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2012/08/11

アプリ「スピリット オブ フォレスター」

先のセミナーで出席者からもらったDVDを見た。

これは、森林の集約化のための新しい営業ツールを紹介するもの。名付けて「スピリット オブ フォレスター」。フォレスターの魂、というわけだ。

内容は、まず日吉町森林組合の森林プランのような用紙を以て森林所有者のところに営業をかける職員が登場。いろいろ説明するが、

「(現況の)写真は小さいのが1枚だけか。これじゃわからんのう」と文句を言われ、

「字も小さくて読めないよ」と突っ込まれ、

「A材B材C材? それって何? 間伐と利用間伐はどう違うの」と専門用語にクレーム。

そして「ほかの案はないの? 一種類だけ示してオーケーしてくれと言われてもねえ……」とあっさり却下。

これを繰り返した営業マンは、がっくりしたのであった。



そこで登場する新しい営業スタイル。ネクタイ締めた男とスーツの女性が組になり、いかにも都会風営業スタイル。そして取り出すのはiPad

タブレット(iPad)の画面で説明するのだ。

もちろん所有者の森林の現況も何枚もの写真で示し、地図でも確認。そして間伐率30%なら、伐った後はこんな姿になる! というサンプル画像も映し出す。さらに5年後の姿も。

それでは手取りが6万円にしかならないと所有者が不満の場合、伐採する木を劣性木だけでなく、太めも混ぜましょうかと……画面で数値を変えると、あっという間に計算されて手取り8万円にできます、というわけだ。さらに仮契約さえ、画面上にサインしてOK。

なるほど、iPadは、こうした営業ツールになるわけね。そして、こんなアプリも作られて売り出し中ということか。

しかし、実際のアプリには現況なりサンプルなり、結構事前調査やデータの準備に力を入れなくてはならないし、営業トークプレゼン力自体も鍛えないといけないだろうな。つまり、使いこなす地力を身につける必要がある。今の森林組合には、そこが足りないのではないか。

フォレスターの魂は、森林コミュニケーション力にあり、である。

日本より欧米で売れそうだ(^o^)。

もっとも、林業関係者が当たり前に、この程度のツールを扱えないと本来はいけないのだが。

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コメント

生保とかのノートパソコンを使ってた営業がiPadに入れ替わってると思います
アプリ開発など、関連業界に波及効果があると言いたいのでしょうが、1件あたりの取引金額、それから何よりもこうした営業(する方も、される方も)に慣れてない業界、ということでハードルは高いと思いますけど、導入を進めたい人たちはどういう経済的裏付けがあるのか、聞いてみたいです

経済的裏付けは知りませんが、集約化集約化と叫ばれているのに、なかなか進まない現状に悩んでいる森林組合を救う?のが目的ではないでしょうか。
イマドキ、パソコンやタブレットは山村の人も使うから、モチベーションさえあれば興味を示すでしょう。ただ目標通りに使いこなせるかどうかは、、、ですが。

 うちの組合の職員は「任意のサイズでファイルをプリントアウトする」事すら出来ない人がいます。しかも30代。
(今日は、CADで作成した図面を「あとはプリントアウトするだけです。“誰でもできる簡単なこと”ですから、県事務所へ提出するサイズでプリントアウトしてくださいね。」と言って、事務所に放置して帰宅しました。(なぜか頭抱えてました(笑))
 昨日は提出画像(写真)データを「(予備に何枚も撮っているので、わざわざ「良いものを選んでくださいね。」と言ったのに、写真屋に出して全部現像し、机に広げて選んでいました。(しかも県は、「写真で提出する必要はない」と言ってるにもかかわらず…)
 まあ、彼はADDで特別なのですが、近隣の森林組合事務員もたいしてレベルが変わらないのです。(両隣の組合職員も、同じ事をしていますし)。私は入ったときから「森林組合=養護施設」「使い物にならない“村落貴族の息子”の保護施設」だと思っているので、10年も契約職員で、楽しんでおりますが…そろそろ潰れます、確実に。
 多くの森林組合にはiPadどころか、メソポタミアの粘土板で十分なレベルだと思います。

