時間をかけろ!
林学者の赤井龍男先生を訪ねてきた。
そのカクシャクぶりはお年を感じさせなかったが、そこで受けた教え……いや研究成果は圧巻であった。
主に施業技術の変遷や、欧米の林学事情。そして木曾で50年にもおよぶ天然更新の実験である。加えて全国各地、さらに世界各国の林業地を視察した内容が詰まっている。
ここで、それらを紹介する余裕はないが、すべてを通して感じたことがある。
それは……森には、時間をかけろ! ということだ。
森には森の時間がある。そこに人間が介入するのが林業だとしても、おのずから節度が必要であり、何よりも森の時間、樹木の時間に寄り添わなくてはならない。
天然更新では、伐採跡地に稚樹の芽が出てきても、2年目3年目に枯れることもある。それをもって、「日本では天然更新はムリ」と決めつけたり、あるいは逆に数年間育ったのを見て、「もう放置して大丈夫」と考えると間違う。
実は4年目に確実に育つ芽があり、数年で草の丈を越える生長をみせることもある。
せっかく稚樹が育っても、再び繁茂してきた笹が被圧することもあるから、そこは除草剤などの助けを借りることも重要だ。
そうした判断をするには、やはり時間をかけねばならない。
そうした森の時間に寄り添った人材がいなければならない。
2年や3年で転勤してしまうのでは、とても森を見る目は養えないし、そんな短期間で「成果」を求めると、ろくな結果を生まない。
森づくりは時間をかけて、初めて善し悪しがわかる。
これは、兵庫県宍粟市の天然林。
なかなか見事な針広混交林である。秋だから、紅葉もう美しい。
当然、人の手を入れずに成立している。
そして、こちらは同じ宍粟市の森。
でも、決定的に違うのは、こちらはスギの造林地であること。
ただし、放棄地。いわゆる「不成績造林地」である。重要なのは、スギも育っていること。広葉樹に混ざって、それなりの本数が育ち、収穫に耐える。
もしかしたら放棄地でも美しい森づくりができるかもしれない。
ついでに、もう一つ。
この山も、美しい混交林である。
ただし、広葉樹の多くがケヤキだという。
つまりスギとケヤキの混交林。
これって、うまくすれば材価もかなり見込めるんじゃない?
とはいえ、こうした森づくりをするには、もっとも重要なことがある。それは、また改めて。(~_~;)
※ちなみに、写真は皆、赤井先生からお借りしたもの。
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田中さんへ
私もぜひその赤井先生が手がけられた天然更新した森をこの目で見て来たいので、場所と連絡先を教えて頂けませんか。
赤井先生の著書は読みましたが、今一歩信じられないので、というか教えることが出来ないので確信を持って他の方に天然更新が素晴らしいことを教えたいので、よろしくお願い致します。
投稿: しゃべり杉爺 | 2013/04/20 07:11
そうですね。異分野の研究者同士に意見交換してもらうのも面白いかも。私は、高みの見物?(^o^)
あとでメールアドレスをお伝えします。
投稿: 田中淳夫 | 2013/04/20 09:14