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森と林業と動物の本

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2013/01/23

ドイツの森林をグーグルで覗く…

先日訪れたところて、偶然逢ったのが何年も前に取材した人。

ちょっと仕事内容は変わっていたが、林業界から足を洗うことなく、頑張っておられるようだ。
そしてドイツ林業の視察にも行ったとのこと。

そこで見てきたのは、農畜林複合経営。夏は林業をやっていない。トラクターも林業と農業と畜産の兼用である。これならコストも低くなる。小規模林家は、量を競う林業をやっていないのだ。これって、私の見てきたスイスと同じではないか。

「でもドイツには年産10万立米以上の製材所がたくさんある。そこでは年中製材を行っているわけで、その素材はどこから持ってくるか、フォレスターに聞いたところ……」

するとこんな答えが返ってきたそうだ。

「ドイツも奥地の森林地帯をグーグルアースで眺めたら、皆伐地がいっぱいあるよ」
そこでは年中、伐採を続けているそうだ。もちろん、得意の超大型林業機械が“活躍”しているのだろう。

こんなこと聞いたら、さっそく試したくなるなあ。(誰か、場所を特定してほしい。)

でも、皆伐地が広がっているのは、ドイツだけではなかろう。国境を越えることもむずかしくないだけに、おそらくオーストリアや北欧諸国……そしてポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニアなど旧東欧諸国も含まれているのだろう。大陸ゆえに広く素材を集めることができるから超大型製材所がいくつも稼働できるのだ。実際、50万100万立米を引く製材所は珍しくないと聞く。
そんなベースの生産量があるから、小規模な出材を上乗せで取り込むことも可能になる。

目先の施業方法を論じる前に、世界全体の木材需要と供給場所を考えれば、どこかで無理な伐採が行われているのは間違いない。数字のマジックを駆使して、生長量より伐採量が少ないから「持続的です」なんていうのはナンセンスだ。

林地の集約化。高性能林業機械の導入。システマティックな搬出。製材工場の大型化。……こうした動きを日本の林業だけの抱える問題点のつもりでいたら、どこかで落とし穴にはまりそうな気がする。もっと大きな動きが世界レベルで起きているはずなのだ。それを知って、目の前の施業方法を考えないといけない。

シンク・グローバリー、アクト・ローカリー…かな。

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コメント

いつも興味深く読ませていただいています。

「もっと大きな動きが世界レベルで起きているはず」とは具体的にどのようなことですか?

ドイツのような皆伐が世界規模で、ある秩序に基づいて行われているということでしょうか?
または無秩序に行われているんでしょうか?

ド素人より。

なんとなくですが、
100年超まで持って行く(持って行きたい)林分
ある程度のところで更新する林分
いつか可能な時に最終収穫だけを目指す林分(植えてしまっている以上)
の仕分けをして、
ある程度のところで更新(再造林)する林分に仕分けた林分のうち出来上がっている林分を自分のできる範囲(あるいは収入が必要な範囲)で皆伐していく
そんな自伐系の林業経営をしていくことでしょうか。

受委託方式の森林経営計画は、私としては委託系の林家と単なる森林所有者には推奨していますけど先がどうなるか、イメージが出来ていないのが悩みです。それを説明会と科でしっかりと伝えることができない状況ですし、森林組合にもそこをちゃんと使えられない。認定権者としての役割を求められていますから(法律とか県とかから)、俺ってこれでいいの?ってしばしば悩みます。

覗いてみました。グーグルアース。

皆伐地はわからなかったけれど、
道がいっぱい入っているんだなあと思って眺めました。

世界で何が起こっているのかは、ご自身でお調べになるのがよいと思います。が、木が繁りすぎて、「木づかいのススメ」をやっている日本は特殊であって、世界的には野放図な伐採と森林減少が大問題になっていることを前提に考えていただければ。

せっかくだから、グーグルマップで、ドイツの森林地帯を見てみました。

なるほど、想像以上に伐っていますね。スカスカの森もある。放牧地もあるけど、切り株並ぶ広大な皆伐地も見つけましたよ。

日本とは根本的な地形や森林の要素が違うのだけど、そんなに理想的な林業を展開しているわけではなさそう。

……おっと、熊(♀)さんも見ましたか。

日本の山の状況は
太田猛彦さんの森林飽和で全体的なことがわかりますね。
おっと、この田中さんのブログでも紹介されていますし、右の本の紹介のところにも4番目にアップされていますね。
これが世界情勢の中でどうなっていくかを予測しながら・・・・。
将来を予測するのと同時に、記憶に残っている数年前や10年、20年前をたまに振り返って、その経過を思い返して、今後につなげていくこともありかな、って思います。
私は6年前から林業を担当していますから、それ以前のことは、書籍や知り合いの方に聞いてみます。

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