 今、組合から電話がかかってきて「月曜日の朝(予定の仕事の手を止めて)プリントアウトしてほしい」と電話がありました。予想通り(笑)。
 数年前、「間伐材を使用した土砂流出防止工」を県(和歌山)が推進したとき、その完成平面図面作成の際に「最もよく出来ているので参考にするように」と各組合に配布した資料が、隣の組合が作成した図面だったのですが…手書きどころか-それならまだましー、「手書きだとカッコ悪いので」印鑑屋で各“部品印(笑)”を作り、それを紙にポンポン押して作成したシロモノ(笑)。形状も無視して、長さ以外の情報が一切入っていない図面。
 そのとき現場班長だった私は、あまりにアホらしいのでCADで作成-本来、事務方の仕事なんですが-しました。それを県事務所に提出したところ、大いに驚かれ感心されたそうです。
 多くの森林組合とは、そういうレベルの事業体です。

 事務能力の「メソポタミア粘土板レベル」は、和歌山の森林組合だけかと思えば、あの吉野の組合ですら(モロに言うと吉野中央森林組合)、数年前に「合併に当って組合員権の現状確認と、新組合員証書を発行をしたいので、旧組合員証書を同封して返信してください。」と、書類を送ってきたので、祖父から相続した組合員券とその旨記入した書類を送り返したのですが、なしのつぶて。そのくせ、「山林の経営依託をお願いします」だの「『経営基本計画』というのが始まるので、説明会するからみんな集まれ」という書類だけは送ってきます。もちろんアホらしいので無視しております。
 地元のジジババ騙し&馴れ合い会に行く暇なんてありませんから(笑)。

 『経営基本計画』→『森林経営計画』でした。ダラダラ書いて失礼しました。ダラダラついでに書かせていただきます。すみません。
 吉野中央森林組合は説明会を開くだけマシですけどね。…三回開くのにすべて“平日”なのが、彼らの意図を感じますが。深読みしすぎでしょうか(笑)。ウチの組合は考えてもいなかった(近隣組合も)ようで、たまたま話しに出したところ、「それを是非持ってきてくれ」と言われ持って行きました。たいしたことは書いていないんですが。
 私は20社ほどの会社の株を所有しているので、普通の人より株主総会、IR資料に目を通す機会が多い方だと思うのですが、そこいらの森林組合の総会資料等とそれらを比べてしまうと、組合のものは“児戯に等しい”としか言いようがありません。まあ、上場企業レベルのものを作れとは思いませんが、せめて「組合が今、どういう方向性で現在なにをどうやっているか」程度はわかる資料ぐらいは作れないものかと…
 先日、地元集落山林の『森林経営計画』作成の原資料を作成しました。そのために「(3週間ほど)一人で自由に好きなだけ山を歩き回ってきてくれ。」という楽しい仕事をしました。
 そして、契約現業職員(+ヨソモノ)である私が、なぜか集落の山林所有者への説明&可能なら契約までもやることになっています(笑)。そこで夏祭の飲み会で、オイヤン達(=山林所有者)に「近いうちにお宅に伺うかもしれません。」と根回しすると、「お前と○○か××(全員Iターン職員)で来い。(正規事務職員で地元民の)あいつらは連れてくるな。話がおかしくなる。」と言われました。
 これが、全国の多くの森林組合の現状かと思います。少なくても和歌山では(一部の有名組合を除いて)そうです。

なかなか手厳しい現状を紹介してくれましたねえ。
まあ、都会でもパソコン嫌いはいるし、山村にもスマホからPCまで駆使する人もいます。田舎でプログのポータルサイトを立ち上げた村も。

とはいえ、林業現場が問題だらけなのはご指摘のとおり。それを、愛情を持って改革を進めるのもIターンならではの役割ではないですか。

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