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2012/09/14

都市林で林業を

土倉庄三郎の業績の一つに、奈良公園改良計画がある。

現在の奈良公園が設立されて、その維持管理と改良計画に庄三郎も参画したのだ。

奈良公園とは、県庁街に隣接……というより県庁がその中に取り込まれているようなものだが、その面積は500ヘクタールを越え、神社仏閣とその背後の山々も含まれる。春日山原始林のほか、若草山はもちろん、花山、芳山など広大な広さ。もちろん日本一である。

そして明治の奈良県は、公園内の材木を伐り出し、その収益で公園を維持管理しようと考えた。それに対して国や世間が反対した。伐採しては景観を破壊する、と主張したのである。そこで、庄三郎だけでなく、林業家や学者を交えた委員会をつくって、今後の管理の仕方を考えようとした。この当たり、現在でも役所が取りそうな手法だし、伐採に対する考え方の対立も今とよく似ている。

結果的に庄三郎らは現地調査し、荒れた部分に植林を行い、ここに吉野林業の見本林を作るとした。「人が乱伐というところがそうでなかったり、美しいというところが実は荒れていたりした」なんて報告書には載っている。
そこを改良して、100年生の人工林に仕立てようとしたのだ。そして222ヘクタールに植林を施した。そして毎年収入が得られるような計画をつくり上げたのだが……。

その森のほとんどは現在伐採されて、その後植林されることなく、雑木林-天然林にもどされている。

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春日山原始林。「原始林ぽさ」を売り物にしてはいるが、状態がよいとはとても言えない。生物多様性も、そんなに高くないだろう。
また人もあまり入らず、公園としての機能も中途半端。



 

都市に隣接した森林公園で林業を行うというと、今でも、林業家でも、え? と驚くだろう。公園はあくまで景観が第一であり、維持管理費を捻出するために木を伐るなんて、と専門家もいう。

実は生駒山にある大阪府立公園でも、その維持と管理を巡る会議で、学者は「(維持経費は)府が出すべきだ」と一刀両断(笑)。出ないから、なんとか利益を上げられるよう伐採木を薪にして売るとか提案しているのに……。

だが、世界の趨勢としては、都市林で林業を行うのは当たり前である。とくにヨーロッパでは、大都市近郊に1000ヘクタールから5000ヘクタールくらいの森林公園があるところが普通だ。ウィーンの森は有名だが、フランクフルト、ケルン、チューリッヒにアムステルダムにストックホルム……。こんな公園からすると、奈良公園なんか小さい(^^;)。

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チューリッヒ市内の公園。全部人工的に作られた森だが、景観に配慮するだけでなく、木材生産もしている。





 

そして、そこでは林業をやっているという。木材を伐り出して、販売する。その利益を公園を運営する助けとするのだ。言い換えると、市街地・住宅街のすぐ側で、林業を行っていて、みんなの目に止まるわけだ。

実は、都市林の林業は木材生産だけが目的ではない。むしろ景観を守るための伐採でもある。大木ばかりを重視せず、森林生態系を考え、樹齢のバランスや後継樹を育てるため、生物多様性を増やすための効果も大きな目的だ。

林業関係者にも、美しい景観をつくるための「剪定」的な伐採能力が必要とされる。

もし、奈良公園に庄三郎の描いた吉野式の美林を作り上げ、目の前で林業を展開していたら。教育効果は大きかっただろう。市民に林業を理解してもらうだけでなく、林業家にも景観重視の考え方や、多様性を作り出す管理法の研究・勉強になったに違いない。
もちろん、奈良を訪ねる数多くの観光客にもアピールできる。

奈良県人は新しいことが苦手?100年前に庄三郎が手がけたことの再現だ。極めて保守的だろう?

伐採、即自然破壊という短絡思考をうち破るとともに、伐採したら材積いくらで、どれだけ儲かるか、だけを頭に描く林業でもなくなる。そして、人が森に手を加えることの誇りを醸成したように思える。

現在の奈良公園、もう一度、改良計画作らないかな。シカのいる芝生ばかりではつまらない。壮大な森林造成計画も組み込み、森林環境教育と林業の場を作ると、奈良は世界に発信できるよ。

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コメント

生駒山から見渡すとほとんどが緑、というのが奈良ですよね!

生駒スカイラインの途中で大阪平野と奈良盆地が両方見渡せる地点がありますが、コンクリートジャングルと水田と森に囲まれた盆地とが好対照です。

歴史と文化だけではなく、田中さんおっしゃるように森林環境もセットでを世界に発信するというのはすばらしい考えだと思います。

だって法隆寺は世界最古の木造建築なんだし、飛鳥には世界初の当時としては世にも珍しい板葺の宮が建立されているんですからね。日本人はよほどの木好き民族だと思います。

奈良はたしかに緑は多いのだけど、奈良公園と森林を結びつけて見る人は少ないんじゃないかな。
都市林によって、景観も木材も人が手をかけることによって作り出すものだということを伝えたら、かなりインパクトがあると思うのだが。歴史ばかりじゃないんだよ(⌒ー⌒)。

公園の樹とか、街路樹とかからは、
案外、銘木がとれるんじゃないかと思っているのですが。。

高い値が付くようだったら、反対してた人たちも
こぞって伐り始めたりしてね。

神社仏閣の大木が、風で倒れたらアブナイとかの理由で伐採されるのも、実は木が高く売れたら分配されるという理由が隠されている……と聞いたことがあります(^^;)。

奈良県庁付近、見たことがないのですが、当初の目論見のように林業が行われれば面白かったでしょうね。

そうか、これから同様のことをぜひ訴えてみます。まずは熊本城のクスノキの巨木(築城時?に植えて大木化して石垣を破壊する恐れあり)ですな。


奈良公園と言っても広いので、さすがに県庁から(幻の)林業現場は見えませんけどね。

むしろ熊本城で林業を! と訴えて、城内の大木をバッサバッサと伐る……方がインパクトある(^^;)。


はじめまして。
林業とは少し違いますが,日本三名園の一つである茨城県水戸市の偕楽園(県立公園です)では,梅の実を収穫販売しています。市民にとっても偕楽園を身近に感じさせるし,お土産に「偕楽園の梅酒」なんてことも可能だったりします。収益は県の収入です。偕楽園のみに充てているかは不明ですが。

都市で林業,というのも同じような感じで面白いかもしれませんね。

梅の実の販売ですか。この手もあったなあ。

都市林には、果樹も植えたり、山菜野草販売も可能かもしれん。
マツタケ生えたら、採取権を分譲するとか。

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