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森と林業の本

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2012/08/02

今こそ、お雇い外国林業人を

スイスの製材複合施設を訪れたときのこと。

案内してくださった工場の人が、雑談で日本の森林について聞かれた。向こうにとっては、日本は工業国であり、あわよくばスイスの木材および木材商品を輸入してくれると思ったようだ。

ところが答は、森林率は7割に迫り、使い切れぬほどの樹木が育っていることだった。すると彼らの反応は「おお、宝の山を抱えているのか!」

なんたって、スイスの森林率は30%前後だ。しかも十分な木材生産が成されているとは言えない。本当は夏でも冬でも安定して木材を出してほしいのに、全然出てこない……のだから。

だが、日本の林業の苦境を聞くと、「なぜ?」である。スイスにも日本と同じような産業構造の変化はあったが、構造改革して現在にいたっているのに、日本ではどうして旧態依然なのか

誰も応えないので、仕方なしに私が「補助金が出たからだ」と応えた。「苦しいときに補助金で支えたから、改革しなくてもよくなった」。

こう言うと、納得してくれた(笑)。



  

ところで、明治政府は、江戸時代からの産業構造を早く脱却するために、外国人を多く雇った。いわゆるお雇い外国人である。有名なところては、「少年よ、大志を抱け」のクラーク博士とか、砂防に尽くしたデ・レーケ、温泉博士として知られるベルツ、そのほか軍人とか、牧師で教育者は数多い。

実は林業界にも幾人かのお雇い外国人がいる。マイル。グラスマン。ホフマン。。。。

現在も、林業改革をしようと、多くの外国人フォレスターが招聘されている。が、所詮は数カ月しか滞在していないんだよね。そして全国を回って、その場で日本の林業現場を見ては「アドバイス」をする。

しかし、山の環境も歴史も違うのに、そんなその場限りでいいのか?

実は、主にドイツ式とやらのフォレスターに「アドバイス」されて、憤激している人はたくさんいる。私のところにもチクリ・メールが来る(^^;)。そりゃそうだ。欧米の経験をそのまま日本に適応するな、と言いたくもなるだろう。

こんな短期間ではなく(それも半端ではない経費をかけて)のではなく、はっきり1年2年と日本(できれば同じ地域)に滞在させて、がっつり日本の森林、日本の自然環境、日本の林業の歴史を学んでから、アドバイスさせたらどうだ。そして、技術ではなく、思想を教えてもらうべきだろう。研修受けるのは、現場の人ばかりではなく、トップの為政者・行政者・経営者であるべきだ。そして、その思想に基づいて、新しい日本式の林業を模索すべきではないのか……。

なんでも現場、現場というのではなく、林業の根幹を貫く思想を学び、それを日本の現場に融合させていくのが為政者・経営者の役割だろう。そうしたら、経済状況から林業が苦境にあったとき、安易な補助金投入なんて手段は取らなかったのてはないか。

なんか、改革方法を現場に丸投げ(それも欧米フォレスター任せ)するのは、仕事から逃げているような気がする。

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コメント

まったく同じこと考えつつ、どうしてやろうか、
どうしたら良い方向に行くか無い頭抱えて
ますw
とりあえずは、補助金なんかいらない、当た
り前の林業を微力ながら目指したいと思い
ます(まだ、持ち山なんてないですが・・・。)。

フォレスターではなく、学者を招いた方がいいかもしれませんね。学ぶべきは現場の技術よりも、森林と向き合う思想ですから。

あるいは地元の林業家の中から古い知恵を絞り出す。ただし、そのままでは使い物にならないから、エッセンスを現代に翻訳する人がいるなあ。でも、安上がり(~_~;)。

B3様 速水林業の研修会(今は森林再生システムになったかもしれませんが)に参加されてみてはいかがでしょうか。4,5日間だと思いました。今年は9月の初旬。もしかしたらまだ空きがあるかもしれません。その他、各地で短期の研修受け入れをやっているところ、研修を主催して募集しているところがあると思います。ネットで調べていけば、割と早くにヒットすると思います。

田中様
すいません。FBと混乱しておりました。
田中様のブログでした。上記投稿について、よろしければ削除をおねがいします。すいませんでした。

 最近同じ事をずっと考えてました。長期でなければ意味が無いし、本気で変えたいと思わなければ、何も変わりませんね。

学者、学生、実務家、様々なレベルでの国際交流を深めるのはいいことですね

短期的には、仰るように2年ぐらい招くのがいいでしょう
ただし、フォレスターぐらいになると家族がいるので、家族ごと日本に1年以上住むという条件はかなりハードルが高いと思います
また、家族を受け入れられる生活環境も大事でしょう

長期的には、日本の林業関係者が語学に堪能でないこと、人柄のいい人(かつ家族等の条件をクリアした人)を見極めることが課題でしょうか

海外の林学科に留学したい学生を支援するとか、社会人(現場関係者、学者)の長期留学・インターンを促進するための制度が必要と思います

ちょっと外れますが、中期的には日本の林業はシベリアとの相対関係が大事になると思うのですが、「シベリアの林業動向」みたいな解説って無いように思います

現役のフォレスターでなくてもいいと思いますよ。
だいたい明治の「お雇い外国人」も、本国では二流……もとい、主流を外れた人が多かったようですし。

それに、現場の技術を教えてもらうというより、森林・林業に対する思想を学ぶという意味では、学者や行政マンの方がいいのかもしれない。

鈴木様

別に読んでいて、ズレは感じませんが(^o^)。
最近、ブロクのコメントがFBにつくことが増えたなあ。分散すると、対応しづらいです。記録にも残りづらいし。

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