アカシア植林と生物多様性
先日のりそなセミナーにもどるが、ここで多く取り上げられた話題は、熱帯地域におけるアカシアの植林だった。
インドネシアのスマトラ島には、一カ所20万ヘクタールものアカシアの人工林があるそうだ。ほかにもカリマンタン(インドネシア領ボルネオ)や、マレーシア・サバ州(ボルネオ島)にも、大々的な人工林が広がっているそうだ。
話を聞いていると、アブラヤシのプランテーションは自然破壊的だが、アカシアは森づくりであるかのようなニュアンスである。そして、一斉林のため生物多様性が低い問題が指摘されるが、実際は伐採跡地のような草原化した荒れ地に植えるのだし、保全林を設けることで鳥類など動物も生存できている……とのいい訳も付け足す。(川井教授の講演だけどね)
なんだか、既視感がある。
1980年代から、熱帯地域にアカシアやユーカリなど早生樹種による植林が進んでいる。それに対して、「ユーカリやアカシアの林は緑の砂漠である」「外来種であり、熱帯雨林の破壊である」という論調が広がった。それに対応するかのように、フタバガキ科の在来樹種(ラワン、セレヤ、メランティなど)の植林実験が行われ始めた。
私は、その現場を視察して回った。三菱商事の取り組んだフタバガキの植林実験地なども見たし、市民団体によるフタバガキ植林ツアーにも触れた。アカシア植林地も見た。
写真は、20年前の焼畑の進むボルネオ(サラワク州)。
森は、二次林だった。
フタバガキ植林実験は、そんなところで行われていた。
正直言って、フタバガキの植林は実験段階であり、規模も内容もしょぼかった(^^;)。だいたい在来樹種だと言って、フタバガキばかり植えても多様な森は取り戻せない。フタバガキの一斉林ができるだけだ。
一方で、外来種のアカシアやユーカリが言われるほど悪いわけではない。何より生長が早く、緑化が進む。アランアラン草に覆われ草原化した伐採地を被覆することができる。また経済性に乗りやすい。主にパルプのほか、合板材料などになる。
が、結局、そこにあるのは熱帯雨林などではなかった。生物多様性の宝庫であり、熱帯雨林気候に適合した森ではない。
まずはアカシア林であっても、その後いかに多様性ある森にするか、フタバガキを含む在来樹種と混交させるか(あるいはモザイク配置するか)、それが20年以上前からの課題だったはずだ。
だが、何も進んでいない。20年前と同じことを繰り返している。
くしくも翌日の森林総研の研究発表では、一斉林であるスギ林を広葉樹林化するのは、いかに難しいか、と語られたわけだが、なんだかこちらもでも既視感。当時から悩ましい問題であったわけだ。
そして20年たっても、何も進んでいない。むしろ市民団体の突き上げが減った分、アカシアの一斉林づくりが大手を振って推進されている気配。
人工林を否定するのではなく、「一斉林の人工林」から「多様性ある人工林」づくりが課題のはずだったのに。
一応、森林総研でも研究はされているようだ。「広葉樹林化プロジェクト」があるらしい。
http://www2.ffpri.affrc.go.jp/labs/bl_pro_1/top.html
でも、現場への還元はどれだけ行われているのか。国内だけでなく、海外にも普及する意志はないのだろうか。
むしろ海外の方が一斉林化が激化している。アカシアやユーカリだけでなく、ファルカタ、ラジアータパインなどを採用して温帯地域でも進んでいる。
欧米ではようやくトウヒやモミの一斉林から抜け出そうとしているが、世界の趨勢は、むしろ一斉林・短伐期に向かっている。それに対する自然の豊かさを活かした、オルタナティブな林業を提案できないかね。。。
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