木曽檜は抜伐施業
たまたま見ていた林業の本。
そこの写真に「ヒノキの天然更新」と書かれていた。木曽である。
そういやそうだ。木曽檜は、天然更新で択伐施業を行っているのだった。
正確に言えば、350年ほど前に木曽檜はほとんど伐られてしまった。その後、尾張藩が植林を試みるが、うまくいかない。薄い土壌とクマザサの多い土地に、植林は向いていないのだ。そこで択伐と天然更新に切り替えるのだった。おかげで木曽檜は復活する。
結果論だが、択伐で日射量を調整することで、ヒノキ林の下から生えて遷移を勧めるアスナロの生長を抑えることができる。それがヒノキの生育も助けたのだろう。
日本では、択伐は難しい、天然更新は無理、という一方的な見方は、歴史が修正してくれる。
それはともかく、日本各地にはさまざまな施業法がある。気候、地形、土壌。風土の多彩さが多彩な林業技術を生み出したのだろう。
本当は、それらの技術を拾い上げるだけで、多彩…というより多くの山の多くの複雑な条件で林業を行うことに幅広く対応できるはずだと思うのだが。
残念ながら、その多彩な技術は体系だてたり後継者を養成するシステムには発展させられなかった。職人芸に留まり、見て覚えろ盗んで覚えろ体験して覚えろ、あるいは秘伝という次元に陥り広がらなかったのだ。
吉野だ京の北山だ尾鷲だ智頭、山武……といった有名どころ以外では、施業技術が地域で共有されて根付くことは意外と少なく、山主ごとに違ったりする。
だから日本の林業は事業ではなく、家業ではないかと思ってしまう。
ついでに言えば、家業の秘伝(^o^)の技術を体系化して、世間に多彩な技術を伝え、山の条件にあった施業法を指導するのも林学の仕事だと思う。だが、それをさぼってきた、というより、むしろ多様性をつぶし技術の画一化に邁進してきたのも、日本の林学の姿だなあ。
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