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森と林業の本

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2012/11/27

森の健全度の測り方

森林の健全度とか、自然度、豊かさなどを客観的に説明するのは、難しい。

とりあえず生物多様性を指標にすることは私も賛成だが、それだけではないし、そもそも生物多様性を評価することがとてつもなく難しい。植物・動物、昆虫……それぞれ調査して、他の地域より高いことを証明するには、莫大な時間と労力・経費がかかるだろう。

私なんかは、それを「森の美しさ」で示せないかと思う(パッと見て、美しいと感じたら、健全!という単純な方法)のだが、では美しさの指標を作るのが至難の業だろう。

ところが、対象となる森の一部で木々の樹種や太さなどを計測したデータを集めて「森の豊かさを測る指標」を割り出す手法が考えられているらしい。取り組んでいるのは、京都大学の北山兼弘教授である。そして、現在対象としているが、インドネシア。

http://mainichi.jp/feature/news/20121126ddm016070039000c.html

約10万ヘクタールの森に、半径20メートルの調査地を計60カ所設けて実施しているらしい。詳しい方法や理論は、記されていないのでわからないが、もし納得できる精度が得られるのなら、期待したい。

ちょっと興味を持ったのは、実施しているのがインドネシアのカリマンタンであること。

先に違法伐採木材のことに触れたが、違法伐採の多い国と言えば、すぐに上げられるのがインドネシアである。なかでもカリマンタンは熱帯木材の有力産地だが、そこで生産される木材の半分は違法だとわれる。まあ、それが輸出される頃には、たいてい合法になっている……。

ただ、単にひどい森林破壊の国だと批判するだけなのは間違いだ。

少し前に、インドネシアの木材輸出を解説するセミナーに出たことがあるが、講師役のインドネシア領事館の人は、まず当時流行っていた中島みゆきの「地上の星」(NHKの「プロジェクトX」のテーマソング)が流して、いかに違法伐採を取り締まる制度を作って、トレーサビリティにも努力しているかが語られた(^o^)。

実際、木材輸出企業にとっても、これ以上の破壊的伐採をしても、後がないことに気づいている。そこで、熱帯雨林の生物多様性を評価する試みが行われているらしい。上記の記事でも、伐採会社がFSCを取る予定らしい。

今後、世界的に森林なり林業の目標は、量から質に移っていくと感じている。日本は状況としてはぴったり(森林面積は過去最高なのに、人工林も雑木林も荒れているとされる)なのだが、人々の意識の点で非常に遅れている。今頃になって量を追求する林業を国上げて推進しているのだから。市民も、いまだに植樹植林したがるし。

日本の森でも、質の指標づくりと計測方法を確立しておかないと、いざというときに置いてきぼりを食うのではないだろうか。

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コメント

 「植樹植林は“絶対的”に善である」という人々の意識は、本当にどうにかならんものか、と思います。これも人々が現実の森や山に入らなくなり、「(中途半端な)情報としての森林」にばかり触れることが多くなったためかな…と。
 「木を植えた人 (ジャン ジオノ作)」という児童文学の有名な作品がありますが、あれの影響が結構強いような気がします。 
 「木を伐った人」「木を眺めていた人」という児童文学の名作を作らなければならない(もちろん、伐った人・眺めていた人が“善”として描かれる作品)のかも。

日本で植林が求められたのは、だいたい30年くらい前までですね。
一方で海外の植林は大切でしょうが、やり方が難しい。熱帯地域と砂漠化地域では、全然事情が違います。

そうした事情がわかった上での植林ならよいのですが。

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