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2012/08/29

林業と漆と紙漉きと養蚕と

ちょっと漆掻きを見に行ってきた。

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今は、ウルシノキから樹液を採取する最盛期。いや、もう終盤かな。一応、10月まで続くそうだが。





   

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樹皮を刃物で掻くと、じわりとにじみ出てくる樹液。これが漆だ。最初は白いが、だんだん透明になる。そして参加して黒くなっていく。そうなる前に、一滴ずつかき集める作業を続ける。

かつて全国にの産地があり、また紙漉きも行われていた。その土地を見ると、案外、伝統的な林業地と重なっていることに気づく。

たとえは吉野は林業ばかりが有名だが、実は今も和紙の里でもある。また、かつては吉野塗りという漆芸で知られていた。現在は完全に姿を消して、作品自体がほとんど残っていない有り様だが、非常にレベルが高かったと伝えられる。

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左は徳島の漆、右が岩手の漆を塗ったもの。生地は同じ木の器だし、塗る技法や回数もまったく同じなのだが、風合いがまるで違う。色も違う。

漆は、栽培地域やその木の太さ(樹齢)、掻き手の技術、その年の天候、季節……などによって、まったく様子が変わるのだそうだ。

おそらく木材生産と紙漉き、漆にはつながりがあるのだろう。考えてみれば、スギやヒノキなどの高木の下にコウゾやミツマタなど和紙原料となる低木を植えることは、広く行われていた。また紙漉きに欠かせない大量の水は、豊富な河川の存在を示しており、筏流しによる木材搬送にもつながるのだろう。

漆は、直接のつながりは見えないが、山間部の作物としては手間要らずで育つし、漆は高く売れるから貴重な資源だろう。

が、明治以降、養蚕が入ってくる。日本の養蚕は昔からあったが、レベルは高くなかった。そこに西洋の養蚕技術が導入され、殖産興業で生糸生産が広がる。

養蚕はクワが欠かせない。すると、漆畑が桑畑に切り換えられていくのである。つまり、並立せずに、産業の移り変わりがあるわけだ。

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こんな桑畑が、最盛期に、全国77万ヘクタールもあったという。日本の植生の何%かが、クワだったのだ。そこにコウゾ・ミツマタ、ウルシなどを加えたら、すごい面積だ。

    

そして、こんな風にカイコを育てるわけだ。

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生糸生産には、意外と重要なのは、水である。繭からの糸繰りなどに大量の清浄な水を消費する産業だ。これも山里に向いていたのかもしれない。

森林資源、あるいは山村産業とは、木材生産に加えてコウゾ・ミツマタ、ウルシ、クワの栽培植物の盛衰を時間軸に捉えるべきかもしれない。

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コメント

コウゾは九州ではカジノキといって、うちの近くでも戦後すぐまでは皮を剥いで出荷していたそうです。養蚕も盛んだったから、桑畑もたくさんあったはずで、今とは相当景色が違うのでしょうね。。。

カジノキは実がうまくて鳥が良く食うらしく、あちこちに木が生えています。和紙業界ではコウゾ(九州以外産)とカジノキ(九州産)は性質が違うので別名で流通しているという話でした。

コウゾが産地によって性質が違うというのは面白いですね。

里山の植生が、ほんの少し前と随分違っているという事実は、もっと気をつけないといけませんね。「太古から続いている自然」と思っている人もいますから。

水俣のように山が低いと、一番奥の分水嶺まで昔から人手が入っていたりしますし、里山の風景も本来は15年に1回伐採するような若い森ですからね。

ところで、皆伐後に生育した林令90年の自然林(国有林)でカシノナガキクイムシらしき木の粉を発見。。。私が担当者だったらどうするか、思案中です。

あの自然林にカシナガですか。。。たしかにカシやシイの大木はありましたね。木粉だけでなく、穴もありましたか? ほかのキクイムシもいますから。

とりあえず調査ですね。カシナガ被害も環境教育にのネタになりますよ。

 かなり前、NHKで見たのですが、輪島塗の最高級品の漆は、塗る前に不純物を取り除くため和紙で濾します。その和紙は、吉野紙(線維が入りまくって硬くてゴツくて少し黄色いやつです。私が子どもの頃の吉野の家の障子紙は、どこもあれだったなぁ)じゃないとダメだそうです。しかし、生産者がもう一軒しか残ってない。
 そして下地を磨く炭は、朴の木の磨き炭を使うのですが、満足できる品質の朴磨き炭を作れるのは、福井県の炭焼きのジイサンただひとり。(若い弟子が入ったのでなんとかなりそう、という感じでした)
 塗り筆は琵琶湖湖畔のアシ原のカヤネズミの毛筆を使うのですが、ヨシズ製造業者が中国産に押されて廃業しまくり、結果アシ原を刈るなどの手入れが出来なくなり、カヤネズミが減少。将来手に入らなくなるので、中国の田舎の“食用養殖ネズミ(笑)”の毛で代用できないか検討中、そんな番組-山村や里山の危機=伝統工業の危機-でした。

漆芸の下地を磨く木炭(研ぎ炭)の最高級は、朴炭ではなく、アブラギリ炭ですね。以前、取材したら1キロ2万円した。

人間国宝的な炭焼きじいさんのところに弟子入りした人が今は焼いていますよ。弟子から脱落した人も焼いているけど、品質は……(笑)。という評判です。

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