石井山林とスイスの森
話は、また北海道にもどす。
こちらで訪れたのは、十勝郡浦幌町の石井山林である。現在の所有は、三井物産。私は、かなり強引に見学をお願いして実現した。三井物産フォレストの方々には、非常にお世話になった。この場を借りて、御礼申し上げます。
さて、肝心の石井山林は、実は三井物産のものになったのは2011年。つい最近のことで、その前までは石井家の山だった。現在も石井家は管理を任されており、山の案内もしてもらった。
面積は308ヘクタール。かつては炭焼きのためほとんどナラ類を伐ってしまったそうだが、戦後は一転して択伐・天然更新・混交林化を図り、美しい森となっている。
カラマツ林だが、よく見るとトドマツや多種、さらに広葉樹もたくさん入っている。何より林床に稚樹がいっぱい育っている。
なかには樹齢が90年近いカラマツの巨木も76本残されており、これは北海道最古の人工林らしい。石井家の先代が植えたというので、「先代カラマツ」と名付けられている。
85センチほどあった。カラマツは、やはり生長がよい。今も毎年数ミリずつ太っているというから、樹勢は旺盛だ。
そして驚くのは、縦横に入った作業道だ。ヘクタールあたり180メートルという。幅は4メートルくらいありそうな道が大半を占める。しかも、等高線上に入れているのでなだらかで、ほとんど崩れることがないという。
ただ、一部は稚樹が繁っていた。このままだと、作業道は細くなる?
これを戦後すぐに、故石井氏は、自力で作り上げたのだ。まだ馬搬が中心だった時代に、これほど密に、これほど幅広の道を入れた先見性は凄い。
そして、この森を見て連想したのが、昨年見てきたスイスの森である。参考までに写真を示そう。
カラマツやトドマツ、トウヒ、そして広葉樹の入った混交林仕立てで、稚樹が生い茂っている。もちろん、択伐施業の天然更新。
石井氏は、中部ヨーロッパで主流となっている天然更新や混交林施業を知って真似たわけではないだろう。自身で美しい森づくりを目指した結果が、この石井山林なのである。しかも50年ほどで、一応の完成を見たのだから、意外と?早くできるものだ。
ちなみに三井物産も、この施業方針を引き継ぐそうだ。
洋の東西、発想は違っても理想の森づくりを描くと、同じような森になる、相似形の施業になるというのは、もっと意識すべきではないか。
この石井山林に関して感じたことは、もっといろいあるのだが、それは次の機会に。
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