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森と林業の本

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2013/07/16

世間と「業界人」

ふと目に止まった日本農業新聞の記事。

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=22207

“里山ガール”活躍 千葉 林業女子会が整備作業 (2013/7/14)

 森や林業に興味を持つ東京都や近県の女性グループ「林業女子会@(アットマーク)東京」が13日、千葉県市原市東国吉地区の里山で森林整備活動を行った。会員13人が参加し、慣れた手つきでチェーンソーや刈り払い機を操ってヒノキや杉を切り倒し、下草を刈り取った。都会では感じられない森や緑の雰囲気を楽しみながら汗を流した。


内容はどうでもいいと言ったら失礼かもしれないが、とくに目立った内容ではない。ようするに「林業女子会@東京」が活動したということなのだが、ここでタイトルに「里山ガール」と入っていることが気になる。

実は、林業女子会@京都が初めて新聞に紹介された時も「里山ガール」と見出しに掲げられた。

なんか、おかしくないか。林業女子と名乗り、会の名前にもしているのに、あえて里山ガールと記すことに。

そもそも、林業女子会を立ち上げる際に、「林業が好きな女性たちを何と呼ぶか」と考えて、流行りの森ガールなどに触発されたものの、ガールでは軽い、また森や森林より林業そのものが好きなんだ、という主張をこめて「林業女子」となった経緯がある。

また活動場所は、上記のように市原市の国吉地区が里山なのかどうかは知らないが、「スギやヒノキを切り倒し」 とあるのだから、人工林なのだろう。森林ボランティア的な活動ではあるが、少なくても舞台は雑木林ではない。

それでも、里山ガール。これは彼女らが自称したのだろうか。フツーに考えてオカシイだろう。

やっぱり、記者(もしくは整理記者)の偏見というか、感覚が反映されているのではないか。もしかしたら「林業女子」なんてダサイから、今風な呼び方考えてやったよ、というノリなのかもしれん。

……ま、里山ガールなんてのも、相当ダサク感じるが。ただ、林業女子よりマシ?

こんな子細な話題を持ち出すのは、このところ森林・林業界と人と、世間一般人との乖離は、かなり深刻なのではないか、と感じるからだ。

先のセミナーでも、国産材住宅を建てる工務店の顧客でも、国産材どころか木材を意識して家を建てる人は皆無、もしくは極めて少ない、という話が披露された。また、会場からも「間伐材」という言葉さえ知らない学生の話が出た。

そう言いつつ、話題はディープな業界情報へと向かうのであったが(~_~;)。それは、参加者の大半は、少なくても心理的に業界人であるからだ。川上(山元)よりか、川中(製材)よりか、川下(建築)よりか、それとも森林・林業ファンかはともかく、みんな森・林・木に愛着を持っている。だから楽しげに業界話をする。

が、その思いは、世間からかなり乖離している。

一般人は、森林や林業や木材にほとんど興味を持っていない。嫌いか好きかではなく、意識に入っていない。そりゃ、森の写真を見せたら「きれいだ」「癒される」なんて口にするかもしれないが、上っ面(~_~;)。もちろん知識もほとんどない。学ぶ気もない。

だから、森のことを伝えましょう、というのも無理がある。たしかに森に引っ張りだしたり、知識を伝えたら、何割かは森に興味を持ち出すかもしれないが、それと行動は別だ。高くてデザインが冴えない木の家なんぞ、買わない。ましてや伝えても興味を持たない人の方が絶対多い。……そんな人たちの前で、楽しげに林業のことを語ると、きっと引かれてしまうだろう。

いわば、アニメオタクを気味悪げに見る一般人と同じ視線? アニメ自体は嫌いではないが、オタクの話にはついていけないよ、的な感覚ではなかろうか(⌒ー⌒)。

……それを前提に引いた目で業界全体を見る癖をつけないと、きっと「世間の中の森」がわからなくなる。

  

 

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

『記事にしてよー』と誘われたから(女性が森林整備!?ということで)興味だけで出かけて取材したという程度じゃないですかね!?

