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2012/08/22

現場に赴くこと

シリアで戦場ジャーナリストの山本美香さんが銃撃されて亡くなった。連日、このニュースが報道されている。おかげでシリア情勢に日本人の目が向くことになったのは、山本さんとしては最後の仕事の成果だろう。

新聞記事や報道番組では、なぜ戦場に赴くのか、ということが何回も取り上げられていた。危険な戦場には行かないことになっているテレビ局や新聞社の記者が論じるのは、ちょっと白々しいが……。

とはいえ、取材者は、常に現場に向かうのが基本である。現場を見て、真実を報道する、ことになっている。ちょっとありきたりでクサイ。

もちろん、私は戦場に行ったことはない。

ただ、一歩手前の東チモールには、足を向けた。1986年のことである。当時、東チモールはポルトガルの植民地だったが、本国の政変を受けて独立準備を進めていた。そこにインドネシアが侵攻して併合したのである。東チモールの政治組織フレテリンは、ゲリラ戦で抵抗を続けていた。その占領に伴う死者は、一節によると15万人とも言われた。
しかし、情報封鎖が強く、ほとんど内情がもれてこない。また日本を始めとするマスコミも、興味を示そうとしていなかった。

だから、どんな現場か知るために潜入しようと思ったのである。だが外国人立入禁止だし、ジャーナリストも何人か捕まって、インドネシア軍に処刑されていた。それだけに、結構悲壮感を持っていたのであるが……その顛末は、拙著『チモール 知られざる虐殺の島』 をお読みいただきたいが、少し明かすと、二度に渡って軍人に見つかって追い払われた。だが逮捕されないように手練手管を尽くしつつ、撮影フィルムを取り上げられる時に、真新しいフィルムとすり替えて渡したり、よく知らないインドネシア語でとうとうと演説ぶったり、なかなかスリリングであった(^o^)。

ここで、なぜ危険な現場に行きたがるのか、という問いに対する私の解答は、知らないことを知りたいから、ということになる。チモールに行く前にソロモン・ニューギニアで怪獣のような未知動物幻の大洞窟を探しに行ったのと理由は同じだ。

もっとも私は、闇雲に現場へ出よう、という取材、もしくは研究は感心しない。出ても、知らない部分を知ることもできず、未知の部分の発見さえできず、わからない部分を知ろうともしないのなら、現場に出ても仕方がない。
目の前に未知の事象があっても、それに気づかぬ感性とか、新しい事実を知ったのに素直に受け入れず、自らの見解を修正するどころか既成の枠組にはめ込もうとするのなら、現場に出ても無駄ではないか、と思う。

私は現場に通っているから、と自慢されても、その結果唱える意見が正しいとは限らない。
現場に通った回数を競うよりも、通うのはその半分でもいいから、残りは考え分析する時間も必要だ。

現場に出るために、自らの感受性を高めるとともに心の柔軟性を育てておきたい。

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コメント

山本さんのご冥福をお祈りいたします。

以前、司馬遼太郎さんが「自分が色んな資料や文献から得た知識をもって現場を訪れたとき、自分の想像を裏切られ 目からうろこが落ちる瞬間が一番好きだ」…みたいなことをどこかで書かれていたのを思い出しました。

知的好奇心 物事を素直に受け止める感性 分析 →(フィルタリング・翻訳)→主張→行動

後輩を連れていくときに、心します。
着眼点の基本ぐらいはレクチャするようにします。
ただ、森林土壌、作業道の工法がいいのか悪いのか、がイマイチよくわからないんですよね。降雨中や雨上がりに行っても・・・・。
実際にやった人と一緒に行って、意見交換するっていうのが一番いいのかもしれませんね。
まず、やっている人に考え方ややったことを口で語ってもらう。状況を見ながら。そして、当方の疑問点をぶつけてみる。
その繰り返しが新しい現場に役に立って行くのかもしれません。
ああ、鋭い突っ込みが出来るようになりたいなあ。そしたら、現場に行くのももっと楽しくなるのになあ。

目からウロコが落ちる瞬間が好きなんですが、なかには嫌いな人もいて、ウロコを入れ直したり、断固落とさないようにしたり……。

多分、現場に通う意味は、知識を得るのではなく、感じることだと思います。驚きもあれば違和感もある。感動もあるかもしれない。それを素直に受け入れ咀嚼したらいいんですけどね。

現場に行って、全部が国や県や行政の責任とかそんな話に終始されることだってあります。
何もしていないのに怒っちゃっている人を同じ地域の人がなだめたり・・・。
そういう「ドラマ人間模様」も・・・・

現場は、直接「ドラマを見る場所」ですよ(^o^)。テレビでも映画でもなく、舞台かな。
ときに冷やかに、ときに熱く、鑑賞してください。

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