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森と林業と田舎の本

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2012/07/02

エメンタールの択伐林1

このままスイスに関しては、無駄な思い出話に終始したら、皆さん怒りだすだろうか、なんて考えてしまった(^^;)。

ま、じわじわ執筆しようと思っているのだが、あんまり引っ張るのもナンなので、初っぱなにハイライトを。

それはエメンタールの択伐林(プレンターワルト)である。英語では、The Emmental Farm Forestとなっている。メーラーの唱えた恒続林の一種でもあるだろう。
ここでメーラーの「もっとも美しき森は、またもっとも収穫多き森である」という言葉を思い出そう。

この森林は、ベルン州の高地エメンタール地方の約20万ヘクタールの森だ。スイスでは降水量の多い土地でもあり、もともと植物の生育のよい土地のようだが、かつては一斉造林と過剰伐採が行われ荒れていたそうである。それを1904年に択伐施業に転換する。(現地で説明してくれたフォレスターによると、1905年)

ここで択伐施業というのは、いわば天然林施業である。人が手を加えつつ、もっとも自然な状態の森を作る施業と思えばいいだろう。一斉林とは対局の多様性の高い森づくりをめざし、樹木草木動物などのバランスを重視する。伐採は択伐で少量ずつ行うので、日本には択伐施業林として伝わった。

それはまるで天然林のごとくの林相をしているので、戦前視察した日本人は、これぞ最高の林業だと絶賛した。

その点については、スイス林業は世界一?の項目でも書いたが、スイス全域ではなく、幾つかの地域で行われていたものだった。ただ視察者にとっては、やはり感激ものであったようだ。

私は今から約70年前の記録を読んでから視察に臨んだわけだが、案内してくださった郡のフォレスターの説明が、戦前のものと結構似通っていたので、感心? してしまった。基本的な択伐施業の方法は変わっていないのである。

……と書きつつ、その技術については割愛(^o^)。

幾箇所か森の中を案内されて、現在択伐を進めて生物多様性を高めようとしているところと、ほぼ完成した状態のところなどを見せていただいた。

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モミとトウヒが優占する森である。ブナもある。この3種が大半。

    


……残念ながら、森としては感激しなかった。美しいとは思えなかった。

もちろん、見た目はほぼ天然林である。これを人の手でつくり上げたのか、という思いは持てた。

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こんな切り株もあり、まったく人の手を入れないのではなく、択伐として人の関与があり、木材を収穫しつつ、こんな森づくりができる、という意味の感心もした。



      

だけど、森としては、そんなに美しいとは感じなかった。これは個人的感想であることは言うまでもないが、日本の森、さらには熱帯の森を見てきて、そこにあふれる生物多様性を目にした眼には、全然多様性を感じなかったのである。いや、貧弱にさえ感じた。

やはり樹木の大半がモミ、トウヒ、ブナしかないということが大きい。灌木だってそんなになかった。草は? よくわからないが、日本の雑草とは大違いの品行方正さ(笑)を感じた。

なぜ、そんなに多様性が低いのか?

これは当たり前なのだ。だって、スイスには、いやヨーロッパにはそんなに植物の種数は多くないからである。

聞いたところ、スイス全土で高木樹木の種類は26種類しかないのだ! ヨーロッパ全土に広げても、せいぜい100種くらいか。低木を加えても、そんなに増えない。せいぜい2倍くらいかなあ。草本も似たようなものだろう。

これは、ヨーロッパが氷河に覆われて、多くが絶滅したからだ。温暖期に入っても、アルプスに阻まれて、南下した植物は十分に北上できなかった。

これって、日本の10分の1以下だろう。日本では、樹木と言えば1000種以上あるのが当たり前だ。低木、草本を加えたら数千種。熱帯アジアならそれがまた10倍以上に膨れ上がる。そんな多様性は、ヨーロッパ、スイスでは望むべくもないのである。

むしろ日本の人工林なら、かつてスギとヒノキを混植していたし、すぐに広葉樹が侵入するから似た森があるように思う。

だが、フォレスターの説明を聞いていると、この森の意義は、まったく違うところにあることに気づく。恒続林は美しい、という思い込みを崩されるのである。 

以下、またいつか(^o^)

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森から見た「スイス」」カテゴリの記事

コメント

こちらに来てから森林について学び始めましたが、必要な樹種は1時間で覚えられました。European Beech, European Oak, Norway Spruceの3つが柱で、そこにScots pine, Douglas fir, Larch, Birchが混ざる感じ。スイスでもドイツでもカナダでもいろいろな森林経営を比較対照して、いいとこどりしていけばよい森林経営が生まれるのではと思っています。そういうのは、日本は得意なはずですし。

もし可能なら、ヨーロッパ全土で何種類の樹木・植物が存在するのか、調べて教えてくださいね。

種が少なければ、森林生態系の動きも、人智で把握しやすくなります。日本や熱帯では、かなり難しいですが。

ヨーロッパ全体となるとわかりませんが、ドイツ国内に絞っていえば、72種類の樹木が存在し、うち33種類が商業用に用いられているそうです(German Timber Promotion Fund, 2007)。中欧諸国の状況は似たり寄ったりだと思います。

ありがとうございます。ドイツで72種ですか。

私は、スイスはアルプス南部から地中海性の樹木が侵入して、多少増えるのではないかと想像していたのですが、低木を合わせても41種と聞きました。はるかに少ないですね。
この少なさが、種の絶滅に対する感度の違いとなるのかもしれません。

もっとも、ヨーロッパの植生の貧弱という点ではドングリの背比べですが。

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