ドイツの小規模製材所は生き残ったのか
私がかねがね口にしている「量の林業と質の林業」。
林業を軌道に載せるには、木材需要に対して安定供給する量の林業は必要だが、同時に木材への愛着を高める高い品質の木材を供給する質の林業もなければ、代替素材のいっぱいある業界だけに林業は衰退する……という意味だ。ただ林業とはいうが、現実に量や質を左右するのは、製材加工の分野である。
そこで、よく例に上がるヨーロッパ、とくにドイツの製材業界。巨大な製材工場が多く量を供給しているが、実は小規模な製材所も数多くあって、そこが地元密着でニーズに応えたきめ細やかな質の高い製材を行っているという。ちゃんと、量と質の製材工場が棲み分けている……。
なぜ、ドイツは小規模製材所が生き残れて、日本ではバタバタ潰れているのか? どんな条件が違うのか?
そんな疑問を研究者にぶつけると、意外な答が返ってきた。
「ドイツに残っている小規模製材所の数は、日本よりずっと少ない」
あれ? ドイツの素材生産量は日本の3倍あるというのに、製材所の数は少ない? これが量の分野なら大型製材所があるからと言われて納得するが。質の分野は1工場当たりの生産量は小さいはずだから、数がないといかんだろう。結局、高品質材はわずかしかニーズがないのか。
質重視の小さな製材所は、日本は潰れてヨーロッパは生き残っているという決めつけ自体が間違っていたか。逆に言えば、ドイツは潰れるところは潰れて、今生き残っているのは工夫を凝らして頑張っているところだけということ? いや、もともと小規模製材所の数が少なかったから、狭いニーズの加工分野で生き残れたと考えるべきかもしれない。
日本は、経営能力の低いところが今潰れている最中。。。ということ? これから弱肉強食、もとい競争原理によって実力のある小規模製材所が残るのかなあ。ならば、製材所の倒産・廃業はあってしかるべき状況ということになる。
そもそも日本の製材所は、役物加工という特殊な技術で経営していた面があるから、役物が売れなくなったら、いきなり苦しくなった。その独特の木取り知識や製材技術を今風にアレンジして発展させればいいのだけど、以前のまま変化を好まない業者は生き残れんわなあ。
これがある製材所は、実は規模としては小さな方だった。
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