何台のチェーソーを使って、どの程度の木を、どれくらいの時間で何本倒して、倒した木をどのように始末したのか・・・・これ位の記事を書いてくれれば、『ほおぅ!』と、興味が湧きますが。

取材を持ちかけたかどうかは別にして、記者はさして意識高く記事にしたわけではなさそうですな。そもそも、林業のことも、森林ボランティアのことさえ詳しくないことが読み取れます。

森林・林業オタクは引かれる…ギクギクギクッ
ホント、普通みなさん木のことなんてきにしてないのですよね。
自戒自戒〜。

会員登録して見させていただきましたが・・プロの目からは危険因子しか感じられないですな。写真は「追い伐り」?林災防的には「いつか怪我をするよ」と言われます・・

私もジブリのアニメは見るし、そのほかにも優秀なアニメは好きだけど、アニメの舞台になった土地まで訪ねようと思わない。さらに微細な背景情報や「萌え」を語られるとどん引き・・・という立場です。
話をするときは業界内と業界外を分けましょうね(^^;)。

ちなみに日本農業新聞の会員にはなっていないので、どんな写真が載っていたのか見ていませんが、技術の問題は林業女子だけでなく、森林ボランティア全体の課題でしょうね。事故が起きたらパッシングが起きかねません。

どうも悪い癖で、業界的な見方をしてしまいます・・林業が楽しければ良いのかとも思いますが・・まぁ いいか(><)

森林内でのヒヤリ・ハットにどう対応するのかが第一だと思います。
森林内は危険が満ちていると、まずは認識することではないでしょうか。
・・・林業女子が云々とか、ボランティア作業が云々とか、道具の使い方とか作業性が云々とか・・・それらは副次的要素かと。

風が無くとも『枝』が落ちてきます。蜂問題はじめ『藪』に潜む危険も注意喚起事項です。
複数人数での作業時の注意点・危険性云々・・・災害を未然に予防する体制と認識、つまり『監視者』設定は必須でしょう。だって、プールにも監視員は常駐する訳だし、森林はプールとは比較にならないくらい『危ない』のです。私は間伐程度しかやりませんが、奉仕作業でさえも、『無事終わった時』は、ホッとします。むしろ、汗まみれの衣類の洗濯や履物はじめ鎌やチェンソーの手入れや掃除メンテナンスの事を思う時それも雨天後の後始末の時などは気が滅入るし『ぞっ』とします。・・・こんな苦労の事も『取材』で取り上げて欲しいですっ!!

そういう「林業作業苦労話」は、一般受けしません(^^;)。というより、そもそも書く舞台がない。

先に事故が起きたらバッシング……と書きましたが、それも起きないかもしれないなあ。あまたある交通事故と同列扱いなら、ベタ記事か取り上げられることもないかも。

「林業作業苦労話」を書籍として取り上げるのは如何ですか?

森林ボランティアや林業セミプロ向けに『上手に、面白く、内容ばっちり』に記述して「啓蒙と売上」の両方を遂げられるのは「誰かな?!」

世間一般には、林業も里山も区別は無い、その通りと思います
耳に痛い事実なので忘れられるでしょうけど、心しておかなくては行けませんね

木ゴコロ知れた女ゴコロ

この集まりもナツカシイですねぇ。

ここで「木ごころ知れた女ごころ」会議が登場したか(笑)。ある意味、林業女子会の先駆的存在だったなあ。
こうした運動が、世間に林業を知らしめようとした(今もしている)のだけど、現実はまだまだ遠い。

林業苦労話本の企画、私が編集者だったら、真っ先にボツですな。
読者対象人口は、多めに見込んでも10万人。この層は、もっとも本を買わないし、潜在読者はコンマ以下で、1000~2000人。そのうち購入するのは……。
部数が伸びないと定価が上がるので、おそらく1冊3000円以上。いよいよ買わない(~_~;)。

ま、こんな試算も厳しいな。「紙去なあなあの日常」映画化に便乗した本を作る方が、ましかな。

「神去りなあなあ日常」は、(私も)、二回読みました。

林業っておもしれー!・・・というフレーズに惹かれて本は買いました。林業仕事の方の話しはさして面白くは無く、むしろ「山村生活者の日常を垣間見」の方が面白いと言えばそうかなと。

三回読みは、やって無く、今は『里山再生』を読んでいます(図書館借り。)・・・・これは名著です。

『里山再生』は、リニューアル、いやリノベーションして(^^;)、『いま里山が必要な理由』として販売しております。こちらは、購入してください(笑)。

名著『里山再生』を凌ぐ書籍は無いと思っていますが、『いま里山が必要な理由』(何か、くどいタイトル?!)
購入したら『サイン』を下さい!!

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