カーチャー・デックスター報告~米軍政下の林業調査
1951年から10年間分の「林業技術」誌の贈呈を受けた。
貴重な林業の歴史的資料である。黄ばんだ雑誌の山を見ると、有り難くて、自然と笑顔になる(^o^)(^o^)(^o^)。
何分、膨大な分量だから、どんな記事があるのかチェックするだけでも大変。目次を眺めるだけで、時間がすぎていく。
その中で、今のところ目についたのが「日本における民有針葉樹林の経営」(連合軍総司令部天然資源局基本調査第43号)であった。
GHQは、日本を占領中に、各産業についても詳しい調査を行い、問題点を洗い出し改革案をまとめていたのだ。いわばコンサルタント! 単に占領政策を有利にするとか、戦後処理のためというよりは、いわば豊かな国を自らの手で作り上げたい理想主義的な意思があったのかもしれない。当時の日本からすれば至れり尽くせり、である。もちろん、植民地経営的ではあるが。。。
調査を手がけたのは、ジョセフ・C・カーチャーとアルバート・K・デックスター。どちらも人工林経営では国際的に有名な人だという。とくにカーチャーは占領下のドイツで林業部長に就任して調査も行っている。
実は、この報告書、私は以前から存在は知っていて探していたのだ。戦前の日本の林業地を外部の目がどう評価したか知りたかったからだ。それが、翻訳されて「林業技術」に掲載されていたとは。
さて、詳しい内容はとても紹介できないが、「勧告」として記されている項目の中から、気になるものをいくつかピックアップしてみよう。
「直ちに森林を保護生産の基礎に置く」
「日本の固有事情に合致するように改変背せずして、ドイツ林業の方式を盲目的に採用することを止める」
「より早期からより強く、より回数を多く間伐を繰り返す」
「主伐実行前に成林を確実ならしめるところの群状択伐作業を採用」
「1町歩以上の所有者が有する民有林における用材伐採を国が監督すること」
この中でも、ドイツ林業に関する部分は面白い。
日本の林業は、他のいずれの国よりもドイツ林業の影響を強く受けているとして、それを「盲目的に採用するのは不適当である」とかなり厳しく指摘している。気象も地形も違うヨーロッパと同じように日本の林地を取り扱うべきではない、というのだ。
そして一斉皆伐は、ドイツでも急峻地形のババリアルプス地方ではやっていない、郡状択伐にしている、日本でも、一斉皆伐は不適とする。地域ごとに適正な方法を選ぶべきだ……。
今の日本林業政策を担っている人に読ませたい内容だ。少なくても戦後60年間、日本の林政は何も学ばなかったのか? せっかくコンサルティングしてくれたのに。。。
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福沢諭吉の脱亜入欧が徹底されすぎた結果として、欧米のものが何でも妄信されたのかも
投稿: か | 2013/01/17 00:17
ドイツ林業を盲信した理由としてはわかるんだけど、ならば次はアメリカ様の勧告を盲信?すればよかったのにね(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2013/01/17 00:33
当時、林野庁は日本林業政策を担っている行政機関だったのだろうか?
1町歩レベルの林業家は居なかったはず。真の林業家は間伐の重要さ、道路網(作業道)の必要性を認識していた(主に沢、斜面の凹部)。
投稿: tom-j | 2013/01/20 11:36