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森と林業と田舎の本

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2013/08/09

私がワクドキした森3~青木ヶ原樹海

夏向きの森の思い出話をと書き出したワクドキ森シリーズ。

なんだか海外の、それも豪雨にやられた話ばかりになっている。もうちょっと身近な、日本の森はないのか?

と考えて浮かんだのが富士山麓の青木ヶ原である。一般に樹海と呼ばれ、自殺の名所とか磁石も狂い、一度入ったら出られないとか。

私は、学生時代を中心に何十回と訪れている。おかげで、さまざまな体験もした。迷ったこともあるよ。迷ってみようと森に入って、本当に迷ったんだが。

が、実のところたいした森ではない。磁石はほとんどのところで効く。磁性を含んだ溶岩のあるところでも、岩の上に方位磁石を置かないと狂わない。登山道や農道、車道もアチコチに走っていて、道のない森に踏み込んでも、まっすぐ歩きさえすればどこかの道に出る。数百年前の噴火の際の溶岩の上に成立した森だから、まだ若く大木もない。木の背丈が低いので、あんまり暗い森にもならない。

ただ平坦だから見通しが効かない。溶岩大地には割れ目や噴気孔(洞窟)も多くて、ヘタに歩くと足を奪われる。また水場もない。大木がないぶん、ブッシュになっていて進みにくい……と、それなりの怖い要素はある。

そこで、樹海の中を、もっとも長く歩く(途中、登山道などを横切らない)ルートを選定して、横断を企てた。

これは探検部としての合宿である。いつもは「避暑」といって青木ヶ原の中にある洞窟に出かけていたが、その年は横断にしたのは、その夏ボルネオに出かけてジャングルを歩く計画だったから、その予行演習も兼ねていた。
ただし隊長を新人にした。入部間もない新人に歩くルートを選ばせたのである。まあ、訓練の一環だ。

でもって、よたよたと青木ヶ原に踏み込んだ。新人は地図とコンパスで予定していたコースを進めるか。バックシートドライバーのごとく、うるさい上級生が後ろから口を出すのだが。

実際に歩くと、本当に前方が見えない。凹凸もわからない。だから地形で判断することができない。まさにコンパスで方向を決めなくてはならなかった。
ときに、木々にはテープが巻いていたりする。これは、自殺者の死体回収に入った捜索隊の残したものだろう。ここで死体と出くわしたら、結構ハードな経験になるのだが。幸いにして?見つからなかった。(先輩の中には遭遇したケースもある。)

なかには習志野空挺師団の標識を見つけることはあった。ここで自衛隊も訓練しているのだなあ。

日が暮れ始めたので、野営地を選定した。訓練ゆえ、大きなテントは持ち込まず、個人用など小さなテントに分散する。食事もレトルトなど簡便なもので済ませた。

つい、新人相手に怪談などを話して盛り上がる(^o^)。

さて、寝ようと思ったら、遠吠えが響いた。犬がいるのだ。

実は、富士山麓は捨て犬が多い。狩猟犬もいる。飼い主とはぐれたのか捨てられたのかわからないが、やがて野生化し、ときに二世を生み、かなりの数のノイヌがいると聞いていた。そして集団で狩りをするのだそうだ。ウサギやシカなどが獲物だ。ときに牧場を襲うこともあるという。

野生化してオオカミのごとく凶暴になったのか。しかし、樹海の中で。狙うのは何か?……人間も餌としているのか?

気がつくと、キャンプ地の四方八方から犬の吠える声が聞こえた。何匹、いや何十匹いるんだ? ここを狙っているのか?

「囲まれた!」

一人のこの言葉で、いきなり恐怖にかられた。おい、みんな武装しろ。

ナイフを手元に。こん棒を用意するもの。ひゃあ。焚き火はできない。ライトでは長持ちしない。

まんじりともしないまま、深夜まで過ごした。ようやく鳴き声はおさまった。しかし、テントの中でも武器を枕元に置いて、朝を待ったのである。

やっぱり青木ヶ原は怖かった。

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コメント

青春ものっぽくなってきましたな。。

それはさておき、生駒山も怖いですよね~。
なんでも、コビトに囲まれるらしいじゃないですか~。

人生、すべて青春ですかから\(^o^)/。

生駒山の秘密は……シ~!

青春については、
森田公一さんが、
とげ刺す とか
道に迷ってばかり とか
唄って、
その頃から、導いていたんですね。

道に迷うのが青春なら、まかしといてください!

おっと、私が惹かれるのは、道ではなくて、未知だった。

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