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森と林業の本

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2013/06/30

吉野最後のヒット商品?

まずは、写真を。先日訪れた吉野の製材所で撮ってきたもの。

Photo


手元を見てほしい。

この板は、厚さ1ミリ以下である。つまりツキ板

この製材所はツキ板を製造しているのか……?

と思ったが、本来の製品は、集成材だった。

このツキ板を何にするのか。

もう気づいた人もいるだろう。そう、吉野の集成材は俗にいう化粧張りなのだ。ラミナと呼ぶ板(厚さ1~3センチ程度)を張り合わせるのが集成材だが、そのままでは張り合わせた断面が目立つ。そこでその上に吉野の無節・柾、しかも超細かな木目のツキ板を張り付けるのだ。

すると見た目は完全な吉野材の柱となる。少々目を凝らしても、その継ぎ目はわからない。だから無垢材に見える。いや、無垢材だと思って購入した人も多いだろう。

これは戦後生まれの吉野発の超優良商品だ。

昭和30年代になると、日本全国が住宅ブームに沸き、木材が足りずに高騰する中、外材輸入が解禁される。が、当時の日本人はやはり和室が必須だった。そして、どうせなら木目の美しい材を使った数寄屋建築に憧れたのである。

そのため、いよいよ吉野材の需要が高まり、価格も高騰するのだが、そこで登場したのが吉野材で化粧した外材の柱だ。見た目は吉野材そのもの。しかし、吉野材は薄くスライスしたツキ板だから、量的には少なくて済む。

数少ない銘木をツキ板にすれば、大量の吉野材風柱が製造でき、しかも価格は無垢材よりは安く供給できる。吉野の業者も儲かり、山主も希少な銘木を乱伐せずに済み、持ち家を求める施主も、比較的安く高級感のある和室を備えられるという有り難い商品なのだ。

おかげで大ヒットした。この時代、集成材といえば奈良だったのだ。

私は、吉野最後のヒット商品と呼んでいる(笑)。江戸・明治以降、多くのヒット商品を排出した吉野の木工業界だが、これが最後だった。

やがて数寄屋風は飽きられ、和室は減り、洋室の増加は大壁構法だから柱は見えなくなった。となると、無垢であろうと集成材であろうと、木肌が見えないのだから化粧張りをする必要はなくなる。かくして吉野の没落が始まるのだが……。
残念ながら、次のヒット商品が登場していない。

皮肉なことに、90年代以降の柱は、ツキ板を張らない外材の集成材管柱が主流となる。

でも、吉野にもまだ多少は生産していたようだ。化粧張りも貴重な技術だし、ぜひ残していただきたい。ちなみに心材はホワイトウッドだそうだ。

大壁構法によって廃れたが、化粧張り集成材は、今後復活できる潜在力はあると思う。

たとえば話題のCLT。これは典型的な集成材だ。柱ではなく面材で、接合が木目を交差させているだけである。もちろん、これを大壁構法のように表面にクロスなどで覆い、木肌が見えない構造材として使うならそれまでだ。
しかし、場所によってはそのまま木壁としてあらわしになる使い方も登場するのではないか。

その時こそ、化粧張りである。吉野材でなくてもよい。集成断面とは違った美しい木目を見せる用途を提案すれば、銘木も売れるし、化粧張りCLTそのものが高値をつけられる。ならば、山元価格も上げられるだろう。

CLTを推進するなら、この程度まで先読みして戦略練ってほしいな。

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