山を持つ者持たない者、の役割
清光林業の岡橋氏に中島彩さんとともに吉野の山を案内していただいたことは、すでに記した。
実は、岡橋氏へ橋渡しをしてくれた谷林業の谷さんも同行していた。谷林業も吉野5大林家の一つで、1500ヘクタールほどの山を持つ。岡橋家とは縁戚関係もあり、現在は岡橋氏に作業道の入れ方などを学びながら、新時代の吉野林業を模索している。
ちなみに谷家の邸宅は、文久年間に宮大工が全国から銘木を集めて7年がかりで建てられた古民家。大黒柱が2本あって柾目のヒノキの1枚板襖、10メートルを越えるサクラ縁側、書院造りの床の間に狩野派の屏風絵、ナニガシ親王の扁額……。
もっとも、奈良ではこれほどの家でも、文化財指定にはならないのだけどね。。。
もちろん、大山主といっても、昔のような「旦那」の世界ではない。当主自らトラックを運転して材を運んだり、ユンボで道づくりをしている。厳しい林業事情の中で、山をあきらめずに維持するのは大変だろう。
でも、自分の山の将来の姿を自分で描くことができるのは、ちょっとうらやましい。
さて、こうした大山主の世界から吉野林業を学んだ帰り道。車の中で多少疲れた頭で彩さんと話すのは、やっぱり色気抜きの(~_~;)林業の話。
「大山主も厳しいけど、楽しそうでもある。さて、我々のようなサラリーマン家庭に生まれ育って、山を所有していない者が、森や林業に興味を持ったらどうしたらいい?」
考えてみれば、林業関係者でも自分の山を持つ者は少ない。被雇用者はもちろん、新規参入者なら地域にさえ縁がないケースが多いだろう。人数からすると、圧倒的に自分の山を持たない人が多いのではないだろうか。
それでも森が好き、林業が好きと思ったら、山主とは違ったつきあい方をすることになるだろう。
彩さんのような?現場にこだわる派は、自らの最適の舞台を広く探し出し根付くのかもしれない。私のような腰が落ち着かない派は、アチコチ歩き回って他者に「伝える」役割をめざすのかもしれないなあ。
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私も一切山を持っていない林業従事者です。
ですが、0から地主さんに営業して、施業計画を立て管理しています。現在500ヘクタール。(300と200ヘクタールと大きく二つ)
計画を説明し理解してもらい、代わりに管理していくと言うのはやりがいがあります。
責任も重大ですが。
その責任(モチベーション)があるので、このごちゃごちゃした補助金の仕組みと付き合うこと今のところできています。
本当はあてにせずやりたいのですが・・・
早く経営計画完成させないとなあ
投稿: つうくん | 2013/01/23 07:19
山を持たなくても、完全に管理・経営を任せてもらえるような関係が築けたらいいですね。500ヘクタールを自分の山のように扱えるなんて、気持ちよさそう。
現在の(森林組合などの)請負型の制度では、一つの施業ごとに受注する形なので、どうしても「自分の山」の意識を持ちにくい。少なくても5年、できたら10年単位で請け負えたら、将来を見越した管理になると思うんですが……。
投稿: 田中淳夫 | 2013/01/23 09:58
それは、森林経営計画の仕組みだと思うんですけど。大林班括りがやはりネックとなっているのかなあとも思ったりします。
投稿: 鈴木浩之 | 2013/01/23 13:37
「私も一切山を持っていない林業従事者です。ですが、0から地主さんに営業して、施業計画を立て管理しています。現在500ヘクタール。(300と200ヘクタールと大きく二つ)計画を説明し理解してもらい、代わりに管理していくと言うのはやりがいがあります。」
という事でしたら,10人がお金を出して土地を借りるかして森林経営を補助金なしで試みたらいかがでしょうか。
投稿: しゃべり杉爺 | 2013/01/23 13:59
わたしは結果として日本の森が再生する現場にこだわる派です。
①森づくりの理論と技術を有償研修した人に森1haを5年間無償貸与する
田中さん発想の「自分の森意識発揮の林家」構想のモデルになる
②ふるさと丹後に森1haを所有して、1ha未満の森所有の小規模林家の人たちに彼らが喜んで森づくりに取り組める機材とノウハウを提供する「森づくり塾」を運営する
どちらも森づくりに賭ける人づくりに軸足をおいております。
その資金づくりをネットビジネス"せどり"で実践中です。
投稿: 岩井拓実 | 2013/01/28 10:07
「せどり」で資金づくり……頑張ってください(^o^)。
自分の森を持っている人はもちろん、他人の森でも「自分の森」意識を持てるような仕組みをつくれば、かなり扱い方が変わると思いますよ。
本当は、まず仕組みがあって、そこに「現場にこだわる派」の人が参入してほしいのですが。でも、参入しつつ仕組みをつくって来た人もおおいですからね。
投稿: 田中淳夫 | 2013/01/28 10:33
今、町外のある団体から山づくりの活動内容の相談を受けています。部外者が余計な口を出すことにならないレベル(考え方のあたりぐらいでしょうか)に気をつけて話をしていこうかなあと思っています。
ある一定の地域の運営そのものにも直結するだろうことからビビりますが、どうやらほかに相談するようなところもないみたいで・・・・・。
地域を考える団体が作業ができる企業との連携していくような方向も提案してみたいと思っています。
投稿: 鈴木浩之 | 2013/01/28 10:43
「町外の団体」というのがミソですね。長続きしてくれたらいいけど……。
あっさり投げ出すケースも聞きますからね。
よくよく話し合いをしていただくように・・・。
投稿: 田中淳夫 | 2013/01/28 15:59
すいません。言葉足らずでした。
「町外の方が主導する団体が、その方の地元で」というケースでした。こちらは、どうやら針葉樹人工林の様子です。
もうひとつの動きとしては都内の団体が町内の団体と連携してというケースもあります。こちらは、現在原野となっている場所を造林して管理していく方向らしいです。町内の団体をサポートに入れてあります。その町内の団体は森林組合のOBや土木建築業者、資材屋さんなどがメンバーです。
投稿: 鈴木浩之 | 2013/01/28 20:34