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2012/12/13

量の林業、質の林業

11日に東京で出席していたのは、国交省の「木の家づくりから林業再生を考える委員会」だった。これは公開で、マスコミ取材も受け入れていたから、内容を私が紹介してもよいだろう。

毎回、テーマごとに関係者を呼んで話を聞くというスタイルだ。今回の内容は、国産材の輸出と、川上から川下まで連携して6次産業化させた木の家づくりだった。
もっとも、私は「その他」として最後に意見陳述しただけ。そのタイトルは「木の価値は見た目が9割」であった。

重きを置いていたテーマは6次産業化の方だろう。各地の取組6事例が発表された。これらは、多くは山の木と街の建築を結ぶ試みだ。いわば木材需要の隙間狙いである。両者の顔の見える関係を築き、量は少なくても質の高い木の家を提供する。利益率も高める……という発想だろう。私の意見も、量を追っても山村側は救われない、利益率を高める木材需要(内装・外装材)を創出することである。

が、委員側の反応は意外な? いや、想定通り? のものだった。

つまり、量を出さなきゃダメ! というものである。そして人口減や非木材素材の増加などから縮んでいる需要を再び伸ばすために、木材を輸出するほか、鉄筋コンクリートに取って代わる素材(CLTをイメージしているよう)にして、新たな木材需要を生み出すべき、というのだ。

スギ材価が8000円を割り込むことを嘆く声には、「その価格はコンクリートより安いんだから、コンクリート建築から木造建築に換えるチャンス」と捉える。

そこで気づいた。委員の多くは大手製材・集成材メーカーの経営者であり、学者である。木材価格が安くなることは、むしろ歓迎なのだ。学者も、マクロの視点から日本の山にだぶついている木材量を頭に、総体としての需要創出方法に眼を向けている。

が、それで山村は救われるのか? 森林・林業再生プランが、量の林業を追求しているのに乗っかっているだけではないか? コンクリートより安い材価を固定してもいいのか?

まさに「林業栄えて、山村滅びる」状況を黙認せよ、ということになりかねないのではないか。

ここで量の林業と、質の林業のどちらを重視するのか、と問えば「どちらも大事です。バランスを取りながら進めていかねばならない」と答えれば、お利口さんのコメントになるのだが、私はそれに与しない。

もちろん両者それぞれに問題点がある。小さな地域を囲い込んで小さな消費を生み出しても十分な木材は捌けず、結果として山への還元額もしれている。しょせんは隙間事業。地産はともかく地消は無理なのだ。外に打って(売って)出る気概がないと。
そもそも各取組が補助金抜きで事業を成り立たせているならよいが、実態はそうではない。行政の援助・肩代わりが少なからずある。その点では本物のビジネスと呼べないだろう。

が、安くなった材価を利用して量を捌いても、山に何かもたらされるだろうか。統計的数字で、これほど木材自給率が伸びた、間伐面積が増えて森林が健全になった、経済効果は何千億円にもなった……と自慢されても、現実の山は荒れ果て、山村を壊滅させてしまって何が残る。薄い利益も途中でどこかに消えてしまうのだろう。
だいたい木材をコンクリートの代用となる素材に仕立て、人の目に何の感慨も与えない木の使い方をしても「木の文化」なんか生まれない

これは、量から攻めたら質は後からついてくるというマクロな日本林業の視点と、小さな質を積み上げて生活の場の維持し、ミクロな地域集合体としての国を描く視点の対立かもしれない。

……余談だが、一応出席していた林野庁の人、何もしゃべらないんだよね。振られても「勉強になりました」で逃げる。これでいいの? どちらに与するの? お仕事しようよ。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

田中さんの森林・林業プランに期待・・・

いままで言い尽くされていますが、やはり現場の声が一番大切です。

学者、経営者=資本家の視点では、だめですね。
林野庁の役人が黙っているのは、許せないですね。
林野行政の責任者であり、少しは現場を知っているのに黙っているとは!
本気で国内の林業を再生しようとは思っていないのでしょうね。

田中さんや熊崎先生が、何度も何度も口を酸っぱくして提言されているように、
国の補助金には絶対頼らないで、ビジネスをスタートさせないと、麻薬のような補助金で林業は廃れ、木の文化も廃れます。
部分的な対応ではなくて、川上から川下までを視野に入れた林業ビジネスはなかなかうまく行かないんでしょうか?
あえて言えば、質の林業が大切ですね。

