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2012/06/05

檜皮の需要と供給

奈良のローカルニュースをテレビでぼんやり聞いていたら、檜皮のことを取り上げていた。

春日大社の社殿の20年に1度修理する「式年造替」を行うはずが、傷んだ檜皮を葺き代えたいが、肝心の檜皮が足りないそうだ。もともとストックしていたものは、昨年の台風で傷んだ広島の厳島神社の修繕に回してしまったらしい。

それで、奈良公園内のヒノキから調達できないか調査を始めたという。奈良公園と言っても、そこには春日山原始林があるわけで、樹齢100年を越えるヒノキもある。(調査では約300本あったそうだ。)そこから檜皮を取ることを考えたのだ。文化財用だから、法律的には問題ないらしい。

考えてみれば、春日大社の屋根を葺くのだから地元の森から調達するのが本来の形だ。極めて健全だろう。

ただ、そのニュースでびっくりしたのは、全国の国宝・重要文化財の檜皮葺きに必要な量は、なんと11万トンだというのだ。檜皮11万トン!

120年もののヒノキから檜皮を剥ぐと、約6キロだというから何本分になるか。

単純計算だと1833万3333本のヒノキ(120年もの!)が必要だ。

何年に一回葺き代えるか。こうした神社のように20年に1度とまでは言わないが、檜皮の傷みを考えると、仮に40年にしておこう。

すると年間約45万8000本のヒノキから檜皮を収穫しなければならない。これを面積に置き換えると,ざっと1000ヘクタール以上になるだろうな。

檜皮を剥げる樹齢を60年~120年としても、多くの山では檜皮を収穫する伝統もないし、技術もない。檜皮は立ち木から剥いて、その木を枯らすわけではないが、嫌がる山主も多い。

ほとんど絶望的になる。

しかし、やりようによっては、よい産物になると思うがなあ。檜皮専業の林業なんてのは起こせないか。伝統的建造物だけでなく、間伐材など若木からも収穫して今風の商品を開発すれば、木材売るより高くなるような気がする。

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コメント

田中様
お世話になります。
檜皮を少しでも耐久性を上げる方法も考えて方が現実的な木がしました。

たしかにそうですねえ。
もっとも、檜皮に何かコーティングしたりするのは、伝統が許さないのかなあ。

檜皮にこっそり目をつけていますw
剥ぐ技術が無いのが当面の問題ですw

檜皮師を養成する学校があると聞きましたが……。

 和歌山の森林組合の中で京都の日吉森林組合ばりにガンガンやっている龍神やかつらぎ町よりも、設立の経緯上、特殊化している-ゆえに県の林政の視覚にも入っていない-高野町森林組合が、かえって生き残りそうな気がするのは、この「檜皮」ゆえ。高野山とその寺社(檜皮の需要膨大)の維持のためだけにある組合だからなぁ。

 比叡山延暦寺や高野山金剛峰寺、あるいは伊勢神宮のように、寺社が林業経営する、しなきゃならない時代-江戸以前に逆戻りw-が来るのかな、と。

 檜皮は必ずしも立木から採取するべきものでなく、伐木からも採取できます(吉野で子どもの頃、祖父から小遣い貰うのに杉皮剥きとともにやりました)。取れる品質と量が檜皮採取専用の立木に較べ、非常に劣るだけで。
 牛畜産が盛ん=製皮が盛んなアメリカ中南部では、クローム皮なめし以前は、タンニン皮なめしのタンニン採取-樹皮だけが必要-のためだけに伐採され、樹皮をはがれた木が現地に放置されたハゲ山だらけだったそうです。
 日本でもこれだけ放置ヒノキ植林がある現在ですから、そんな山がそこらに少々あってもいいんじゃないでしょうか。(まあ、情緒的な地元人&都会の自然保護家がうるさそうですが)

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