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2013/03/04

<山林都市>と、タウトの生駒山

先に大阪のジュンク堂書店を訪れた時のこと。

実は、『謎の独立国家ソマリランド』以外にも購入した本があった。
それが、『<山林都市>黒谷了太郎の思想とその展開』(堀田典裕著・彰国社)である。

高い本(2800円+税)なのに、即買いしてしまった。

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だって、「山林都市」だよ。

A4版という大判で、並製本だから、ムックのようでもある。

これは黒谷了太郎によって大正時代に発表された都市計画の論文だ。一種のユートピア計画と言ってもいいかもしれない。

山林の中に新しい、理想的な都市を作る……。

すでに「田園都市」構想がイギリスだったかに登場していたし、その後も林間都市とか、山岳都市などさまざまな名前で、ニュータウン計画が発表されている。

そういや、国有林を開発して、「森林都市」を作る構想も発表されたことがあったっけ。なんだか高度経済成長時代のゼネコン・ディペロッパーみたいだったが……。

が、いずれの理想的都市も、山と森が関わっているところが興味深い。本書も、そうした都市計画の歴史・思想を解説している。

もっとも、ここでは山林都市の内容を紹介するつもりはない。だって、まだ読んでいないんだもん(^o^)。

私が注目したのは、この本の一部に、ブルーノ・タウトの「生駒山嶺小都市計画」が触れられていることだ。

タウトは、ドイツ人の世界的建築家にして都市計画家。だが、ナチスに追われて日本へ方瞑する。1933年のことだ。そこで桂離宮などの建築物に触れて「日本美の再発見」を行うなど、いろいろ活動するのだが……。

そんな彼に大阪軌道(現・近鉄)の依頼を受けて、生駒山の山上部分に新たな都市を作る計画に着手するのだ。もし実現していたら、現在の遊園地辺りに瀟洒な高原都市が誕生していたかもしれない。

この計画については拙著『生駒山』(共著)にも記したが、今回改めて詳しく書かれていたのである。

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タウトの描いたスケッチ付き。

ヨーロッパ的な中心に広場のあり、ホテルや公園を付随した街を構想していたようだ。

この生駒山都市計画にこだわらなくてもよいが、せっかくだから本書を通して森と人の居住スペースの関係、そして人が森に求めるものは何か、少し妄想に浸ってみたい。

人口減の時代を迎えて、こうしたゼロから開発する街づくりは今後むずかしいだろうが、山村のリノベーションとしての都市計画は必要になってくるのないか。現在のニュータウンが、まったく魅力のない、金太郎飴のような相似の街ばかりになっていることを考えれば、こうした過去の大胆な計画も、新たな参考になるのではないか。

ちなみに、この計画は実行に移されなかったが、戦後になると山上部分に別荘村が築かれた。しかし、現在はことごとく廃墟である。

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コメント

現在日本の林業について学んでいる身なのですが
山林に都市が築かれることによって
木材の伐出の負担などが軽減するなんてことはありますか?

「山林都市」構想は、人間の生活に重点を置いています。林間に住む生活が、人間には理想的な住環境……という発想です。

だから、林業とは直接結びつかないのですが、あえて山林都市の住民の経済的バックボーンを林業にする都市づくりを構築してみると面白いかもしれません。

ビジネスの対象を山、森林に置く職業を生み出し、その人材が住む町を「山林都市」として都市計画……。なんだか、できそうだ。

>ビジネスの対象を山、森林に置く職業を生み出し、その人材が住む町を「山林都市」として都市計画……。なんだか、できそうだ。

そうなれば、就森者も起業者も出てきやすくなって、山村振興に役立つと思いますよ。

以前から「森林オフィス」を夢想しているんですけどね。
森の中にオフィスを置き、ITで結び、広範囲な職業を誘致する。そして職住近接都市にする。

こんな感じ。
http://www.archdaily.com/21049/selgas-cano-architecture-office-by-iwan-baan/

なかなかかっこいいですね。でも平地林でないとできん。。。斜面でもできる森林オフィスを考えないといけませんね。

斜面に、半地下式の透明窓オフィスを作ると……なんか、塹壕みたいになる(-.-)。

まあ、オフィスのデザインはともかく、森林環境を仕事場にするのは、何も林業的な現場だけではなく、オフィスワーカーも取り込みたい。クリエイティブな業界は、向いていると思うんですけどね。

クリエイティブな業界、上流社会(川の上流に広がる社会)で良い景色と良い空気の中だったら良い考えも出そうですよね。

あのオフィスのスタイルなら、森より棚田に合うかもしれません。

何かアイデアを生み出す作業というのは、緩急の刺激が必要だと思うんですね。

その緩い方の刺激は、森林環境がぴったりだと思います。
棚田に半地下オフィスが並んだら、団地みたいかも(^o^)。

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