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2013/07/31

伝統工芸はマーケティンクから生まれる

伝統工芸。そう聞いてどんな商品イメージを持つだろうか。

私の場合、「古臭い」だ(笑)。伝統がついている時点で、時代遅れの、手業は素晴らしいのかもしれないが、今となっては必要なくなり廃れかけているもの。郷愁で存続させようとしているもの。

それなりに田舎各地を回っていると、結構な伝統工芸品と出会う。木製・竹製なり陶器なり染織なり、地元の素材を活かしてつくった日用雑貨・民具類。これらグッズは、自給自足的に自ら使う道具として生み出されたものの、熟練の技でつくられたものは機能美を備え、やがて芸術作品に昇華するものも現れる。

民具のような手仕事の日用品の中に「用の美」を見つけ出した柳宗悦とかバーナード・リーチの民芸運動などを思い出す。

が、なぜ美を求めず機能を突き詰めたら美しくなったのか。そして「伝統」と言えるほど持続した生産が行われたのか。

そんなことを考えている中で行き着いたのが、「水口細工」だ。

以前も、くず蔓細工として紹介したが、滋賀県甲賀市水口(みなくち)で江戸時代よりつくられていた民具的雑貨のことである。素材や作るものは時代により少しずつ移り変わるが、基本、植物のクズアオツヅラフジの繊維を元につくられる。

この歴史を追うと、意外な進歩の過程が浮かんできた。

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まずは、見てほしい。

なかなか瀟洒なデザインである。細工もきめ細やか。

今風でもあるし、ちょっと洒落ている。これを「伝統工芸」なんて古臭い(^^;)言葉で呼びたくなくなるほど。

品の種類は箱を中心にかなり幅広く、さまざまな用途の雑貨類がつくられた。さらに模様もさまざまだし、デザインに幅がある。


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これなどは、陣笠?だが、ほかにテンガロンハットみたいなものもある。何より曲線を描いた編み物は技巧的にも優れている。

ほかにイースター・エッグの入れ物やキャンデーボックスまで作られていた。……写真撮るのを忘れた(>_<)。




イースター? キリスト教の? と疑問を持つ人もいるかもしれない。

そう、水口細工は、一般には江戸時代よりつくられ始めた(歴史をどこまで遡るかは難しい。正倉院まで遡る説もあるほどだ。)が、宿場町で土産物として人気を博した。そして明治以降も発達し、どうやら昭和初期まで続いたようだ。

そして海外に輸出までしている。歴史的には、シーボルトが記録に残し、大正時代にはウィーン万博に出展し賞を授与された。注文は海の向こうから来たのだ。だから洋風のグッズやファッションデザインも取り込んでいるのだろう。

それが戦後はパタリと姿を消し、今や作り手がいないどころか、つくる素材は何か、どのように加工するのか、編み方はどうなのか、まで謎になった。「幻の伝統工芸品」になったわけである。

それはともかく、水口細工は、元から売り物として生産された。利益を生むから手間隙かけてせっせとつくり、また作り手もデザインを工夫した。結果、長く生産が続き「伝統工芸」になったのだ。

そこにはマーケティングの意識もあったのだろう。海外で求められる雑貨は何か、どんなデザインを異人さんが好むか。悩んで開発したに違いない。当時は情報源も乏しかっただろうが、それでも舶来の品を見たり、洋行帰りの人の意見を聞いたり……(想像)。

「商品」になったからこそ、作られ続けた。他人の目にさらされ、売れ行きをのばすためにデザインや機能性に工夫したからこそ、人気を呼んだ。そして洗練された作品となった。無骨なままの「伝統工芸品」とは一味違う。

ここで牽強付会するが(^^;)、今の日本の林業は「無骨」な自給自足的民具のレベル。買い手・消費者のニーズを汲み上げていない。お洒落な水口細工の域に達しないと持続的な伝統産業になれない。

……ま、お洒落になって一度は世界中に羽ばたいた水口細工も、結局は滅んだんだけどね(⌒ー⌒)。

なぜって? そりゃ、大量生産をたくらんで……×××(以下、略)、ようするにマーケティング・ミスだな。

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