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森と林業の本

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2013/08/07

私がワクドキした森1~ベララベラ島

はっと気がつくと、引きこもりになっていた。

いや、家からは一応出ていますがね。ピタリと取材に出る仕事はなくなり、1日の歩行数は3000歩どまり。そして、うだうだ考え事ばかりしている。森がどうした、林業がどうした、山村がどうなる。地球の存在から人生を振り返り、今後の生きざまに惑い、老後を心配し、愛とは何か人とは何か、ついでに世界平和についても考えようか……と内向的になってしまった。

気がつけば、夏だ。盛夏だ。猛暑だよ……。

小難しいことは少しお休みして、夏らしい思い出話を披露しよう。

そこで、先に記したテーマからの連想で「森でWAKUDOKI」した体験談を。

これまでの人生を振り返って(またかよ)、もっとも強烈な印象を持つ森はどこだろうか。

幼いときに遊んだ森から、先日訪れた森まで検索し、見事浮かび上がったのは、ベララベラ島だった。

ソロモン諸島ウェスタン州にある島である。おそらく大きさは小豆島くらいではないか。
私は20代の頃に、この島のランブランブという集落に私は滞在したことがある。

3


ランブランブで居候していた小屋。

なかなか快適な家だった。そして村人には、本当によくしてもらった。

そこから北にカヌーで小一時間海をわたって、ロピ川の河口に到達する。そこから上流へと数時間奥地に踏み分け跡をたどって着いた森に、私は5日間過ごした。

もちろん、熱帯雨林である。それも現地の人も滅多に来ない奥地だ。

なぜ、ここで過ごそうと思ったのか。

実は、ベララベラ島には、旧日本兵が今も生きているという噂が伝わっていて、日本から捜索隊も幾度か送られていた。そして微妙な痕跡を発見している。もう20代の兵士が島に残留したのなら、当時で70代。生きていられるギリギリの年齢だろう。

もともと熱帯雨林の中で過ごすのは子供の頃から憧れで、ソロモンで体験してみたかったが、せっかくだから旧日本兵探しとドッキングしたわけだ。

たった一人でジャングル生活とは、どんなものか。

やはり壮絶だった。

まずテントを張った。小川から少し離れた高台にした。川の増水も大丈夫だろう。そこで次は、焚き火だ。ところが、ありとあらゆる木々や草まで湿っている。枯れ木・落ち葉までも燃えないという苦労からスタートした。それでも、なんとか火を起こし、炊事も行った。

さて、明日に備えて十分に寝よう。まさか旧日本兵が訪ねて来たりはしないだろう……。

深夜から、突然の土砂降りとなった。すさまじい雨だ。それでも、テントの防水は完璧、と思っていたら、なんと斜面を流れ落ちる雨水がテントの中に流れ込んだのだ。いきなり川が出現した。仰天して、ザックに濡らしてはいけないものを詰めて、膝の上に置き、テントの中で中腰になった。その足もとは水に浸かっているのである。

明かりは、ヘッドランプだけ。これをずっと点けていたら朝まで持たないから消す。真の闇の中で、テントを打つ雨音と足元の水の感触だけを感じて過ごす。中腰のため疲労で筋肉がギシギシと鳴るようなつらさ。着ている服はびっしょり。

雨も一過性のスコールかと思ったが、簡単には止まず、結局朝まで降り続いた。ようやくテントから出て白んだ曇り空を見たときは、「生きてた!」と思ったよ。

それでも、翌日からジャングル探索を始め、道なき道を分け進み、巨岩が転がるロピ川上流部の探検を行った。迷ったり転落して怪我をしたら確実に遭難だ。誰も助けに来ないだろう。旧日本兵以外は。

そして、なんとか5日間を過ごした。

帰途が大変である。体力は落ちている。帰り道はわかるだろうか……。そのうえ湿気で身の回りのものにカビが生えた。カメラレンズにも生えた。そして身体の一部にも生えたのである。幸い、現地人が迎えに来てくれて、無事撤収できたが。

が、その後私はランブランブで病に倒れて、病院のある島に渡るため、嵐の海をボートで出て漂流するのだが……。

やっぱり、あの時の森が、人生最大のドキドキ(ワクワクとは言い難い)だったかも、と今振り返って想うのである。

2


これが豪雨から一夜明けたテント。

後に、ニッパヤシの葉を集めてきて、テントの周りを覆って雨対策をする。

本当は高床式にしなければならないのだけど、さすがに無理だった。


Photo


焚き火に四苦八苦する様子。

当時の写真を探し出すと、モノクロだった。カラーは色褪せるし、印刷に回すことを考えたらモノクロがよいと判断したのだったなあ。

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コメント

おお、壮絶な体験ですね。
一つ間違えば,今の田中さんは天国か地獄へ。元日本兵はどこへ消えたのでしょうか?
熱帯雨林の森では、猛烈な雨と気温で微生物が大繁殖します。したがって,加熱して香辛料をたっぷり入れないとたちまち食物は腐敗するでしょうね。
インドネシアに数日滞在して、食事が全て加熱してあり香辛料が多い理由に思い当たりました。
それにしても,熱帯(28〜32度)よりも高温(32〜35度)の日本は超熱帯雨林?かな。

旧日本兵、生きていたら90歳を越えています……。

日本の夏が気温的には熱帯化しているなら、どこかに熱帯雨林を作れないかな。
でも、本当の熱帯雨林は意外と涼しいですよ。避暑に行きたいぐらい。

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