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森と林業と動物の本

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2013/03/10

ゴルフ場は風景産業、林業は?

最近、なぜかゴルフ場絡みのお仕事の依頼が相次ぐ。

そしてゴルフ雑誌がいっぱい届いたから、我が家にゴルフファンがいるみたい。実はゴルフをする人は誰もいないのだけどね。

ともあれ『ゴルフ場は自然がいっぱい』を出版して、もう4年近くたつが、いまだに多くはないが途切れず「ゴルフ場の自然」に関する記事は求められる。その点、割り箸と同じく息の長いテーマなのかもしれない。

私自身はゴルフに関心がないのだが、雑誌の写真を眺めていると、ゴルフ場の風景に目が慣れてくる。

そこで感じたのだが、ゴルフ場の売り物は、風景なんだということ。

ゴルフ場は、何よりもゴルフのプレーを行うために造成されるから、芝生のコース(ティグラウンド、フェアウェイ、グリーン、ラフ……)をいかに整備してゴルファーに喜んでもらうかが大切だと思い込んでいたが、それ自体は当たり前すぎて客を呼ぶ要素としては弱い。

実は、ゴルフ場の経営には、芝生だけに注意を払っているようではダメだ。コース全体の風景がよくなくては客が来なくなる。芝生だけでなく、樹林帯や池、小川、背景の森林までの風致が客の満足度に影響を与えるのだ。誰だって、美しい風景の中でプレーしたいのだから。

つまり風景から利益を得る事業、つまり風景産業といえなくもない。考えたら、そんな仕事は意外と少ない。風景は、金になりにくいのだ。

公園も風致は気にするが、そこに利益は絡んでいない。いわば公共福祉であり、作るのも、たいてい税金だ。もう一つ景観が重要な庭園だって、基本的に所有者の趣味だろう。事業として造営するものではあるまい。
有料公園や庭園もあるにはあるが、入場料収入だけで運営できているケースは極めて少ないはず。

その中で、ゴルフ場はあきらかに風景が客数に影響を与える。そもそもゴルフを行うコースそのものの美しさが重要なランク要素になる。

そこでゴルフ場経営を、「風景産業」として眺めてみると、なかなか巧妙なシステムである。ゴルファーは風景に対して対価を払っている気持ちは少ないと思うが、プレーゾーンの整備は、そのまま風致につながるのだから。

単にプレーするだけなら、フェアウェイだけで、その周辺に木々も一切ないコースもあり得るし、プレー料金も安くできるだろう。が、ネットに囲まれた練習場をつないだようなコースになってしまい、とても客の人気を呼ぶまい。


 

ここで森林に目を移すと、森づくりだって風景づくりなのだが、そこに対価を発生させるシステムがない。木材生産だけで収入を得ようというのは、フェアウェイだけのコースみたいなものである。風景とセットで木を販売する方法はないか。

「林業は風景産業」と言えるようなシステムを生みだせればいいのだが。

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コメント

当町では、いいのか悪いのかは別として、私有林を対象に公的な事業で景観形成伐採を行っています。
国や県の事業から最適な制度を利用しながらぼちぼちですがやっています。多分来年からは大井川鐵道沿線に手が入ります。
最近までは特に竹の処理をやっていました。
観光事業(散策コース整備)として、景観形成事業として、林業の事業として概ね3つの課でそれぞれやっています。
なかなか進んでいきません。
一方で、コレも公共造林事業ではないのですが、集落周辺の森林整備も(いいのか悪いのかはわかりませんが補助金で所有者の金銭負担なし)実施しています。ただ一ついえるのは一部に居住地付近の森林景観が変わってきていることで山への関心が出てきている雰囲気もあったりします。

大井川鉄道沿線の『カミオ地区のサルところ=半島』で、仲間と一緒に森づくりをしています。

森での作業の合間に景色を眺めながら(半島からは『蛇行する』大井川の上流も下流も、SLの運行も、見放題!?)楽しいひと時が過ごせる・・・『景色』は大事です。

市の景観条例を作成するときの林業の立場で委員をやっていました。
こちらで県土木、市の建設課から出る伐採の仕事には大概に沿道林修景整備という文言がつきます。
内容は道端の木を切って、日当たりを良くするのがメインなのですが、担当者にかならず伝えるのは、修景になっていないと言うこと。
道端が人工林の場合、枝の張ったスギヒノキを伐ると、その中の形状比が90を超えるような木が丸見えになります。
結果、雪が降ると支えがなくなり、雪害が起きる。
この事業を出すとき、その後ろの間伐も一体として出さないと本当の修景にはならないので、ちゃんと林務課と協力してくださいと言い続けてかれこれ5年。

風景づくりは、間接的に客を増やす意味はあると思うのです。大井川鉄道のような観光関係とか遊園地・スポーツ施設なども。でも、課金システムがはっきりない。そこを明確にできたらなあ、と思います。

>つうくんさん 「言い続けてかれこれ5年」ということは、まだ直っていないということですね(^^;)。

ええ、そうです。
どうにかせなあかんと思いつつ、そんないつもある仕事でもないので。
市レベルでも縦割りです。

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