林業の素人より

実は今日ある事業者さんと打ち合わせをしました。
当流域の木をベースに製品を開発してくれるという地元事業者さん。町外ですけど。
条件は、その製品の原材料となるいい木(その人の目に叶う色合い)を生産するということ。もともとそういう木が多い流域だけれども、それが減っていくことを懸念しているということらしいです。
とりあえず、ヒノキなんですが、程よい目合いと色合いがいいのだそうです。この流域で事業をやっていてよかったとも言ってくれました。
そのヒノキの色合いを保つような塗料も開発してあるそうなのです。
ありがたや、ありがたや。
しかも、私にはリスクを求められなかった。
林業者と話をして、その人のメガネに叶う木材を供給するだけです。ある程度の価格も提示してくれるみたいです。
ありがたや、ありがたや。
こっちも、全力で協力する木になるっちゅうものです。
たぶん、林業家も喜ぶ、そんな動きができそうです。

追伸です。
このことを公にオフィシャルに報告すると、お偉方からは
「では、今の価格の下落にどう対応するのだ?量を捌くような、価格を戻せる取り組みはどうなってる?」という反応になるに決まっています。
量を裁くというのはうちの町だけでは・・・・という回答をした場合は、だからバイオマス、という返事になるに決まっています。
一体いくらで処分(あえてそう書いちゃいますが)するつもりなんでしょう。
マテリアルとして使いたくなる、使ってもらえる商品、製品はまだまだ開発、生産、販売ができるはずです。
本当に価格とコストを考慮した生産行為で出る端材(林地残材のうち、自然派生しているものは含みますが)をいきなり燃やすというのはありだと思いますが。あと、都市部の天然生2次林も。

量を確保して材価が上がるんなら、それにこしたことはないのだけど、間すそんなことはない。量を出すために安売りしたり質の低下で価格は下がるんです。

バイオマスはその典型でしょう。どうもお上は見た目の分かりやすい量に走りがち。でも必要なのは利益です。
いわば「売り上げ」と「純益」の違いをわかっていない。いくら売り上げが大きくても手元に残る純益が少なければ経営は成り立たない。その逆を狙うべきです。

この材価の状況で、良材生産をしている自伐林家の一部が(わが町では数少ない企業経営的林家)生産量が減っているのが気がかりなのです。
市場(イチバの方です)をのぞくと割と普通の木が多いような気がします。その中でいつも目を引いている木を出してくれているのがその林家なので、良材が市場に出荷される数量が減るのがとておm気がかりなのです。
その林家に以前直送の話を持ちかけた(実はダイレクトに欲しいという事業者がいたので)のですが、その林家の主は私の話を断りました。その理由は、自分の材の質を承知をしていて、自分の材が市場に出ないと、市場全体の質が下がるからというのが理由の1つでした。
でも、この材価では躊躇してしまう。従業員の給料を払わなければならないので、経営的には非常に苦しくなっていますが、やはり補助事業にシフトしています。
皆伐や択伐の施業量が減少しているんですね。
その方には、所有林のほんの一部で、ここ3年ほど、ある程度出来上がっている60年生の山を列状(3残1伐+残列の単木伐採)での利用間伐を実験的に実施していただいたのですが、元々径級がそろっていたので、かなり収益を上げることができました。まだ、3年しかたっていないので列状間伐後の林況変化については何とも言えないですが、この前現場に行ったときには定性とあまり変わらなくなっているかなあとも思いました。しかし、この手法を採用せざるを得ない状況になってくるかもしれません。試験的にやっていただいたとはいえ、列状アリキになるのも怖い。
材価の問題は、良材生産量の減少ももたらしていると考えています。
このことから、その方にはこの前、もうちょっと我慢して良材を生産してほしいというお話をさせていただいたところです。逃げ道としては、基盤整備という名目で、この時期に出来上がってきている林分を狙って作業路を重点的に入れる計画を立てて、そこの作業路支障木を市場に送り込んでいくという手もありますので、そんな対応もせざるを得ないかもしれません。そのついでに作業路周辺の本数調整を実施してもらう。でも、そんな話をすると本末転倒のような木もして・・・・・。

列状間伐だとよい森づくりができない、というものじゃないと思いますよ。うまく定性間伐と定量間伐を織りまぜて、コストと質を追求してください。私は、どうすりゃいいのかわかりませんが(~_~;)。

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