無料ブログはココログ

森と林業と動物の本

« スイッチング・コストは「めんどくさい」 | トップページ | 山武林業があった »

2013/02/16

幻の「万沢林業」

古い林業雑誌(1960年)をパラパラ見ていると、「万沢林業」が紹介されていた。

非常に有名で、詳しく調べられていて、広く紹介されている、とある。が、寡聞にして私は、まったく知らなかった。おそらく現在は、少なくても地域的な特色ある林業地としては消えたのではないか。有名林業地が、わずか50年でどうして幻になったのか?

今回は、メモ程度に。誰か詳しい人いるかな。教えてほしい。

場所は、山梨県最南端にある富士川沿いの小集落だそうだ。1800ヘクタールの林地の83%が人工林地造林地なのだが、ここで行われているのが、混農林業である。

スギやヒノキの伐採跡地を焼き、オカボやソバを作付けし、その後スギ、ヒノキの苗を混ぜて植えつつ、大豆、サツマイモを育てる。さらにミツマタとヤマハンノキを植える。これらは収穫しつつ、12,3年後ちはみな伐採してスギやヒノキの生長を阻害しないようにする……。

もともと切替畑(焼畑)の跡地にクヌギやヤマハンノキを植え、ミツマタの栽培も行う文化があたからだろうが、典型的な焼畑発祥林業だ。さらに農林複合で、多種類栽培-収穫で、針広混交林づくり

別名が、肥料木混交林業。落葉広葉樹のヤマハンノキを植えると、落ち葉をためるだけでなく、窒素固定も行うから、土壌を豊かにするから肥料効果があるという経験則なのだそうだ。

まさに、伝統的な近自然林業かも。

しかも、こうした混農林業は、さまざまな形で、日本全国にあることが記事には触れられている。

でも、こうした伝統的な技法は、多分木材生産的には効率が悪いと切り捨てられたんだろうなあ。一斉皆伐、一斉造林に切り換えたのではなかろうか。そして技術も消えてしまった、わずか数十年の間に。

でも、将来的には、見直しされてもよい気がする。ミツマタ生産はむずかしくても、農林複合はこれからのトレンドだ。

一体いまは万沢の山林がどうなっているのか、気になる……。

« スイッチング・コストは「めんどくさい」 | トップページ | 山武林業があった »

林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

うーん、これは面白そう。どうしてこのアグロフォレストリーの経営が衰退していったか(もしくは残っているのか)、他の国が学べる教訓はないのか、等々。日本にも面白い研究テーマがいろいろ転がっていますね。

日本の伝統的林業は、アグロフォレストリーで近自然的だった証明になりますね。

それにしても、たった50年前ですよ。当時は有名で、研究も視察も行われていたものが、あっさり消えた……。

きっと当時のことを知っている人も存命だろうし、消えていく過程を調べてほしいな。

ぜひ現地を訪れて見たいと思います。

アグロフォレストリー的な道が、我が集落の林業としては最適かなと思っているので。

報告お待ちしています! 現地に当時のことを語れる人がいたらいいんですけどね。

うわー
今住んでるところが近いので私も調べてみますね。

「古い林業雑誌」を教えていただけますか?
手がかりに。

連投すいません。
Ciniiに何かありました。手がかりになりそうです。
http://ci.nii.ac.jp/els/110002841728.pdf?id=ART0003196827&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1361296469&cp=

ミツマタは山梨の山の中でよく見かけますね。
畑時代(栽培していた)の名残だと思います。
生え方からして。

さらに連投
今の南部町ですね。
山はヒルの楽園・・・。

おお、興味を持ってくださる人が増えてきました(^o^)。

雑誌とは「林業技術」の219号。これで万沢に再び注目が集まったら嬉しいです。今も集落あるのかな?

只今、図書館で持ち出し禁止の「万沢林業」の町史をコピーして
送ってもらったところです。(A4で54ページ)

4節に分類されています。
1、歴史的経過
2、恩賜林・公有林
3、万沢村の林業
4、混農林業

ゼミで、先生の「森と人の1500年」の1部を
発表することになり苦戦中です。

図書館で、万沢村の町史を依頼(持出し禁のため)A$-54ページ。
4節にわかれております。

1、歴史的経過
2、恩賜林・公有林
3、万沢村の林業
4、混農林業

ゼミで発表があり、苦戦中です。

御愁傷様です(笑)。

万沢町史、そこに村時代の林業も詳しく説明されていますか。興味深いですね。そのセミ発表が聞きたいv(^0^)。

万沢村の図書館で「町史」をお借りした。その町史に吉田中知氏が明治41年に書かれた復刻版があると知り、再度山梨県の南部図書館でその復刻版をお借りした。
「萬澤村地方の林業」について、詳しく書かれたものだ。
同村の気候、生産事業、林業の方法、森林収額、樹皮などの利用、収支計算、将来の改良方針、等々。
旧漢字、カタカナ文語調の文体で、読みづらい。まとめるのに
苦労しています。
9月のゼミ発表に向け相変わらず、苦戦中。

おお、樹皮の利用までしていたか。

そのコピーが欲しいくらい(~_~;)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 幻の「万沢林業」:

« スイッチング・コストは「めんどくさい」 | トップページ | 山武林業があった »

April 2025
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

森と筆者の関連リンク先

  • Yahoo!ニュース エキスパート
    Yahoo!ニュースに執筆した記事一覧。テーマは森林、林業、野生動物……自然科学に第一次産業など。速報性や時事性より、長く読まれることを期待している。
  • Wedge ONLINE執筆記事
    WedgeおよびWedge on lineに執筆した記事一覧。扱うテーマはYahoo!ニュースより幅広く、森林、林業、野生動物、地域おこし……なんだ、変わらんか。
  • 林業ニュース
    日々、森林・林業関係のニュースがずらり。
  • 森林ジャーナリストの裏ブログ
    本ブログの前身。裏ブログとして、どーでもよい話題が満載(^o^)
  • 森林ジャーナリストの仕事館
    田中淳夫の公式ホームページ。著作紹介のほか、エッセイ、日記、幻の記事、著作も掲載。