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森と林業と動物の本

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2012/11/11

中世の木材供給地

このところ、自宅と実家の蔵書の整理を進めている。

ようするに圧縮を図らねばならなくなったのだ。私は、わりと身の回りのものを定期的に捨てるようにしており、躊躇しない方と思っているのだが、書籍類だけは別。

すると、出てくるわ出てくるわ。忘れていたような本や書類資料の山(笑)。当初の目算の量の2倍3倍になる。ああ、こんなところにダンボール箱に詰めて押し込んでいたのか……と“発見”してしまう。読んだ記憶のないものや、今度資料として買うつもりだった本が、すでにあったりする(;^_^A。私か執筆した記事の掲載された雑誌も多いが、これは切り取るなどして圧縮しないといけないなあ。

さて、そんな中で発見したのが、「謎解き中世史」(今谷明著)。パラパラとめくってみると、
中世絵巻から読む建築「木工具」の発達史
という一節が。そこを、またパラパラめくると、室町時代に京の都を初めとした畿内に運び込まれた木材船の記録が書かれていた。(1444年~49年)

そこには25の港のうち、過半の14港が、淡路、讃岐、阿波、土佐だというのだが、さらに積載量を比較すると、阿波の港がずば抜けて多いという。つまり、当時の畿内の木材需要を支えていたのは阿波、つまり現在の徳島県だということになる。

ちょっと意外である。徳島県でも,木頭地方は今も林業地であり木材供給地ではあるが、そんなに多量のイメージがない。讃岐(香川県)や淡路(淡路島)なら、もっと意外感がある。むしろ、江戸時代は土佐が多かったはず。また九州からも運んでいた。

当時は、より畿内に近い阿波などが重要産地だったのかもしれない。ただ、徳島と言っても、吉野川を流送したとすると、その上流の土佐・嶺北地方が産地だと考えることもできる。

いずれにしろ、時代とともに木材供給地は変化していたのだろう。

木材移動から、歴史的な各地の経済力を計ることができるかもしれない。

※一点、気になるのは、山間部の木材移動は、木馬を使ったのだろう、という推測が載っているが、これはちょっと……。中世以前の図説には見つからないそうだが、江戸時代でもあったのか? 木馬が盛んに使われるのは明治時代である。(もっとも積極的に使ったのが、土倉庄三郎。)その前から存在していた可能性はあるが、普及しなかったと考えるか、そもそも発明されたのが後世なのか。

果たして木馬の発祥は、いつ、どこ、だろうか。

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コメント

片づけを始めると、いろいろなものが見つかり、
思わず手に取って眺め始めたり。。
過去を思い出してみたり。。
ブログのネタが出てきてみたり。。

片づけ道も奥が深いのですな。(^^)

ブログネタ……これが、一番大きいかなV(^0^)。

キャパを超えて片づけると、大量に引っ張りだして分類(捨てる・残す)したのはいいけれど、そのまま放置してしまって、結局、見た目はとてつもなく散らかってしまいます。(今の状態……)

「体育館のように巨大な書庫に、自分の全蔵書を分類整理、
 綺麗に並べてうっとり見ていたい・・・」

際限もなく書籍が増えてしまう本好きの誰もが見る夢・・・^^

どうせなら、検索機能も付けて、どの本がどこに収蔵されているか、わかるようにしたい…読むときにはカードか。ここまで来ると、図書館と変わらん(^^;)。
by 元図書委員長&図書部長。

 阿波周辺は、室町幕府の有力氏族、細川家の本拠地的所領ですが、1441~49年だと、このひと
[細川 持常]http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E5%B7%9D%E6%8C%81%E5%B8%B8、が阿波守護のようです。
 木材は中世の最需要戦略資源ですから、これだけの幕府重鎮であれば、政略も含めて、なにかと銭と資材-嘉吉の変を鎮めるにも、相当の人員と兵站資材を使用したでしょうしーが必要だったのではないか、と思います。

 応仁の乱以降の信長以前の京・機内は、100年ほど細川氏、その後はその阿波守護代であった三好氏によって支配されていましたが、その権力の源泉は、阿波・淡路・讃岐から産出される資源だったと思われます。
 つまり、100年もの間、阿波周辺地域で木を伐りまくった(応仁の乱で半廃墟化した京の町再建だけでなく、戦争に必要な直接的資材、あるいは兵員動員の資金源、製鉄・塩製造の燃料として)結果、江戸初期にいたる頃には、森林資源が枯渇し、木材の主要供給地としての機能を失ってしまい、現在に至るのではないかと。

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