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森と林業の本

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2013/04/21

ゴルフ場の生物調査結果から

拙著『ゴルフ場は自然がいっぱい』を出版したのは、今から4年前になる。

その原稿アップ間際に、ゴルフ緑化促進会が実施した全国のゴルフ場における動植物調査の結果が入ってきたので、大慌てで一部記述を差し替えつつ、あらたな情報を取り込んだことを覚えている。

ところが、昨年にも第2回生きもの調査が行われたようだ。その結果がこのほど発表になった。

それによると、全国2336ゴルフ場にアンケートを行い、526箇所から回答が寄せられたようだ。(ゴルフ場総数が前回より100ぐらい減っている……。が、回答数は100以上増えた。)

結果は、動物も植物も、確認された種類は増えている。だが注目すべきは、絶滅危惧種だ。前回の調査では、植物16、動物26であった。

それが今回は、植物が24種、動物は42種にも増えているのである!

何も急にゴルフ場の環境が変わって生息が増えたのではなく、観察者の目が鋭くなって確認数が増えたのだろう。それにしても、である。

ゴルフ場内にこれほど絶滅を危惧されている生物がたくさん見つかったということは、もっと注目されてもいい。細かなデータが出たら、もう少し詳しく分析してみたいが、いまや絶滅危惧種のゆりかごになっているかもしれない。

そもそも全国のゴルフ場総面積は、約27万ヘクタールだが、うち非プレーエリアは12万6000ヘクタール(46・6%)。そのほとんどは残置森林など樹林帯だろう。
私は、ほかにラフのエリアの一部バッファーゾーンにも草地生態系が機能していると感じているから、動植物の生息環境を維持できる面積は、もう少し多く見積もってもよいのでは、と思っている。

いずれにしても、これだけの面積は、隔離された里山環境?みたいなものであり、独特の生態系が形作られている可能性がある。

約13万ヘクタールとすれば、日本の自然林面積の0・86%くらいにはなる。里山エリアを約800万ヘクタールと見込めば、1・6%か。これは、決して少ないとは言えないだろう。

しかも、それらの多くは戦後に作られたわけだから、日本の植生の変化にゴルフ場が関わった意味を再び考察してみる価値はあるかも。

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コメント

ゴルフ場を再評価というか、正しく評価していただきたいです。相変わらず「農薬漬け」などという、誤解と偏見を見かけます。「×山邦○」さんなどは相変わらずそのような発言をされているようです(ヤレヤレ)。

ゴルフ場に限らず、振るい情報やイメージだけに踊らされている人が多いですね。
少し立ち止まって、疑問を持つ情報リテラシーを持ってほしい。

われわれのFSC森林認証の森林管理計画で整備を進めることとしているバッファーは常時流水のある河川、沢沿い及び尾根の部分10m以上としてあります。しかし、これはまとまった面積を所有している所有者では対応していってくれますが、小面積の所有者の山では人工林全部がバッファーとしての整備になってしまうということがあって、自然植生の誘導を意図的に進めていくという形でメンバーに理解をしていただいています。
まあ、バッファとしていない人工林も、きっちりとした手入れをしていく方針ですが、(シカの食欲により下草や下層植生の充実はなかなか思うように行きませんが)野生生物との共存の中で、思うように行っていない部分が多々あります。

ゴルフ場の運営で設定されるバッファーはもう少し広いようなイメージがあります。もしかしたら、人間の生活と微生物から昆虫、鳥類など野生生物のすみかとしての機能はゴルフ場のバッファーというのは一定の評価をするべきものなのかもしれません。

ゴルフ場のラフは、通常草の丈を5センチくらいに刈り込んでいますが、森林部と接する部分は、年に1度2度しか草(芝)刈りしないそうです。ここには、かつての草地生態系が維持されているのでは? と思え、バッファーゾーンになっていると考えています。

実は、この手のバッファーソーンは重要ですね。森林だけが自然を保っているわけではなく、適度な人の手が入った空間が果たす役割が。動物にとっても、いくつかの環境を渡り歩くことができます。

バッファーという取扱いの連続が、生態系維持のためのコリドーということになってくるわけですが、部分的にしか生態系の保全のために役立っていないだろうけれども、やらないよりははるかにいいと思っています。
すべてを人知でやれるハスもないわけですが、やれる範囲で取り組んでいきたいものです。

どのような考え方をされているのか甚だ疑問です。
こちら千葉県では、ゴルフ場造成で貴重な自然が破壊されてきました。絶滅危惧種が発見されたからと言って、そこが特別な地域だと断定してはダメです。絶滅危惧種というものは、その辺の杉林でも草地でもしっかり調査すればいたるところで観察されるものです。私は、ゴルフ場建設の現場に立ち会ったこともありますから、どのような負荷を地域に与えているのか肌で感じています。
環境省の植物群落調査でも、消滅原因の大きな理由にゴルフ場建設は該当するものです。

ある生物は、人間が改変した環境でも適応し生きることができます。またある植物は人間が撹乱した環境に競争相手が少ないことを理由に侵入します。
問題は適応できない生物たちです。
ゴルフ場建設で多くは消滅しました。

都市部の河川敷のゴルフ場も一見、緑を確保しているように見えるだけです。生き物は多様で賢いのでゴルフ場を利用する生き物を見て、自然がいっぱいというのはそれはそれでいいと思いますが、元の自然を壊した事実はどこに行ってしまったのか?
森林ジャーナリストだと言うのなら、ゴルフ場建設の現場に作業員として潜入労働取材くらいはしてほしいです。
私は、取材するときは、必ずその立場に身を置きます。

「ゴルフ場にも生き物がたくさんいるよ!」という視点はOKだと思いますが、同時に破壊されたことも伝えないと、知らない人は勘違いしてしまいますよ。

ゴルフ場も山林も田畑も、私有地であり、儲からなくなると太陽光発電所や処分場に変貌する可能性を秘めています。
決して安定的な自然のゆりかごではありません。

その中でも、山林や田畑は自然側から見れば開発だとしても
人間の生活上必要不可欠な食糧生産と森林の多面的機能をも有している性質上、まだ許容されるものですが、
ゴルフ場という娯楽スポーツのための施設が、多すぎるほどあるのに、それを開発してきた行為は許容できるものではありません。

本当の「自然のゆりかご」にするには、林地開発許可を与えない特別な場所にする必要があります。
「里山景観保全事業」「無農薬栽培モデル地区」など
すでに各地で始まっています。

森林の林縁部というのは、草地や森林内よりも種数が多くなる傾向があり、多様度も一番高くなることが多いです。
しかし、種数の多さとその自然の自然度(元のその地に育まれてきた生物相に近いかどうか)が高いのかということは比例するものではありません。

種数が多い、絶滅危惧種が発見されたというデータだけではなく、その周囲の自然環境が過去から今にかけてどういう変遷をしてきたのかも考えないといけないと感じました。


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