これが現在の北海道の林業?
東北海道木材協会の会長に見せていただいたパンフレットの中の1ページ。
パンフのタイトルは、「森・みどりのめぐみ」とあり、項目としては、「森林のおいたち」「森林の働き」「暮らしを守る森林」などのイラストが並ぶ。そのうちの一つが、林業を説明した「木材と生活」なのだろう。
つまり、このパンフは素人に森の働きと林業について普及するためのものと思われる。もちろん今年も各所に配布しているらしい。
発行元は、北海道林業改良普及協会だ。ただ制作は、プロダクション名が書いてある。武士の情け?で匿名にしておく。頒布価格は250円だと。全6ページだが……。
でもって、会長はご立腹なのである。「こんな林業、何十年前なんだ!」
なるほど。よくイラストを見てほしい。
チェンソーの持ち方がなんかヘンなのは目をつぶるとして、今どきブルドーザーで伐った原木を引きずって出す集材があるか? トラックに積むのも、丸太をワイヤーで縛ってクレーンで吊り上げる? ついでに言えば、トラックの積み方もちょっと違和感がある。中央部に高く積み上げたら、荷崩れしやいのではないか。
う~ん。こんなことやっていたのは何十年前だろう。現在の北海道の林業は、全国的に見ても機械化が進んでるから、フォワーダやグラップル、ハーベスタなどは一通り揃っているわな。
イラストレーターが現代の林業に通じていないのはしょうがない。イラストのプロだが、林業は門外漢だろう。しかし参考とした資料はいつのものだろうか。その資料だって発注元が提供したと思うが、どこから引っ張りだしてきた? もしかして、イラストの元にすべき資料の収集も丸投げしたか。イラストレーターは仕方なしに、インターネットなどで時代を考えずに見つけ出したものを使ったのか。あるいは、完全に頭の中で描いた?
しかし、上がってきたイラストのチェックは発注元がするものだよな。
林業に無知なプロダクションなどに丸投げして、写真もイラストも、チェックさえせずに印刷に回した状況が浮かび上がって来る。
肝心の発注者は、天下りなどで仕事に対する意欲もなく、丸投げ後に校正もせずに放置したのかも、と想像をたくましくする。あああ、そもそも担当者もデスクワーク専門で林業現場を知らなかったりして。チェックしていてもイラストのおかしさに気づかないとか。。。
でも、これで林業を「改良」「普及」しているんだよなあ。。
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某大学の演習林では、今でもブルで集材を行なっているようですよ。
冬期に集材を行う北海道では今でもブルを使うことが多いのでは?
また、原木以外に製材品を積み込むこともある我が社のトラックは、グラップルローダーだと製材品が痛むといって、好き好んで小型移動式クレーンを使用しています。
かまぼこ型の積載は、今でも結構見かけますよ。というか、やらないところはやらないし、やるところは確信犯的に行なっているようです。
投稿: KILIN | 2013/05/29 22:00
おや、そうですか。例外ケースはあるでしょうね。
でも、木材協会の会長……つまり素材生産の第一線の人が、「こんな風に描かれては困る」と言っているんです。確信犯的な方法が世間に信じられては。
投稿: 田中淳夫 | 2013/05/29 22:05