葉っぱビジネスや変木ビジネスにアイデアはあるか
最近、またもや徳島県上勝町のいろどり事業が注目されている。
映画化もされた(『人生、いろどり』)し、テレビに幾度も出てきたり雑誌にも取り上げていた。何年かごとにブームになるのか?
説明の必要はないと思うが、いわゆる葉っぱを料理のつまものとして出荷して成功した話である。今や2億6000万円の年商があるという。
が、それらの紹介の仕方を見ていると、引っかかるのは「葉っぱを売るとは凄い発想だ」「葉っぱをつまもの商品にするというアイデアが素晴らしい」という論調だ。
が、そんな見立ては間違いだろう。そもそも、つまものという商品は、いろどり事業よりも前からすでに存在していたのだ。上勝町はそれを見て、取り入れたにすぎない。ただ、それを組織的にネットワークを組んで、また数々の新商品を次から次へと開発して、スピーディに出荷する体制づくりが凄くて素晴らしいのである。
さて、先日は吉野の銘木屋さんを訪れた。ここは、銘木……というより変木で有名だ。通常では扱わない不思議な木材ばかりを扱っているのである。
こんなコブなのかなんなのかわからん木も重要な商品。
ちゃんと需要があるのだ。インテリアや意匠に使いたがる施主や設計士は少なくないらしい。値段はそこそこするが、かつての銘木ブームのようにバカ高くはない。むしろ、過去の吉野の銘木の値段を知っている人が聞くと、「意外と安いじゃないか」と買う気になるらしい(笑)。
だから視察者も少なくないらしいが、ここでも幅を聞かせているのが、「こんな変木でも商売になる」というアイデアに感心する声である。
ちがうでしょ。変木を欲しがる潜在的なユーザーはたしかにいる。それをいかに発掘するかが重要なのだ。そして買う気にさせる仕掛けも。量だって確保しなければならない。1本だけでは買ってくれない。
また、捨てられているような変木を、どのような加工をすれば興味を引くようになるかを見極める目が必要だし、そもそも変木を仕入れるルートを開拓しないと、市場では売っていないよ。素人が山に入っても、すぐに見つけられないよ。
だから、視察後、自分のところでも変木を扱おうとすると、たいてい失敗する(^^;)。
また、このやり方こそが日本の林業を救う! と気分を昂揚させて政策を練る行政関係者や学者、アドバイザーなども、思いつきの言いっぱなし。
だいたい、みんなが変木を扱いだしたら、こんな隙間商品、あっという間にだぶついてしまう。学ぶべきは、各種の潜在的ユーザーを発掘する技術なり努力だろう。
林業が不景気になると、数少ない成功者のところへ視察が相次ぐのだけど、結局見るべきところ、そのビジネスの肝を掴めない視察が多いようだね。
最後に。この銘木屋は変木で儲けていると思いがちだが、聞いてみると利益の本筋は昔ながらの磨き丸太などの銘木だそうだ。減ったと言えども、数寄屋建築などは今も根強く愛好家がいて、そこに需要がある。変木ビジネスが主流ではないのである。
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「アイデア/発想“さえ”よければ、それは成功する。」とか、「単に自分が知らなかったこと=いままでこの世にに存在しなかったこと」という思考をする人達を、どうしても理解できません。
子どもの頃に、なにも自分からやろうとしなかった・調べようとしなかったのでしょうかねぇ…10代半ばぐらいまでに、「素晴しいことをひらめいた!やってみよう!→失敗」「誰もやっていないことを思いついたぞ!→ちょっと調べてみたら、誰かがとうの昔に、自分が考えた以上のレベルでやっていた。」なんてことは、嫌と言うほど体験させられると思うんですが…不思議。
投稿: Iターンして10年目 | 2012/12/01 01:00
アイデアを思いつくのは、快感なんですよ。それで一気に「これだ!」とすべて解決する気がする。でも、自分で実行しようとしたら甘くないことがわかる。その乖離が面白いんですけどね。
私も思いつきで書いているから、よくわかる(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2012/12/01 09:00