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本の紹介

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2012/09/29

書評『森の「恵み」は幻想か」

昨日に続いて水文学の研究者による森の本。

森の「恵み」は幻想か  蔵治光一郎著  化学同人刊

著者は、東京大学大学院の愛知演習林勤務。平易に書かれてあるし、日本の森と水害の歴史から書き起こすなど、『森林飽和』とも似通ったところもあるが、内容はかなり専門的だ。全体に森と水の関係を主軸に論じている。

まず森の働きを「機能」(サービス、恵み)と「作用」(メカニズム、機構)に分けて、人間の都合という観点が入っているかどうかを分けている。そのうえで、最近の研究の知見を紹介し、水と森の関わりを説明している。

一般に(というか私が)よく話す、「森は水を溜めない」とか「水を消費する」「水と土壌」などの問題も、これによると極めて細かな条件によって違いがあり、どちらとも言えないというのが正解らしい。

興味深い研究成果を紹介すると、樹冠遮断作用についての研究がある。降雨のうち6%くらいは地面に到達する前に森林の樹冠(枝葉、樹皮など)に留まっている結果が出た。調査によっては20%に達したこともあるという。これらは、土壌に浸透する前に蒸発してしまうらしい。土壌だけを見て、森林の水源涵養を論じていたら、穴があるかもしれない。

そのほか、「緑のダム」など水に関する論点が多いが、木材産業やエネルギー面からも森林を論じている。

一つ一つの内容を吟味して読んでいると、結構難しいので疲れる(^^;)が、全体を通して感じるのは、人の都合で森林(自然)を見るな、ということかもしれない。

あとがきで「自然は人間にとって好都合な機能を備えている」は、おとぎ話だと記している。これは私も如実に感じることである。森林に限らず、自然崇拝カルトに近いものがあり、必ずしも自然に任せておけば万事うまく行く、なんてことはない。
水だけでなく、最近は、放射能までEM菌が分解?してくれるとか、特殊な土壌が吸着して無化してくれるなんて言説が飛び交っている。

そんな信仰を打ち破る理論武装にも使えるだろう。

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コメント

分子レベルの化学反応ならまだしも、
原子レベルの核反応を、微生物の力でどうこうできる訳ないのは
自明の理だと思うんですが。
ナウシカの腐海じゃあるまいし。。。

トンデモ科学に騙される人、多いですね〜

腐海だって、無理です(笑)。腐海が分解するのは、放射能ではなくて、何らかの毒素(化学物質)という設定じゃないかな。

でも、多いですよ。万能の救世主を求める輩は。

こりゃ失敬。

腐海の設定まで熟知とは、さすが森林ジャーナリスト・・・。

そういや腐海は、森林ぽい……。今後、私の扱う分野に入れよう……なんて。

放射能の「分解」をめざすなら、やっぱ「コスモクリーナー」でしょ(~_~;)。どういう理論で消せるのか知りたいなあ。

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