの材を利用した家具や木工品づくりの計画である。もともとは、シイタケ原木にできなくなったような太くなりすぎたコナラの木を利用しようという考えから始まったようである。
ちょっと、この話題は私には懐かしい。かつて訪れた諸塚村はシイタケづくりが盛んで、そのためのコナラ林も豊富にあるからなあ……というだけでない。実は、私にとって、この発想をかなり古くから温めてきたからだ。
振り返れば2005年発行の『だれが日本の「森」を殺すのか』の一節に、雑木を宝の山にする方法として、太くなりすぎたコナラやクヌギなどを木工材として活かせないか触れている。その前から取材を重ね、雑誌にも発表していたから、おそらく02~03年頃から、この可能性を追跡していたのだろう。
ようするに、木工の世界では広葉樹材を多用するが、国産の広葉樹材は底を尽きつつある。しかし、それはケヤキ材やミズナラ材などに固執するからで、今は未利用の木材があるではないか、という主張だった。
すでに大分のアトリエときデザイン研究所では、雑木の器類を製造していたし、技術的には不可能ではないのだ。
実は雑誌でコナラ材は木工に使えないのか?と呼びかけて研究データを募集したこともある。すると、連絡くれた人がいるんですねえ。その時は岐阜県生活科学研究所で実験したことを教わり、論文も送ってもらったはず。
また香川県でも雑木の木材利用の研究をしていた。こちらはサクラやアベマキとかが登場していた記憶があるが……資料をひっくり返せば出てくるだろう。
それからブログだったか何かで書いて、実際に取り組んでいる人からメールもいただいた。家具作家の中にはコナラ材で挑戦している人もいたのである。
そういや、昨年の北海道のトークショーで会場からの質問で、木工をやっているが300年もののミズナラ材が手に入らなくて、と言われて同じことを応えたなあ。実は、北海道産ミズナラ材としてけ海外に輸出している中にコナラ材が混じっていることを私は聞いていたのだよ。
コナラ材は、ミズナラよりは硬くて使いづらいそうだが、使えないわけではないのである。むしろ特性を活かせば優良材になる。
が、なかなか普及しない。
やっばりなれぬ材で木工をしたがらない職人気質と、コナラ材の大量安定供給がおぼつかないからだろうか。
また、ワイスワイスという家具メーカーともつきあいがあるのだが、そこが国産材で家具づくりに乗り出し、ようやく見つけたのが岩手のクリ材だという。そこで私は、コナラも使いましょうよ、と佐藤社長に言った記憶がある。その時は、まだクリ材の家具を始めたばかりで、すぐに別の材も、というわけには行かなかったようだ。(余談ながら、表参道の裏路地にあるワイスワイスのショールーム兼事務所は素敵だ。)
そうした忸怩たる思い? を持っていたところ、諸塚村やってくれました\(^o^)/。
しかも、組んでいるのがワイスワイスではないか(笑)。
さらに言えば、ワイスワイスの座談会で組んだFoE Japanの中澤 健一氏も登場しているではないか。
もっとも、まだこれは計画レベルで商業ベースには乗っていないようだ。村が乗り出しているのだから、当面の材の安定供給はできるだろうし、ワイスワイスも加工技術を磨いたはずだ。あとは、売れるか否か。ここが問われている。
クリ材は好調のようだし、コナラ材は私の机の上にも置いているが、撫で回すと気色いい。放射線状の木目も美しいし。
そういや福島県は日本一のシイタケ原木の産地だったが、セシウム問題で出荷できなくなっている。このまま10年も続けば、コナラは太くなってシイタケ向きではなくなるだろう。
その時は木工材料として売り出す可能性を探ってほしい。その頃にはセシウムも薄まって問題なくなっているだろう(そもそも食べ物のシイタケと違って家具は食べないよ)。シイタケ原木より木工材料の方が高く売れるはず。災い転じて福となす、だ。
福島県の木工職人も10年後をめざして腕を磨いてくれ。コナラ家具の一大産地になるチャンスだ。
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